見出し画像

Bon Joviはすごい!〜ハードロック・ヘヴィーメタル雑語りへの反論〜:オジ&デス対談第8弾 Vol.5

 Vol.4では、一部ロック親父が"対立するもの"として扱いたがるハードロック/ヘヴィーメタル(以降、ハードロック=HR、ヘヴィーメタル=HMと略す)とグランジ・オルタナには、音楽的にも共通点があるし、人脈的にも繋がりがあるという話をしましたが、Vol.5でも引き続き、その点についてもう少し具体例を挙げて話しています。

世代交替が忙しない「ロックの救世主」

デス:ロラパルーザの提唱者であるJane’s Addiction(ジェーンズ・アディクション、以降「ジェーンズ」)のペリー・ファレルの話の続きだけど、彼がジェーンズが解散してる時期に新しいプロジェクトで誰と共演してたか、そこで誰をギタリストや共同プロデューサーとして呼んだかっていうと、Extreme(エクストリーム)のヌーノ・ベッテンコートなんだよね。ロキノン親父(日本の音楽雑誌rockin‘ onなどが振り撒いた有害無益な価値観に染まったロック親父のこと)的にはオルタナ系とは相容れないはずの80年代HR/HM組であるエクストリームの超速弾きギタリストの、ね。
 でも、すでに言ったようにエクストリームはHR/HMとファンクを融合させたバンドで、ジェーンズもHR/HMとファンクとその他色々の融合なんだよね。この2つのバンドって結びつけない人の方が多いんだけど、ざっくり言うならHR/HMとファンクの融合という意味では似たことやってるわけだよ。だからペリー・ファレルがヌーノを呼ぶっていうのは、必然的でもあるわけ。

オジサン:なるほど。要は自分がやりたい音楽、こういうことやりたいっていうのが伝わりやすい相手で、なおかつ技術もあって、ということでヌーノを呼んだって感じですね。デイブ・ナヴァロと違い過ぎない感じもしますし。

デス:そうそう。で、こうやって見ると、実はメインストリームのHRとグランジ・オルタナって、そんなに接点がないわけじゃない。意外と地続きだなってことが分かってくる。

オジサン:そうですね。

デス:他にもある。あのね、例えばね…

オジサン:何ですか、次は?

デス:グランジ勢では兄貴分のSoundgarden(サウンドガーデン)が、ブレイク前に誰の前座をしてたかと言うと、Guns N‘ Roses(ガンズ・アンド・ローゼズ、以降ガンズ)とかSKID ROW(スキッド・ロウ)なんだよ。他にも、インダストリアル系のNine Inch Nails(ナイン・インチ・ネイルズ、以降NIN)とかオルタナ系のミクスチャーロックの先駆者であるFaith No More(フェイス・ノー・モア)もガンズの前座をやってた。
 前にも話した通りガンズのメンバーが新しいものに目ざとい人たちで、ブレイク前のサウンドガーデンとかNINとかフェイス・ノー・モアに目をつけて前座に起用してたのよね。だから、彼らは、HRバンドとともに成長してブレイクしたバンドとも言える。

オジサン:それ、むしろ「良い話」ですよね。

デス:ところが、NIRVANAとガンズは、主にカート・コバーンとアクセル・ローズの仲が悪かったことで、新旧世代対立の象徴のように扱われる。新しい世代の代表がNIRVANAで、古い世代の代表がガンズみたいなね。
 でも、ガンズも出てきたばかりのときは、実は「ロックの救世主」と言われてたんだよね。

オジ:そうなんですね。

デス:ガンズがそう言われていた理由は、先に言ったように(Vol.4を参照)、それまでの80年代のバンドとは一味違って、もっと60〜70年代のロックやパンクからの影響も大々的に取り込んだバンドとして受け取られたから。新しかったのは、HRなのにパンクの要素があったことね。それが実際に言うほど新しかったのかともかくとして、ブレイク当時はそういう扱いをされていた。それなのに、ガンズのブレイクから3~4年後にブレイクしたNIRVANAが、またも「ロックの救世主」って言われてるのよね。救世主、短期間で同じ国から何回出てきてんだよって話なんだけど…。

オジサン:救世主が出てきては死んで出てきては死んで…の繰り返しじゃないですか。で、カートから見ればガンズが旧世代を代表するスーパーヴィランみたいな感じってことですかね。

デス:あとさ、救世主が必要になるっていうのはさ、ロック界が危機的状況に陥ってないといけないわけだけど、そもそも言うほど危機的だったのか?っていうね。

オジサン:ですよね。さっきのガンズがその古いロックを継承してるって話で思い出したのは、Bob Dylan(ボブ・ディラン)の「ノッキング・オン・ザ・ヘヴンズ・ドアー」をガンズがカバーしてるPVあるじゃないですか。あれをわざわざビデオクリップにしてるっていうのも、ガンズが昔のロックをリスペクトしてるってことを、本人たちも意識的に前面に出してたのかな?みたいなこと、ちょっと今思いました。

