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夏物の着物の生地を使ってリバーシブル夏帯を作りたい!

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本日のお題:夏物の着物の生地を使ってリバーシブル夏帯を作りたい!
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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ツイッター(@gofukunokikuya)でも少し書きましたが、最近中国から着物を買い付けに来る方が多く全体的に相場が上がってるようです。どうやら日本の着物で洋服を作るのが流行しているらしく、また作っても作っても売れるのでかなりの高値での落札で日本の業者が負けまくってるとか。そりゃ高級な絹の生地がリサイクル品として溢れてるんですから買いますよね。

でも、日本の柄が海外に行って認めていただけるのはありがたいことなんですが、その一方で日本の着物がどんどん海外に流出しているということですので少し複雑な気持ちです。

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■夏物の着物を使ってリバーシブル夏帯を作りたい!

いやー、春爛漫ですね。今日も暖かく、ここはマリネラ(@パタリロ)か!とか思うような陽気です。先日、大阪の桜の名所、大川(造幣局のすぐ近く)に行ってきたんですが、花見客で賑やかでした。3年間ほどコロナで花見は自粛ムードでしたがやっぱり日本の春はこうでないといけません。もちろんコロナ対策は十分した上で楽しんでくださいね。

ただ、暖かくなるのは体感的にはとてもありがたいんですが、呉服屋としてはちょっと残念なんですよ。もちろん春というと入卒業式やらなんやらで着物が売れる時期ですし、先日から朝早く着付けの予約が何件も入って大忙しだったのですが、これから夏に向かってどんどん暑くなってまいりまして、本格的に暑くなるとどうしても着物が敬遠されてしまいます。

着物ファンでも「夏はちょっと…」という方もおられますし、そもそも汗をかく季節なのでリサイクル品の夏物は状態の良いものが少なく、また状態の良いものはめちゃくちゃ高くて仕入れられないというのもあり、二重三重の意味で夏は呉服屋にとって受難の季節です。浴衣を頑張っておられる店は夏場にがっつり売り上げるんでしょうけれど、浴衣は浴衣でまた手を出しにくい別の悩みがありまして…。またこの辺は来週にでもメルマガでお話しさせていただきますね。

さて、先日このメルマガの読者から「絽の着物の生地を2枚使って京袋帯を作りたい」という相談をいただきました。すでにメールは返信済みですが、面白そうなネタだったのでメルマガでも紹介させていただきます。

まずは生地選び。反物が手に入れば一番使いやすいです。今回はリバーシブルの帯を作りたいということなので別々の柄のものが必要ですが、もし表裏同柄でよろしければ反物1反あれば帯を作ることができます。仕立て上がったリサイクル品を使うのもいいですが、衿肩あきがあるため、その部分で一旦裁断した上で継ぐ必要がございます。リサイクル品を使う場合は袖や衿にシミがあって大幅に安くなっているものを使うといいでしょう。そして柄は小紋か紬のみ。訪問着は絵羽柄になっていますのでリメイクすると変なところに柄が出てきて不向きです。

着物の身丈はだいたい4尺から4尺3寸ほどで、cmに直すと150cmから163cm程度。肩山を境に折り返して同じだけの長さがあり、内揚げを考慮せず計算すると左右の身頃で300cm-330cm程度の生地が2枚手に入ります。

一方、名古屋帯を仕立てるための必要な長さは表地分が1丈、約380cm程度、九寸の名古屋帯はたれ先で折り返して3尺、115cm程度必要ですので合計5m近くの長さが必要ですが、今回はリバーシブルの京袋帯を作りたいという相談でしたので単純に380-400cm程度の生地を2枚用意して芯を入れて仕立てれば作ることができます。

もうここまで書くとおわかりのように、夏物の着物で一番長い身頃の生地でも300cm-330cm程度。仕立て上り品のリサイクル着物を使う以上、もし内揚げがたくさんあったとしても長さ380cmの生地は手に入りにくいので必ずどこかで継がなくてはなりません。これはもう仕方がないことなので諦めてください笑。仕立て上がった着物を使って作る以上、必ずどこかで継がなくてはなりませんのでできるだけ細かい柄のものを選ぶのがお勧めです。継いでいる部分は一番目立つお太鼓部分には来ないと思いますが、できるだけ目立たない方がいいですもんね。

先ほど書いたように衿肩あきの部分に切れ目が入っていますので、そこでも一旦裁断して縫って繋げておく必要があります。もし裏表同柄でいいというのであれば、一枚の着物で袖の生地まで使えば帯を1本作ることは可能です。

さて、生地が用意できましたら次はお仕立てです。

一般的に帯芯は白いものが主流ですが、今回は夏物の生地で透けますので絽の目の部分から白い帯芯がのぞいてしまいます。着物の生地が白地でしたら目立たないのですが、黒地など濃い色の生地ですと絽の目の部分に白い筋が入って縞模様のように見えてしまうでしょう。そんな時にはカラー芯もご検討ください。決して多くの色のラインナップがあるわけではございませんが、10色ぐらいはあったように思うので帯の地色に近い色、または違和感のない色を選ぶことはできると思います。

一方で、夏物着物は薄手ですので帯にするとハリやコシが不足しがちです。ですので塩瀬などに使う極厚の帯芯を使うのがお勧め。また、帯芯と生地がうまく沿うように起毛の芯を使うのもお勧めです…が。

先ほど帯の色によってはカラー芯を使うのがお勧めと書きましたが、塩瀬用の極厚の帯芯でなおかつ起毛の加工をしてカラー芯というのは、私の勉強不足だったら申し訳ないのですがおそらく作られていないと思います。普通の帯芯の種類もだんだんと少なくなってきたこの時代、おそらく帯芯メーカーも種類を作っていないでしょう。通常の帯芯、塩瀬用の厚手やらそれぞれ起毛芯、そしてまたそれぞれにカラー芯を作るとそれだけで何十種類になってしまいます。

数年前、黒地の夏物の染め帯のお仕立ての注文が入ったので、当店と取引のある帯芯メーカーさんに黒の起毛の帯芯をお願いしましたところ「もう作っていないので在庫分で終わりです」と言われ何本か仕入れたことがあります。今はあまり見られなくなっているカラー芯のうちでも黒の帯芯だけは夏用の黒共帯(喪服帯)のために生産されておりますが、それに加えて起毛の加工をしたものというともう手に入りにくくなっているようです。

つまり、夏物の染め帯に入れる芯はカラー芯にするか、白地の塩瀬用の厚手のものにするか、白地の起毛芯にするかのどれかの選択を迫られるということになってしまいます。カラー芯で厚手や起毛のものは難しいかもしれませんが、塩瀬用の厚手の起毛芯はもしかしたら作ってるメーカーがあるかも…いや、どうだろう。もしそういう注文をいただいたらちょっと頭を抱えてお客様に「頑張ってみるけど難しいと思っててください」といって冷や汗をかきながら探し回ることになりそうです。この辺りも市場が小さくなっていろんなものが作れなくなった弊害でしょうね。

今回は夏物の生地を2枚使っての帯の作成でしたが、夏物の生地と袷の生地を使って夏冬で使えるオールシーズンのリバーシブル帯も作れそうですね。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
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