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若い作家さんは問屋に頼らず仕事を始めるのも新しい方法

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本日のお題:若い作家さんは問屋に頼らず仕事を始めるのも新しい方法
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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店内にずっと使ってなかったデスクトップパソコンがありまして、どうやって処分しようか困っていたところ、友人が中古品販売しているのを思い出して聞いてみたら受け取ってくれるとのこと。というわけでもう10年か15年ほど前のPowerMacG4を福岡まで送ったんですが、あんなの使えるんやろか。本人は「売れるよ!」と言ってましたけど…。

10月のプレゼント、八重山ミンサーのバッグの当選者が決定いたしました。厳正な抽選で当選いたしましたのは

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と決定いたしました!本日発送いたしますので到着まで今しばらくお待ちください。今回外れた方もまた来月是非ご応募くださいませ。お待ちいたしております。

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■若い作家さんは問屋に頼らず仕事を始めるのも新しい方法と思う

今週のお題は「若い作家さんは問屋に頼らず仕事を始めた方がいいと思う」です。先日、普段からX(旧ツイッター)で交流させていただいているtoitofabricの久冨浩則(ひさとみひろのり)さんからお声をかけて頂いてスペース(音声の生配信)を開催いたしまして、作家さんの経緯や仕事の内容、呉服業界のあれこれをお話しさせていただきました。正確に数えてはいませんが、40-50人ぐらいの方が聞いてくださっていたので私レベルの配信者では結構盛況だったように思います。

toitofabricさんは元々は別の仕事をやっておられましたが、その後織物の学校に入り、技術を身につけて作家活動を開始いたしました。学校で教えてもらった技術はもちろんベースとなっているでしょうけれど、全て自分が理解したいという欲求から藍染や糸作りの技術などは試行錯誤しながら独学で習得したそうです。

既存の流通ルートには一切頼らず、独立した当初から様々なSNSを最大限利用してお客様と直接繋がり、お客様がどんなデザイン、作品を求めているかを綿密に打ち合わせをして世界でたった一つだけの作品を作り上げて提供している、そんな作家さんでした。今までの作家さんとは全く違うスタートを切った異色の経歴といってもいいと思います。

従来の一般的な作家さんの成り立ちは次の通りです。

染色を志す若者は、まずはどこかの工房に弟子入りをします。そこで師匠について染めや織りの手法を学び、センスを磨いていきます。そして10年、20年経ってからのれん分け&独立。当然その工房には卸先(卸問屋)が入っており取引をしておりますので、大体の場合は独立した後もその卸問屋を中心に取引が始まることになるでしょう。

ネット等では問屋が中間でマージンを取るから着物が高くなるという意見をたまに目にしますが、私はそうは思いません。試しにもし京都に行くことがあれば織元に直接買いに行って(注)みたらおそらく想像するよりもずっと高いか、もしくは売ってもらえないかのどちらかの可能性が高いです。何十点単位で卸問屋と取引している織元にとって1点ずつ購入していく素人客は面倒臭いことこの上ないんです。

(注)西陣の帯ですと、西陣の証紙(メガネの形の金色のラベル)がついており、そこに西陣の生産者番号が記載されております。その番号を西陣織工業組合のサイトで検索すれば簡単にその帯の生産者や所在地がわかります。

当店は昔は新品着物を中心に扱っておりまして、ネットにも店舗を構えておりました。1点もののため価格競争はそれほど激しくないとは言うものの、やはりどれだけ安くいいものを並べられるかは大きな要素の一つでして、そのため織元に伺って直接仕入れに行くことを検討して実際に何度か仕入れに行きました。この辺りの顛末は今回とはあまり関係ないので詳しくは書きませんが、やはり当店が仕入れる数点程度ですと問屋を通して仕入れるのとほぼ変わらないくらいの価格で少しがっかりしたのを覚えています。多分小さな小売店が数反買うだけなんて面倒くさかったんでしょうね笑。こちら側からしても同じ織元から購入すると同じテイストの柄のものばかりになってしまいますので数反ずつ、あちこちの織元を回らなければならず、すごく手間がかかって、その手間を乗り越えるほどの価格的なアドバンテージがなかったのですぐにやめてしましました。

話を戻します。

一方、卸問屋と取引を始めると、売れる作家さんでしたら卸問屋はパイプを太くするために月に何点かずつでも購入し生活を支えますし、もっと認められたら「作った作品は全て買い取るから他の問屋とは取引しないでほしい」と契約を持ちかけられることもあり、そうなると作家さん側は生活が安定します。もちろん「全て買い取る」と契約する以上は一般消費者に販売するよりもかなり安価に販売しますがそれでも生活が安定し、作品作りに集中できるというのは、とかく不安定になりがちな作家さんとしてはありがたい話でしょう。

