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カジュアルゲームを300個プレイして分かった「ゲームの本質」

はじめに

今回はカジュアルゲームを作っている中で「ゲームとして形になったけど、このゲーム本当に面白いのか」という状況が自分自身あったので、ゲームの本質を考え抜いた上でゲームプランニングをしていこうと思い、その思考が一通りまとまったのでnoteにしてアウトプットすることにしました。noteの流れとしては、ゲームの本質を定義した上で重要な要素を挙げていっています。タイトルにある通り最近プレイしているゲームはほぼカジュアルゲームで、ゲームの本質と言っておきながらカジュアルゲームならではの考え方に染まっている可能性が高いので異論は多々あるかもしれません。

こちらのスライドを参考にさせてもらっています。ゲームとは何かを勉強しているときにとても参考になったスライドです。

このnoteの全体像

このnoteの全体像です。ゲームの本質から順に重要な要素を抜き取っていってそれぞれ説明していきます。

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ゲームの本質

ゲームの本質は「能動的な活動から面白さを生み出すこと」だと思っています。能動的とは「自分から他へはたらきかける」という意味です。ゲームをプレイするユーザーの目線でゲームの本質を定義すれば、「自身からアクションを起こして、その成果として面白さを得ること」となります。能動的な活動は多々あると思いますが、最終的に面白さを生み出すことを目的としているかでゲームかどうかが区別されます。例えば数学のテストは能動的な活動に部類されますが、面白さを生むことを目的としてないのでゲームではないです。ただ、そこに面白さを見出している人にとってはゲームといえるかもしれません。

このゲームの本質を要素分解していく際に着目したのが「能動的な活動」というワードです。能動的に活動するためにはそれ相応の目標がないといけないと考えています。「英語を勉強したい」「ダイエットしたい」と思ったとして、能動的に動くためにはその先の目標があるはずです。ゲームにおいてもまずするべきは目標設定です。ユーザーはどのようなアクションを通して面白さを得たいのか。ユーザーが能動的に動くための目標を定めていきます。

コンテキスト(文脈)

ゲームの目標はターゲットユーザーに応じて決めていきます。例えば「銃を打つ」「車を運転する」などです。

目標を定める上で大事なのが「コンテキスト」です。コンテキストとは文脈・脈絡・前後関係・背景のことになります。なぜコンテキストが大事なのかというと、コンテキストに応じてゲームの目標がユーザーに理解してもらいやすくも、してもらいづらくもなるからです。コンテキストを分かりやすくして、ゲームの目標を明確に理解してもらう必要があります

「車があって信号がある」
これは分かりやすいコンテキストの例です。信号に応じて車を進めるという意味がすぐに理解できるでしょう。
「車があってリンゴがある」
これは極端ですが、分かりづらいコンテキストの例です。リンゴを踏むゲーム なのか踏んではいけないゲームなのか理解しづらいです(全く違う使われ方をするかも知れません)。パッと見で車とリンゴは関係ないのでユーザーは混乱してしまいます。これではユーザーが車を運転したいと思っていたとしても、遊んでもらえるゲームにはならないでしょう。

斬新な組み合わせはアイデアとしては面白いのですが、いざユーザーに触ってもらうと「何これ分からない」という状態になることが多いです。作ってみて痛いほど感じました。斬新な組み合わせで上手くいっているゲームは本当にすごいです。

分かりやすいコンテキストに落とし込む際に重要なのはユーザーがそのゲームを既に知っているように感じられるかだと思っています。既に知っているものに対しては想像が容易いからです。想像できればコンテキストを直感的に理解できます。ユーザーが初見のゲームに対して既に知っている感覚に陥いるには2通りのパターンがあると思っています。1つ目は似たようなゲームを前にやったことがある場合です。例えばシューティングゲームはやり慣れているもしくは知っているので、シューティングをモチーフにするとコンテキストは分かりやすくなります。2つ目は現実で行なっていることがゲームに置き換わった場合です。例えばバスケットボールがあって、バスケのゴールがあるだけでユーザーは何をすれば良いのか直感的に理解できます。ペットボトルと長方形のダンボールでは、バスケの例と同じ動作でもコンテキストの分かりやすさに大きな開きがあると思います。バスケットボールをゴールに入れるイメージは現実でやったことのあることなので直感的ですが、ペットボトルをダンボールに入れる経験はなかなかしたことがないので理解がしづらいです。パッとゲームを渡されて能動的にプレイできる人は少ないでしょう。

