鬼狩首峠

鬼狩首峠

「俺が中学の時か、夜に車で実家に帰る道でだ。街灯も無い農道の脇に、女の子が立ってた。もう22時過ぎに、暗闇に一人だ。
ずっと後に姐さんの話で、深夜に家を抜け出して、彼氏に車で迎えに来てもらってたって聞いて、納得した。当時は携帯電話もなくて、時間で待ってたんだろうな」

震えながら、助手席にいる彼女に、少しでも冗談に聞こえるように話す。
車は急ブレーキを掛けて停めている。

ヘッドライトに照らし出されているのは、真っ白のワンピースを着た女の子。
その口元から、赤い液体が滴り落ちている。

バックミラーには、黒いジャージを着た女の子。
手には丸鋸を先端につけた、エンジンのかかった刈払機。

ガン!

フロントガラスが粉々に砕け、真っ白の女の子に、刈払機が突き刺さる。

あっけにとられていると、ドアがノックされた。
「悪いんだけど、乗せてくれる?」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?