そこまでうまくいかなくても、卸問屋との取引が成立すれば、卸問屋はその作家さんを売り出すために全国の呉服小売店に「いい作家さんがいるんですよ!」とプッシュして全国の呉服店で個展を開催したり、様々な展示会に商品を並べて実演販売をさせてもらえるでしょう。。その卸問屋や作家さんの力にもよりますが独立してすぐ催事が入って忙しい毎日を送れる可能性は高いです。

しかし今回お話しさせていただいたtoitofabricさんのように、師匠につかず学校に通い、その後様々な技術は自分で試行錯誤で体得した場合はどうでしょう。おそらく京都の卸問屋に作品を持っていっても全く素性のわからない人の作品を見る卸問屋は皆無でしょう。しかもその作家さんの扱っているのは木綿が主ですのでさらにハードルが上がります。もっともtoitofabricさんははじめから京都の卸問屋とは取引するつもりがなかったから一切作品の売り込みには行かなかったそうですが。

容易に想像できるようにやはり初めは苦労したそうです。何のツテもなくこの業界に放り出されるんですから大変だったと思います。事実、初めのうちは作品作りだけで生活できず、他に仕事をしながら作品作りを続けていたそうで、それがこの数年の間に努力が実を結んでテレビの情報番組(注)で特集を組まれたり、有名演歌歌手に着てもらえたり、次第に認知されるようになり最近はオーダーを受けても半年待ちとのこと。

注:ショッピングモールのメルマガは外部リンクを貼れないため、URLは書けませんので「KRY山口放送 toitofabric」で検索していただければその時の記事が出てきます。

この方法ってすごく現代的な方法で、着物離れが叫ばれるこの時代において一つの回答だと思います。かなーり昔に「これから売り出す作家さんは問屋に頼らずにSNS等を駆使して自分でファンを作っていってほしい」と書いたことがあるんですがそれをそのまま実践しておられる方と出会えてとても嬉しくなりました。

何度もこのメルマガで書いているように呉服業界はずっと右肩下がりの状況で、下げ止まるような兆候すら見えません。その呉服業界の市場の縮小に比例して卸問屋も弱体化していく可能性もあり頼り切ってしまうのは危険でしょう。メーカーさんと話すと「最近の問屋は貸して欲しいばかりで全然仕入れてもらえない」とこぼすことが多くなったように思います。

これほどインターネットが発達している世の中ですから将来的に流通の主体はインターネットをもっと活用されるはずです。しかしながらこの現代でもほぼインターネットを利用せず、アナログな方法で個展を開催して作家さんの作品を販売しているのが現状です。こういう流通はなくなりはしないものの、終焉を迎えているのでは、と思っています。

私はSNSにどっぷり漬かっているので笑、何人かの作家さん(職人さん)とつながっているのですが、だいたい若手の方はSNSを使ったりしてご自身の作品を発表しておられる方ばかりです。もちろん卸問屋が全国に持つ販売力には遠く及ばないかもしれませんが、自分のペースで納得のいく作品作りをされているようです。

一度卸問屋と取引してしまうと、いろんなしがらみ(?)ができて自分でサイトを作って販売していこうにもハードルができてしまいます。「うちとの取引を止めるなら呉服業界全体に破門状を出して呉服業界から締め出してやるからな!」なんて三流ドラマのようなことは言いませんし、そんな力を持ってる問屋もありません笑。この辺りは今回の話とちょっと離れるので詳しくは書きませんが、業界の中の流通の一部にどっぷり浸かって長く販売をしてしまうと、今までの価格との兼ね合いはどうするのか、今までの顧客はどうするのかなど、いろいろ気遣いしなければならない相手や事柄が増えてしまいます。

色々総合的に考えると初めはかなり苦労するかもしれませんが、自分の作品に自信があるなら初めから卸問屋に頼らずインターネットを活用して全てにおいて自由に作品作りができる環境を目指すのも現代の一つの作品作りのあり方ではないか、と思うのです。集客は自分自身でする必要があったり、毎月安定して購入してもらえるという安心感もないし、大変だとは思いますが…。

集客や顧客へのアフターサービスなど、手間のかかることは卸問屋や小売店に全て任せてしまって作品作りに集中するというのも一つの方法ですし、今まで多数の作家さんを世に送り出してきた背景でもあるのですが、せっかくインターネットやSNSがこれほど発達しているんですからうまく使って頑張っていただきたいな、と思うのです。

今回、お話を聞かせていただいたtoitofabricさんはStoresに店舗を持っておられるので「toitofabric stores」で検索していただければ見つけていただけると思います。ひとつひとつ心を込めた手作りの作品をご覧になってください。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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