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着物ルールの成り立ちと情報伝達

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本日のお題:着物ルールの成り立ちと情報伝達
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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毎日寒いですね。もう3月も中旬だというのに真冬のような寒さです。呉服屋としては寒い期間が長いほうがありがたいのですが、朝起きる時はやっぱり寒いですね笑。そろそろ実店舗の方は卒業シーズンで朝早くから連日着付けが入っており、いよいよ春だなぁ、なんて思ってます。帯が隠れてしまうコートを脱いで着物でどこかにお出かけしたいですね。

【3月のプレゼント企画がスタート致しました】
3月のプレゼントは黒地のカシミール生地にシルクのショールです!非常に風合いの良いカシミール生地にシルクの手刺繍で、このシルク手刺繍どこかで見たことあると思ったらあの無月ショールのメーカー「ムゲツクリエイト」製の逸品ショールでした。180cm×70cmの大判ですので帯まですっぽりと覆うことができ、ちりよけとしても良いですね。

もうすぐ春なのでコートの代わりにこのショールでお出かけいただければ、と思っております。このショールを1名様にプレゼントいたします!

【素 材】刺繍糸シルク100% ショール部分ウール100%
【サイズ】180cm×70cm

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■着物ルールの成り立ちと情報伝達

本日のお題は「着物ルールの成り立ちと情報伝達」です。現代は情報社会と言われまして、今日の午前に北海道に大きな事件が起こればすぐに沖縄の離島まで情報が行き渡る時代です。インターネットという手段が登場してからはそのスピードはさらに速くなり、そしてその情報も個人レベルの細かい内容になっています。よく知らない土地のどこそこでこんな落し物がありました!うちの犬が行方不明になりました!なんて情報がX(旧ツイッター)でも頻繁にポストされてますよね。

なので着物の情報もあっという間に全国を駆け回ります。あそこに木綿の専門店ができた、あそこに紳士物だけの専門店ができた、などからあそこの店はこんな接客で気分が悪かったということまで。着物というニッチな世界はテレビなどマスコミでは取り上げられにくいので、着物ファンはある程度自分で情報を集めなければならず、この時代は着物ファンにとって非常にありがたいことだと思っております。

いま、多少着物ファン同士の交流ができて、頻繁に着物姿の方を見ることができるのはインターネットがあるからだと思うんですよ。私が着物業界に入った30年以上前はインターネットはまだ一般に開放されていなかったように思います。ちょっと昔話をさせていただくと、当時私はシャープのミニ書院というワープロに2400bpsのモデムをつないで、23時からのテレホーダイでピーガラガラピーとnifty-serveとPC-VANでパソコン通信をやっておりました。

パソコン通信ってのは主に文字だけの掲示板でして、着物や料理、バイクなどさまざまな掲示板があり、同じ趣味を持つ方同士が交流していました。その中の着物関係の掲示板で知り合った方とは今でもXなどで交流しています。こんな話をしてもなんのこっちゃ、という方が大半でしょうね。当時の回線は遅すぎて、コンピュータのアップデートファイルが90MB(GBじゃないですよ!MBですよ!)あって「こんなんダウンロードしたらテレホーダイ一晩中かかるやん!」と絶望したのを覚えています笑。

話が逸れました。今はとにかく情報社会。遠く離れたアメリカの大谷選手が今日はどんなトレーニングをした、ヒットを打った、ホームランを打ったなどという情報が一瞬で日本に届く時代です。

着物はみなさんご存知のように非常に歴史の長い世界です。それこそこの世界に誇る服飾文化を語り始めたら平安時代…いやもっと前か。2000年以上の連綿と続く歴史を話さなくちゃならなくなります。日本は四方を海に囲まれ、他国の侵略に脅かされることが比較的少なかったため、豊かな服飾文化が花開いた国です。国境が他国との陸続きになっていると奪い合いや戦争の歴史であり、生き残るのに精一杯の時にファッションのことなんて考えられず、服飾文化は発達しにくいことを考えると、日本は独自の文化が独自に発達した稀有な国と言っていいかもしれません。着物という豊かな服飾文化が現代まで受け継がれてきたのは、ある程度平和な期間が長く続いた日本の地理的な要因も多分にあると思うのです。

