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当選商法の裏側

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本日のお題:当選商法の裏側
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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■当選商法の裏側

今週のお題は「当選商法」です。30年ほど前はこの販売方法は呉服業界でかなり流行りまして、現在は色々と問題があるというので下火になっていると思っていたんですが、X(旧ツイッター)で見かけたので今回のお題にさせていただきました。

最初に書いておきますが、これをいうと「呉服業界の擁護をしてる」…なんて言われそうですが今から20-30年前というとよく言えばおおらか、悪く言えばいい加減な時代でして、どこの業界でもこういった商法は行われていたと思います。今の感覚からすれば完全にアウトなんですけれど、昔はそんな時代だったということをほんの少し頭の隅に置いといてください。

まずは当選商法の流れを書きますと

店頭にこられたお客様に「着物振興のため」となどと称してアンケートをとります。アンケートに答えたら抽選があるので、当然ご住所やお電話番号、お名前等を書く欄があります。私がそういう商法の店にいたころは今ほど着物が生活から離れているというわけではなく、着物の需要もまだ十分ありましたので店頭にこられたお客様に応募ハガキを渡してお客様自身がポストに投函して応募するという方法を採ってました。

一応「着物振興」という建前があったので、宛先はその呉服店ではなく、協力してくださる京都の問屋の住所で「着物振興なんたら協会」という名前の団体を作ってそこに応募ハガキが届くようになっておりました。実際はどんな団体なんてないんですけど、問屋のポストに「着物振興なんたら協会」と書いておけば郵便局員さんはちゃんと投函してくれます。

ここで注意したいのは、アンケートや応募ハガキはあくまでも新規、またはそれに近いお客様に限る、というところ。私の経験した限りの話ではありますが、この企画はお得意さんに応募してもらっても儲からないのです。もちろん上得意さんがその企画を知って「私も応募したい」という時には快く応募を受けますが、基本的にお得意さんには声をかけません。なぜかというのは後で書きますので、とりあえず「お得意さんは敬遠される」ということは覚えておいてください。

で、このプレゼントですが大体全員当たります。今の感覚から言えば景品表示法で規制されている有利誤認(注)ということになるのですが、冒頭で書いたように当時は様々な業種で普通に行われておりました。景品表示法は昭和37年に制定されているようなので当時も違反行為であったはずなのですが、先ほど書いたようによほど目に余る行為でなければそれほど問題にはならなかった時代だったように思いますし、世間の意識も低かったように思います。私もファミコンのゲームを買いに行って、売れ残りのゲームと抱き合わせになっていて買えなくて涙を飲んだことも…。

注:商品・サービスの取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為。

応募ハガキやアンケートである程度名簿が取れると応募者全員に当選ハガキを発送いたします。

で、お約束のようにこのハガキには「着物振興のための特別プレゼントなので、ちゃんと着られるように裏、仕立てと帯を買ってください」と書かれていました。これも有利誤認やら抱き合わせ商法やら、法律違反と思われる条件のオンパレードなんですが、その当時は呉服業界に限らずよくあった販売方法でした。例えていうなら今は自転車でもお酒を飲んでの運転は飲酒運転とされますが、その当時はよほどフラフラしていない限り捕まることがありませんでしたがそんな感じでしょうか。そういった行為を肯定しているわけではないですが、よく言えばおおらか、悪く言えばいい加減な、「そんな時代だった」ということです。

そしてプレゼントの受け渡しのために展示会場に行くと、着物の表地はプレゼントなので無料、お仕立て代+胴裏+八掛+帯+帯の仕立てで最低でも20万コース(チーン)となります。かなりの大金ではありますが、当時は男性は外で働いて女性はパート程度で働く方がほとんどでその収入は全部自分の小遣いにするというのも一般的でしたので女性の一存で使えるお金は確実に多かったと思います。

ところが次第に法律に対する認識が高まり、そのような販売方法が法律違反ということが広く世間に知られるようになってきました。反社会組織の方が弁護士を連れて展示会に来られてその当選の商品を根こそぎ持って帰ったとかいう噂もききましたが、おそらくこれは都市伝説というかガセネタでしょう。狭い業界なのでそんなことがあったら店の名前など詳細は絶対わかるはずなのに、そういうのが一切不明でしたので…。しかし業界内でそういった噂が出ること自体、違法という認識が根底にあったからに他なりません。

