見出し画像

ファナティック・エコシステム

気がつくと、刺されていた。
全身を細い針で、幾度も刺される痛み。
本来感じることのない視線の痛みで、動けなくなった。

「何をしている」
見知らぬ男に手を引かれ、その場を離れる。
帽子を目深に被り、襟の高い黒いコート姿だ。

「何も知らないで、あの場所に立っていたのか?」
静かな、強い口調で問われる。
痛みから開放され、首を振り意思を伝える。

「この時間、あの場所は奴らのテリトリーだ」
この男は、知っている。
聞かなければいけない、自分にどんな危険が迫っていたのかを。
乾いた喉で、声なき声で必死に訴える。

「知らなかったんだな。いいか、ここはお前が思っている場所じゃない。平日午前中の動物園はレジャー施設じゃない、弱いものが食われるサバンナだ。お前が立っていた場所はカワウソの前、あの場所はフェニックス良子65歳の、縄張りだ」

【続く】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?