インタラクション(相互作用)

ゲームの目標に応じて分かりやすいコンテキストが設定できた後はインタラクションに関して考えます。ここで意味するインタラクションとは「ユーザーのアクションとそれに対するゲームからのフィードバックの相互作用」のことです。

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なぜインタラクションが大事かというと、ユーザーが目標に対して行ったアクションに対してゲームからフィードバックがないと、目標に近づいているかどうかの進捗確認ができなくなるからです。目標達成のためにプレイしているのに、目標がどこにあるのかを見失ったらユーザーは離脱してしまいます。ユーザーがアクションを起こしたら逐一、今のは良かったよ or 悪かったよというフィードバックをしてあげなければなりません。ユーザーにアクションをさせ、それに対してフィードバックをする。このサイクルを何回回せるかが重要になるのです。

ゲーム開発ではあるあるですが、アイデア出しの段階で絶対面白いと思ったのにいざプロトタイプを作ってみると何か違うという現象は、コンテキストとインタラクションの乖離であると思っています。コンテキストではこのようなインタラクションが想定されるor欲しいのにプレイしてみるとインタラクションがなされていないとったイメージです。

ここでさらにインタラクションを2つの要素に分解できると思います。「①ユーザーのアクション」「②ゲームからのフィードバック」です。①と②の相互作用を回すに当たって大事なのは「①ユーザーのアクション」を如何に増やし、「②ゲームからのフィードバック」を如何にユーザーに感じてもらうかになります。

コンフリクト(障害)

ではまず「①ユーザーのアクション」を如何に増やすかについてフォーカスします。ユーザーにアクションを増やしてもらう方法は単純で、目標に対して障害を置くことです。障害のことをコンフリクトとここでは呼びます。ユーザーは目標を達成するために、その邪魔であるコンフリクトを取り除こうとしてアクションを起こします。

コンフリクトもただ設置すれば良いという訳ではなく、適切に扱うことが必要なので、ここではコンフリクトの種類良いコンフリクトの条件コンフリクトの性質について見ていきます。

【コンフリクトの3つの種類】
・障害物(敵や穴やトラップ)
・対戦相手(複数のプレイヤーによるライバル関係)
・ジレンマ(複数の選択肢のジレンマ)

【良いコンフリクトの条件】
・誰でも訓練すればできる
・挑戦したくなる
・上級者はさらに上手いプレーができる

【コンフリクトの性質】
・強制的なコンフリクト
・自発的なコンフリクト

まずゲームの目標とコンテキストに応じてコンフリクトの種類を選びます。そしてコンフリクトの種類が選べたらそれを良いコンフリクトに落とし込んでいきます。良いコンフリクトに落とし込めた上で、ゲーム全体としてバランスを取るためにコンフリクトの性質を利用して調整します。

良いコンフリクトの条件についてですが、誰でも訓練すればできるというのはユーザーに進捗感を感じてもらうという観点で大事になってきます。フィードバックを与える意味もそうですが目標に近づいているという感覚をユーザーに持ってもらえているかを常に頭において仕様を作るべきだなと感じています。挑戦したくなるに関してはコンフリクトを設置して、ユーザーの心理的負担が高まらないこと、そして主体性を持ってもらうことが大事です。上級者はさらに上手いプレーができるですが、これはゲームのレベルデザインの観点でとても鍵を握るなと感じているポイントです。ユーザーにはゲームが得意ではない人もいるので、ゲームの難易度はその人たちに合わせることが必要になってきます。そのときに考慮するべきは、難易度を下げたときに上級者も楽しめる設計にできるいるかどうかです。その設計を作るためにコンフリクトが必要になってきます。ここでは「1SHOT」というカジュアルゲームを例に取ってみたいと思います。

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タップで赤い発射台から球が発射されて、動く障害物を上手く避けて奥のマトを破壊するというゲームなのですが、障害物に金のダイヤがくっ付いているのが分かると思います。このダイヤを取らなくてもゲームはクリアできるのですが、上級者は金のダイヤを取った上でゲームをクリアするという選択肢も取ることができます。ゲームの難易度は上げずに上級者も楽しめる設計を作れているのです。金のダイヤは良いコンフリクトの3条件を綺麗に抑えたものだと言えると思います。