時代は流れ、社会の遵法精神が進み、意識も次第に高まり、抱き合わせ商法の「帯を買ってください」といえなくなりました。プレゼント商法という「有利誤認」や「転売防止のために必ず同時に仕立てをしてください」というのもかなり問題のような気もしますが「帯を必ず買ってください」というあからさまな法律違反はあまり見なくなりました。

話はちょっと飛びますが、店が展示会等の大きな催事をする時にはその期間中だけ卸問屋から大量に商品を借りて会場に並べることが多いです。これを「浮き(または浮き貸し)」と言いまして、会期が終わると売れたものだけ仕入れるという手法です。小さな呉服店の在庫だけでは大きな展示会場を埋めることは難しいため、展示会をするには問屋のバックアップで大量の商品を貸してもらうのが一般的です。

どんな商品を並べるか、どんな企画で販売するかなどの打ち合わせを何度もするのですが、その時に問屋に当選用の商品を安く持ってきてもらうように依頼するのです。例えば通常はメーカーから原価1万円で出荷されたものが流通を経て2万、3万と上積みされていくのですが「こういった企画をするのでみんな利益とったらだめよ」と、その企画用の商品として通常よりもかなり安く、頑張っている(?)店でしたらメーカーから卸問屋に出荷されるのとほぼ同じような値段で呉服屋に卸され、そういう商品がプレゼント用として使われます。

その当時、私が勤務していた店で胴裏+八掛+国内手縫い仕立てで40000円程度だったように思います。純利益は1万円以上あったので、この商法で帯を買って頂けなくても裏地、仕立て代で取り返せるため赤字にはならないようにしていました。帯は一応お勧めはしますが強制ではないので6割ぐらいの方が購入したような印象です。

今の感覚でいうと「インターネットもあるし、着物さえもらえたら帯はネットで買うんじゃないの?」なんていう方もおられるかもしれませんが30年前ですからね、インターネットなんてまだほとんどの方は知らなくて、着物を着てみたいと思ったら呉服店に行くしかなかった時代なのです。

先ほど「体感的には6割ぐらいの方が帯も購入した」と書きましたが、先ほど書いた「お得意さんにはあまり案内しない」というのを覚えておられますでしょうか。お得意さんは今までにもたくさん帯を購入しているはずなので、プレゼントが当たっても今までの帯を合わせることができるので帯の買い上げ率がかなり落ちてしまうため、お得意さんにはあまり声をかけません。あくまでも「まだ何も持ってなさそうな着物初心者」を狙う企画であり、ご新規さんを獲得するための手段なのです。

当選商法というとなんとなく怪しいし、褒められた商売の仕方でもありません。しかし法的にグレーというか黒というか、そういうのは考慮せずに単純にお得かどうかを判断すると、お仕立てが強制であったとしても反物がタダならトータルでお得な価格である可能性は高いです。「当選したから」というような情報で目を曇らせることなく、トータルの価格でその商品を仕立てて着たいかと考えて、もしそれでも欲しいと思ったら購入するのもアリかもしれません(ただし、稀にプレゼント企画の仕立て代に反物代を上乗せした「特別価格」になっている場合があるのでそれは要注意)。

ちなみに着物初心者向けの企画なので、ほとんどの方が袷仕立てをすることが前提で八掛や胴裏の利益も合わせて利益の計算をしているので「単衣に仕立てます」というと担当者はたぶんかなり焦ります笑。

当選商法は、禁止されていると認知されておらず、インターネットで気軽に帯を購入するなんてこともできない時代だからこそ通用した商法だと思っていたら今回Xで見かけたので「おお!久しぶり!」と懐かしい気持ちになりました笑。

以前の職場では散々この手の商法を先頭に立ってやってきた私ではありますが、もうこういう商法が通用する時代ではなくなってますし、逆に怪しいと敬遠されるばかりか呉服業界全体のイメージが悪くなってしまいますので思いますのでもうやめたほうがいいかもしれませんね。正直、その当時もお客様を騙したような商法は自分の中でもかなりの葛藤があり、ああいう商売はもうやりたくないと足を洗って現在はリサイクル着物を扱って、お客様が自分から足を運んでくださる店に華麗なる転身(?)を遂げたわけですが、それはまた次の機会に…。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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