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石田徹也遺作集

石田徹也さんの作品に出会ったのは高校生の頃だ。

大学に行くつもりはないが英語をしっかり学びたくて、ホニャララ高校の国際英語科というゴリゴリでギャンギャンの進学校に入学した。

大学に行ってまで学びたい学問はなく、とりあえずやなんとなくで進学するには高すぎる学費を親に支払ってもらうのは気が引けたので、働く方が自分には向いていると思っていた。

たしか高1の時だったと思う。
いろんな大学のいろんな分野の先生が1時間だけ講義をしに高校まで来てくれる機会があった。
みんなは割と真剣にどの講義を受けるか選んでいたが、わたしは能天気に居眠りばかりしていたアホでした。

「大学に入ってまで学びたい学問はなく」とは言いつつも、強いて言うなら心理学には興味があったので、心理学と芸術を交えながら講義をしてくれる先生の講義を受講した。

サルバドールダリなど有名な画家の絵画を見ながらお話をしてくれたのだが、その中に石田さんの「飛べなくなった人」と「戦士」いう作品があったのだ。

初めて石田さんの絵を見た時の衝撃はすごかった。

なんていうんだろう。
非日常な日常。
まだ少し温もりが残る無機質。
一切攻撃的でなく、こちらにもたれかかってくるような空気。

16歳のわたしにとって、石田さんが描いているものすべて初めて知る世界だったもので、その時の衝撃は今でも忘れられない。だからもっとじっくり鑑賞したくて遺作集も購入した。

石田さんは2005年に亡くなっている。
わたしはこれを惜しいと思ってしまう。
もっと見ていたかったなと思ってしまう。
静岡県立美術館に行けば既存の作品を鑑賞することはできるが、そういうことじゃないんだ。
作品のことを彼の口からこれ以上聞くことはできないし、彼の新しい作品を見ることができない状況なのが切ないのだ。

全ての作品にどこか寂しそうな眼差しの男性が描かれている。
その男性は石田さんにそっくりなのだが、本人は「自分ではない」と否定している。

乗り物や建物と一体化した男性が描かれていることが多い。
遺作集の表紙にもなっている「飛べなくなった人」のように。

こう、自由がなくて身動きが取れないような圧迫感を感じる。そういう窮屈で息苦しくなってくるような作品が多数見受けられるのは、生前の暮らしの中でそう感じることが多かったりしたのだろうか。わたしにはわからない。
現実のような非現実と、非現実のような現実が交差している。

石田さんが描く作品を、シュルレアリスム、と称していいですか?
所謂シュルレアリスムと呼ばれるルネマグリットやサルバドールダリのような世界観は好き嫌い分かれるかもしれないがわたしはすき。

「現実主義」を意味する「レアリスム」に、「過剰な」という意味の「シュル」をつけた、「シュルレアリスム」。

無意識のうちに抱えている欲望や感情がコントロールされないまま描かれる。
我らは心に抗う必要なんてないのネ。

石田さんの作品からは、そのようなものを感じる。

余談だが、シュルレアリスムの画家たちが好んでいた技法に「デカルコマニー」というものがある。

紙の上に絵の具を置いてその上から紙を押しつけて剥がす、もしくは、二つ折りの紙の片方の面に絵の具を置き紙を閉じて、もう片方の面に同じ模様をつけ左右対称にする、みたいなものだ。

わたしはこれが好きで、「decalcomanie」という歌を作った。夕暮れのきれいな徳島の海を見た時、地平線を境に空と海がシンメトリーだということに気づいたのだ。


なるほど。地平線を谷折りしたら空と海が出来るのだね。


それはさておき。

わたしは「帰路」と「制圧」という作品が好きだ。

「帰路」という作品は、振り向きざまの少年のお顔にぽっかりと真っ黒の穴が空いていて、その穴に幼い男児が座っているというものだ。
空洞になっているような気もするが、段差などないはずの場所に男児が座ってこちらを伺っている。

この作品を観ると、とーーーっても不安な気持ちになる。何故顔に穴が空いているんだそもそも。その空虚な様は観る者全てを不安にさせると思う。少年が記憶していた幼少期のことを想起させているのだろうか?分からない。髪型や服装を見ると、心が空っぽになるにはまだ早い年齢の少年に見えるが本当は青年だったりするのだろうか。なにせ顔がないので分からない。

「制圧」という作品は、「石田徹也」と書かれた名札を下げた男性の顔面にガラケーがめり込んでおり血まみれになっているものだ。肝臓が良くなかったのか、その名札には「肝臓」と書かれている。左胸あたりに右手の拳。右胸には三途の川を渡るような小船があり、乗客は3名ほど。
ガラケーの画面に写っているのは外国の大統領か、何かの番組を観ていたのか。

さては、全く伝わってませんね?
そりゃおいらだって画像拾って載せたいさあ。しかしこの世にはクリエイターを守る「著作権」というものが存在するので、載せることはできないんだなあ。
映画のブログでも画像を使いたいけど、一応我慢して、代わりに引用してる。


でも先ほど紹介した2つの作品は検索したら普通に出てくるのでggr。

おいらはおそらく躁鬱気味なので、調子悪い時に鑑賞したらついついのめり込みすぎてしまう。ここ数日はどんよりしてます。

本当はもっと紹介したいものがあるけど、そんなことしてるとキリがないし野暮なのでこの辺にします。

気になった人は是非検索してみてね。
気分は重くなる可能性があるから、調子良い時に。

最近、みなさんいかがお過ごし?

おいらは少々旅に出てました。

神戸空港のFDA、場所分かりにくい



「白って200色あんねん。」



白が200色あるなら、青はもっとすごそうだな、と飛行機の窓から臨く空を見て思う。


空って青いなあって思うやん。


でもそれって雲とか街とか山とかと一緒に空を見るから「今日も今日とて空が青いですねぇ〜」って感動できるんだと思う。

空の青いところだけ見たことある?

視界全て空色にしたら、吸い込まれてしまいそうで結構怖い。
空色の画用紙を目の前にぶら下げてるみたいな感覚になって距離感分からなくなったこともある。目がおかしくなる。いや、おいらの頭がおかしいんか?


視界を全て空色にできるくらい周りに何もない場所に、君は行ったことあるか。



何もない場所でも新しい感情を知ることができるだなんて。地球のポテンシャル計り知れんな。



このブログ、途中までは飛行機の中で書いてたんですけど、近くに座っとる人の中に確実に湿布貼っとる人おった。
 


久しぶりに更新したね。
文章を考えるのはそこそこまあまあかなりだいぶ楽しいもんです。


シーユーアゲイン!

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