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呉服屋をやめたくなったお話 その3

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本日のお題:呉服屋をやめたくなったお話 その3
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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2月のプレゼントは黒地に椿柄の厚底草履

2月のプレゼントが始まりました。今月は黒地に椿柄の厚底草履です。紬や小紋などに合わせていただけるカジュアル用で仕入れるの結構高かったです笑。今回はかなり評判が良いようですでに多くの方にご応募いただいております。まだ会員登録されていない方は是非会員登録の上ご応募くださいませ。

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■呉服屋をやめたくなったお話 その3

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仕事って、もちろん生活するためにお金は必要だけどそれだけじゃないと思うんですよね。学校を卒業して就職するとき、給与面や休み、福利厚生なども考慮するだろうけれど、やりがいも仕事選びの重要な要素になると思うんですよ。私も例に漏れずやはり社会の役に立って頑張りたいと思ってました。

ところが実際にはお土産物屋さんで、展示会の勧誘に走り回り、お客様にお勧めして購入していただいた帯は一度も使われることもなくタンスの奥でシミだらけになっている現状。なんだこりゃ。一体なんのために働いているのかわからなくなりました。

ここで展示会の勧誘の方法について詳しく書きます。

私が勤務していた店の場合は、展示会が3週間後ぐらいに迫ってまいりますと勧誘期間に入ります。展示会は毎月のようにやっておりますので3週間前から勧誘というと年がら年中勧誘期間になってしまうわけでして、営業の仕事はずっと勧誘に走り回ることになります。

勧誘というと単に「展示会に来てください」と口約束をするだけではなく、先日から書いておりますようにお土産のご予約というのをいただきます。おそらく展示会形式の呉服店では一般的な手法ですが、お土産の予約金としてお客様からお金をいくらか頂くんです(だいたいは1000円)。

お客様に説明する建前は「みなさん何でもお持ちなので、一般的なお土産の費用の2000円や3000円程度のものをお渡ししてもお客様に喜んでいただけないのでお客様にも1000円ご負担いただき、当店も2000円や3000円程度を足して本当に喜んでいただけるものをお渡しします」なんて言ってましたが、実際の狙いはただ口約束で「行きます」と言われてもお客様は忘れてしまうので1000円をお預かりして控えをお渡しして忘れないようにするのです。申込書を書いて財布からお金を出して頂き、営業は控えを手渡すことによって印象に残りますし、幾らかのお金を支払うと「お金払ったんだから行かなくちゃ」と動機づけになります。

予約時にお客様が集中しないように展示会のご来場の日時を聞いて予約の時間を調整するのですが、大阪の某呉服店(倒産済)ではこの日時にお客様が来られないと勧誘した営業マンは夜のミーティングで吊し上げを食らうとか何とか…。そのため営業マンも必死で勧誘するので展示会の予約をしていただいたお客様の来場率は驚異の100%。午前中に一組、午後に二組をスケジュールで組んで、お客様のお相手ができなくてせっかく来て下さったお客様を何も買わせずに帰してしまうということがないようにしていました。入院中のお客様でも外出許可を取らせて展示会に来ていただいたという話も営業マンから直接聞きましたが、そこまで行くとちょっとおかしいんじゃないの?と思いますね。まあ、そんなことをしているから潰れてしまったんでしょうけれど…。

ちなみに私の勤務していた店はと言いますと、そんな無茶なことはしなかったのですが、そのせいか来場率はご予約をいただいた方の半分以下でした。1000円払ってるのに半分以下になるの?と思う方もおられると思いますが、当店は来場されなかった方には後日に1000円をお返ししてたんですよ。先ほど書きましたように展示会はほぼ毎月やってます。なので展示会が終わって1000円を返却する時にはまた次の展示会が1ヶ月後にあるのでまたその1000円で次の展示会のご予約をいただくことになります。

営業マンの成績はこの展示会のご予約をいただいた数で決まるので、営業マンからすれば返却する1000円をまた次の展示会のご予約に入れていただければそれで成績となります。お客様は内心「そんな毎月展示会に行ってられるかーい!」と思いつつもよく知ってる営業マンなので展示会の企画説明を聞くのもそこそこに「どうせまた次に展示会あるんやろ?その1000円を次のに充てといてや」となり、結局「お土産の予約を取るため」だけの営業で本当に着物を販売するための仕事とは乖離していたのが現実でした。

もうね、こうなったら自分が何をやっているのかわからないんですよ。毎月1000円を自分とお客様の間でキャッチボールしているようなもので、たまに購入していただいた帯は一度も使われずにカビが発生して使えなくなってる。何だか全く無駄なことをしているような気がして「こんな仕事辞めてやる」と思ってたんです。

でもその当時一般に普及し始めたインターネットが私のところにもやってきました。そこでは着物ファンが自分の着姿を写真に撮って着物を楽しんでくださってたんですよ。これね、着物ってフォーマルな時にしか着ないと思い込んでいた私にとって物凄い衝撃だったんです。前回書いたように呉服店ってマニアなお客様が主なターゲットではなく、結婚式やお宮参り、七五三、入卒業式などに着物を着たいという方が主なターゲットですので(注)私が勤務していた店も当然そういったフォーマル着が中心でした。

注:ここ10年-20年ぐらいはレンタル等が普及したり、節目に着物を着る方も少なくなり、生活様式の変化もあって着物需要が減少しているため、宝石販売にも力を入れたり、お客様が高齢化しているため、健康グッズ(マッサージチェアなど)を販売して売上を維持しようとしています。呉服の展示会の片隅でそういった商品を目にしたことがある方も多いでしょう。私の勤務していた店ではお客様がかなり高齢化していたので健康グッズがよく売れました笑。

その方々を見ると本当に着物をファッションとして楽しんでおられたんですよ。今までのフォーマル一辺倒の着物じゃなくて、カジュアルで自由な装いで楽しんでおられる。お土産を予約させて一生懸命着物をお勧めする販売方法でしか売れず、購入していただいた着物は全く着られていない、そんな商材に未来があるわけないやん、と思っていましたが「ここに未来があったか!」という気持ちでした。

その店はいつか辞めてやる、と思ってましたけれど立場上すぐには辞められず、その後もしばらく勤務しましたが、結局新品呉服店だった家業に戻り、新品屋さんからリサイクル屋さんになって現在に至ります。今は毎日とても楽しく仕事をさせていただいておりまして、発送させていただいた着物を着た写真をSNSで拝見すると、その昔一度も着用されずシミだらけになってしまったことに落ち込んでいた時と比べて精神的にすごく楽になったなぁ、と思うのです。

先日、着物を購入した方が、その着物を着て販売店にいくのはなんだか遠慮してしまう、なんておっしゃってるのを見たんですけど、呉服店の販売をさせていただいた立場から言わせてもらうとお客様に来ていただけるのはすごく嬉しいんですよ。 お客様の着姿に飢えていると言ってもいいかもしれませんので是非着姿を見せてあげてください。きっと喜びますよ笑。

3週にわたって長々と書いてきました。決して冠婚葬祭にたまに着る程度のライトユーザーを軽視しているわけではありませんが、現在はリサイクルが中心になって超マニアなユーザーがメインのお客様で、当店で購入していただいた着物をすぐに着ていただけて着姿を拝見できるのはとても楽しく、とてもありがたいな、と思いながら仕事をさせていただいております。これからも着物ユーザーのために頑張っていきますので末長くご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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