前置きが長くなりましたが、2600年の歴史のあるこの日本。当然昔は情報伝達の手段なんてほとんどありません。江戸時代から明治にかけてはかわら版などがあったようですがそれ以前は庶民にはほぼ情報伝達手段(マスメディア)は無かったのではないでしょうか。今ちょっと調べてみたところ、地方で暮らす方々が外部の情報を得る手段は旅人が主だったようです。なので地方の方々が旅人を大切にし、住まいを提供したのだとか(参考 宮本常一氏著 庶民の旅)。おそらく娯楽がほぼなかった時代ですので、他の地方の情報を持っている旅人のお話は非常に興味深いものだったのでしょう。それが結果的に情報が伝達されていくことになったのではないか、と思われます。

今なら…宇宙人が何百億光年先からやってきて遠く離れた宇宙の話を興味深く聞いているような状態でしょうか笑。無害な地球外生物がやってきたらそりゃ目をキラキラさせながら聞きますよね。

旅人は情報を得るための重要な手段だったようで、次はどちらの方角に行くかを尋ねて手紙を託し、その手紙は旅人から旅人へと渡され、なんと最終的にはちゃんと届いたとか。まあこの辺はどのくらいの手紙が出されて最終どのくらいの割合で届いたのか、統計等はなさそうではありますので「届いたこともある」という程度に考えるのが自然かな、と思いますが…。あっという間に地球の裏側の情報まで手に入れられる現代とは違い、届いたとしてもカタツムリレベルのスピードでジワジワと情報が伝達されていったというのは想像にかたくありません。

着物に関するほとんどのドレスコードや様々な風習は近年にできたものではありますが、もちろん昔に成立したものも数多くあります。家紋はどの家紋を受け継いでいくのか、丸を入れるか入れないのか、その他冠婚葬祭に関することなどは地方色が色濃く残っております。

物心ついた頃から超高速情報伝達の世界に生きてきた世代からすると違和感を感じるかもしれませんが、こんな小さな日本という国であっても、着物のドレスコードや風習一つとっても各地方で全く違うのです。なのでネットの掲示板等で質問をしていただいても「こちら関西の方ではこんな感じですが…」という具合にある程度の「逃げ道」を作りながらアドバイスすることも多いです笑。でも実際その通りで、冠婚葬祭や家紋のしきたりは日本各地にいろんなものがあり、一概に「これが正解」と言えないのです。

たまに「こうすべき」と断言しているのもお見かけするのですが、それを鵜呑みに信じてしまうのは非常に危険です。各地で様々な風習があり、たまに「え?」と思うような風習の地方も多々あります。決して自分の周りでのことが日本中で同じように通用すると思ってはいけません。むしろ「通用しない」と思う方がよりふさわしいと思います。着物の世界をよく知っている方ほど「こうあるべき」というような断言はしません。全国津々浦々様々な風習があり、自分の知っていることなんてほんの僅かだと知っているので断言はできないのです。

正解があるとすればその場で一番発言権のある人にお伺いをたてるのが一番。遠く離れた大阪の呉服屋に聞くよりもよほど確実で正確な情報を教えてもらえるはずです。いや、もしかしたらその発言権のある人の答えも間違ってるかもしれませんよ。でも間違っててもいいんですよ。発言権のある方にお伺いを立ててるんですからその場ではその方の言ったことがルール。仕事でも迷った時には最後には社長に聞けばOKならば結果的に間違っていてもOKと言うのと同じです。

もしネット掲示板でしきたりなどの質問に答える時には、できるだけ質問者の住んでいる地方をお聞きして、その場所に近い方が「私の周りではこんな感じですが、こういった風習は様々なものがあるので一概には言えません」と一言書いておいたほうが、質問者の方もいろんな意見を目にして戸惑うことがなくなるかもしれないですね。着物関係は冠婚葬祭ごとに密接に関係しており、冠婚葬祭は特に地域差が大きいのでそのあたりを頭に入れといていただければ、と思います。

最後にちょっと興味深いお話を。

昔からの風習、しきたりで同じ地方で同じようなものがあるのは容易に想像できると思うのですが、遠く離れた地方…たとえば東海地方と中国地方などかなり離れた地方で同じような風習を見つけることがあるらしいのです。そしてその両者の間の地域ではそういう風習は行われておらず、連続性を見つけることができないという状況です。

これはある風習が江戸や京都など大都会で発生して流行り始めると全国をうろうろしている旅人が情報を拡散させていき、ゆっくりと同心円状に情報が広がっていったのではないか、と言われています。どんな風習、しきたりがそう言うものなのか、と言うところまでは調べられなかったのですがちょっとした豆知識の一つして紹介させていただきました。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
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