また、コンフリクトには2つの性質があります。強制的なコンフリクト自発的なコンフリクトです。強制的なコンフリクトとは取り除かなければ目標が達成できないコンフリクトのことで、自発的なコンフリクトとは取り除かなくてもいいけど取り除いたら良いことがあるコンフリクトのことです。

先ほどの1SHOTのコインは自発的なコンフリクトに当たります。重要なのはどちらかの性質一方を置くのではなく、両方をバランスよく置くことです。強制的なコンフリクトがないとユーザーは無条件にゲームクリアできてしまうので必要な要素ですが、強制的なコンフリクトばかりだとユーザーの心理的負担が増してしまうので、バランスよく自発的なコンフリクトを配置していきます。また、自発的なコンフリクトを入れることで主体的にゲームをプレイしている感覚を作れます

コントラスト(対比)

次に「②ゲームからのフィードバック」を如何にユーザーに感じてもらうかにフォーカスします。方法は色々あると思いますが、中でもフィードバックのコントラスト(対比)によってフィードバックをより感じてもらうことが大事だと思っています。ユーザーのアクションに対して1が通常のフィードバックだとすると、-1や3や10のフィードバックを与えていくことで対比を作ります。フィードバックには3つの種類があります。

【フィードバックの3つの種類】
ニュートラル:1のアクションに対して1で返す
ポジティブ:1のアクションに対して3や10で返す
ネガティブ:1のアクションに対して-1で返す

ニュートラル・ポジティブ・ネガティブです。ゲームの本質は「能動的な活動から面白さを生み出すこと」であるため、最終的にポジティブフィードバックを与えることが必要です。ニュートラルやネガティブなフィードバックでは面白さを感じられないからです。ここで言うコントラストとは3種類のフィードバックを使い分けながら、最終的なポジティブフィードバックを際立てることを意味します。最終的に10のポジティブフィードバックを与えてユーザーに面白さを感じて貰いたいので、いつも10のポジティブフィードバックを与えてはいけないということです。10のフィードバックに慣れてしまうからです。1や-1や3が返ってくる中で10が返ってくるからこそ面白さが際立ちます。

ここで大事なのはポジティブフィードバックを複数パターン持つこととポジティブフィードバックの頻度を管理することにあると思っています。ユーザーはどんな小さなアクションでも褒めてもらうと嬉しく感じます。そのためアクションに対して小まめにポジティブフィードバックを返していくことが必要です。しかし頻度が多い分、飽きがきてしまうので飽きがこないようにポジティブフィードバックは複数パターン持っておきます。そして、複数のポジティブフィードバックの頻度を確率とデータに基づいて管理していきます。ゲームの醍醐味はここにあると言っても過言ではないかもしれません。ゲームは現実世界ではなく仮想世界であるため全てのアクションはデータ化でき、コントロール可能です。ユーザーがちょうど良いと感じるポイントが存在するのでそこを狙っていきます。100回に1回だと少なすぎるし、100回に90回だと多すぎます。難しすぎず簡単すぎず、ユーザーを引き込める適切な頻度に持っていくのです。確率とデータに基づいてと偉そうなこと言いましたが自分自身まだまだここは勉強途中で知らないことばかりなので適切なゲームデザインができるように勉強していきたいと思っています。カエルDさんのフロー理論を基にした記事は非常に参考になります。心理学から学べることが多い分野だなと感じています。

まとめ

【ゲームの本質】
・ゲームの本質は「能動的な活動から面白さを生み出すこと」
【コンテキスト】
・能動的な活動を生み出せるようなゲームの目標を定める
・ゲームの目標が理解しやすくなるような分かりやすいコンテキストにする
・分かりやすいコンテキストとはユーザーが既に知っているかどうか
【インタラクション】
・インタラクションとは「ユーザーのアクションとそれに対するゲームからのフィードバックの相互作用」
・インタラクションの役目はユーザーが目標に対しての進捗確認をできるかどうか
【コンフリクト】
・ユーザーのアクションを促すためにコンフリクトを設置する
・コンフリクトの種類は障害物、対戦相手、ジレンマの3つ
【コントラスト】
・フィードバックを感じてもらいやすいようにフィードバックにコントラストをつける
・フィードバックの種類はニュートラル、ポジティブ、ネガティブの3つ


最後までありがとうございました!!


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