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玉繭と牛首紬

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本日のお題:玉繭と牛首紬
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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月曜日は毎月28日の仕入れの日だったので店を1日休んで行ってまいりました。全国からリサイクル品を扱う業者が集まり競り市をするのですが、色々な情報が入ってきたり相場観も養われたりなかなか楽しい1日なのです。

同業者と言えば当然ライバル関係でもあるのですが、その一方で同じ世界にいる仲間でもあるわけで、そういう方々(ほとんど大先輩ばかり)とお話しさせていただけるのはとても勉強になります。

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■玉繭と牛首紬

今週のお題は「玉繭と牛首紬」です。玉繭ってご存知でしょうか。2頭(注)の蚕が一つの繭の中に一緒に入っているもので、普通に養蚕をしているとだいたい2-3%程度必ずでてくるものですが、2頭の蚕が好き勝手に(?)糸を吐いて繭を作るため、糸が絡み合ってしまい綺麗な糸を作ることができません。そのためくず繭の扱いとなります。これを「玉繭(たままゆ)」と呼びます。

注・雑学ですが、蚕は家畜だからということで1頭、2頭…と数えます。なんとなく違和感感じますけどね。

この玉繭を使った着物として有名なのが日本の三大紬(諸説あり)として有名な石川県の伝統工芸の牛首紬(うしくびつむぎ)です。ちょっと変わった名前の紬ですが、これは石川県白山市白峰の旧地名「牛首村」にから名付けられたものです。このちょっと変わった村の名前の由来は白山の開祖泰澄大師が護摩堂を建て、牛頭大王と十二神将を祀って村の鎮守としましたが、その「牛頭」をとって村の名前にしたものを後の者が「牛首」と改めたという説、村の形が牛の首のような形だったとかいう説がありますが後者のほうはあまり信憑性はなさそうです。

この牛首村は雪深い山の中にありますので、古くから「出作り」という農業形態で暮らしておりました。家から十数キロ離れた山奥に小屋を持って春になると家族全員がそこに移り住み、農業を営むのですがその際に養蚕も行われました。そして出来のいい正常な繭は売買され、2-3%出てくる売り物にならないくず繭を使って雪深い冬の間に着物に織り上げていたのです。

牛首紬の特徴は、先ほど書きましたように玉繭を使っているということ。2頭の蚕が絡み合った糸を吐き出すので綺麗な糸が取れず、絡み合った紬の節が所々に発生しておりますが、その絡み合った糸のおかげで牛の首に引っ掛けて引っ張っても破れないといわれるぐらい丈夫で(釘を引っ掛けても釘の方が抜けてしまうという話から釘抜き紬という別名もあります)、その節の独特の風合い、素朴さによってファンの多い織物となっております。

しかし牛首紬の最大の特徴である「節がある」というのが少々曲者でして、この節があるため糸を作るときに完全な機械化ができません。節があると機械がエラーと判定して止まってしまうため、そのほとんどが手作業となってしまいます。そのため生産量としては決して多くありません。

紬には大きく分けて先染と後染の二種類ありまして、1つ目は糸の段階で絣を作って染め分けてから織って柄を表現する先染、そして織ってから染める後染の二種類ですが、牛首紬は紬の着物としては珍しく後染(あとぞめ)のものがほとんどです。完全に私の推測になりますが、大島紬などは時の権力者に税として納付する貢納布(こうのうふ)として扱われていたので、染めの技術が確立されていない時代でも細かな柄を描いて権力者に納めなくてはならないため先染による柄の表現が発達(注)しましたが、牛首紬はあくまでもくず繭を使ったもので貢納布としては使えなかっために先染の技術が発達しなかったのではないでしょうか。いや、あくまでも私の推測なのであまりよそでは言わないでください笑。

注・江戸時代までは布に柄を描くと滲んでしまうため直接描くのは難しく、染め分けるのは絞りによる技法が一般的でした。糸で括ったり、板で挟む、蝋で防染をするしかなかったので広義の絞りの一種である絣による先染模様が発達しました。ちなみにそこから染めを発展させて糊で防波堤を作って染料が滲まないようして染める技法を確立したのが皆さんご存知の宮崎友禅斎です。

ところで牛首紬には大きく分けて2種類あるのをご存知でしょうか。一つは白山工房のもので、大島紬のような滑らかな風合いの中に所々節のあるもので、おそらくこちらの方はご覧になったこともある方も多いと思います。もう一つは加藤改石(かとうかいせき)のもので、結城紬に似た真綿のような風合いです。もともと生産量は多くはない牛首紬の中でも加藤改石のものはさらに生産量が少なく、リサイクル着物の相場でもかなり高値で取引されております。

昔はくず繭として捨てられていた玉繭ですが、10年ほど前に聞いた話はその風合いが特に面白いということで逆に1-2割程度高値で取引されていると聞きました。最近ツイッターで教えていただいたのですが、手作業の独特の風合いが珍重されるのは世界的な傾向になっているようですので、もしかすると現在はさらに人気が上がってもっと高値で取引されているかもしれません。時代は変わっていくものですね。

時代は変わっていくものといえば、昔は玉繭の中に入っているのは必ずオスとメスのペアだったようですが、最近はオスとオス、メスとメスが入っていることも多くなったようです。これはメーカーの方から直接聞いた話なので本当です。本当ですってば!

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
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