デス:そうそう。で、HRバンドでありながら、ボブ・ディランをカバーするみたいなセンスっていうのは、別に何もガンズだけが目新しいわけじゃなくて、Bon Joviとかもそういうことやってるわけだよ。ライブとかでは結構定番のように演ってるよね

オジサン:そうですね。The Rolling Stones(ローリング・ストーンズ)とか…。

デス:The Beatles(ビートルズ)もやってるし、Neil Young(ニール・ヤング)もやってるし、あと誰だろう?The Animals(アニマルズ)とか。古いソウルやR&Bもやってたはず。Bon Joviはガンズがブレイクする前から、古くて、かつHRじゃない楽曲を結構レパートリーにしてるんだよね。もともと、ジョン(Bon Joviのリーダー、Jon Bon Jovi)はBruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)のファンだし、リッチー(Bon Joviのギタリスト)はPaul Rodgers(ポール・ロジャース。※FreeやBad Companyのボーカルとして有名)やEric Clapton(エリック・クラプトン)やStevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)とかの影響を受けてる。Bon Joviは確かにHRバンドとして登場したけど、言うほどHRっぽいものがルーツにあるかっていうと一概にそうとも言えない。
 だからこそ、MTVアンプラグドが始まる切っ掛けになったアコースティック・セットを、いち早く実行したりする力がある。

オジサン:MTVアンプラグドといえば様々なミュージシャンの名演で有名ですけど、NIRVANAのアンプラグドも特に有名なものの一つですよね。

シアトル勢の成功の鍵は実はHR/HMの要素?

デス:そこでね、またシアトルの話に戻るんだけども、サウンドガーデンとかMelvins(メルヴィンズ)と並ぶシアトルの古参バンドにGreen River(グリーン・リバー)ってバンドがいて、これは後にメンバーがMudhoney(マッドハニー)とPearl Jam(パール・ジャム)の二組に分かれることになる。このグリーン・リバーがなんで早々と分裂したかっていうと、音楽性の違いなんだけど、簡単に言うと、マッドハニーがパンク組で、パール・ジャムがHR/HM組なのね。で、パール・ジャム組のメンバーがHR/HMのどんなのを聴いてたかというと…、これがまたね、Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)とかBlack Sabbath(ブラック・サバス)とかだったらロキノン勢でも喜びそうだけども、実はBon JoviとかWhitesnake(ホワイトスネイク)を聴いてた。HR/HMの中でもとりわけロキノン勢が馬鹿にしそうなバンドたちだよね。

オジサン:そうですね。(笑)

デス:で、そんなメンバーが、紆余曲折あって最終的にパール・ジャムを結成した。だから、カート・コバーンは、「パール・ジャムって、そういうしょうもない80年代のHR的なものがルーツにあるようなバンドなんでしょ」「それにエディ・ヴェダー(パール・ジャムのボーカル)はシアトル出身じゃねえし」みたいな感じで馬鹿にしてた。まあ、とりあえずそれはいいとしてもね…。

オジサン:(いいんだ)笑

デス:パール・ジャムの曲を聴くとわかるけれども、彼らは確かにそれまでのHRバンドにはないような新しいことをやってもいるんだけど、一方で割とHRのオーソドックな部分も大事にしてるバンドなんだよね。Even Flow(イーヴン・フロー)みたいな曲を思い出してもらったらわかるけれども、普通のHRとして楽しむこともできるんだよね。だから、―これはオレの個人的な解釈だけれども―Bon Joviとかホワイトスネイクとかコマーシャルなバンドを聴いてる人たちもメンバーにいるバンドだからこそ、いきなり最初からあれだけの大衆性を獲得できたんじゃないかって思うんだよ。

オジサン:なるほど。Bon Joviが売れたこととパール・ジャムが売れたこと、その両者には見えにくいけど根底で繋がってる部分がある、ということですね。

デス:で、さらにもう一つシアトル勢の話をすると、Alice in Chains(アリス・イン・チェインズ、以降「アリチェン」)ね…

オジサン:なんか「シアトル勢解説おじさん」みたいになってますね。
 あ、で、アリチェンがどうしたんです?

デス:うん、当時のシアトル勢では若い方に入るアリチェンだけど、最初にヒットチャートに登場したのはそのアリチェンだとされてる。アリチェンのファーストアルバムの「Facelift(フェイスリフト)」、これが90年にリリースされてジワジワと売れて、シアトル勢で最初のゴールドディスクを獲得したんだよね。

オジサン:突然現れた異色の新人バンドとしてはなかなかの売り上げですよね。

デス:中規模のヒットだよね。で、アリチェンのサウンドって、クセは強いけど、まあまあ普通に聴くとメタルに聴こえるわけだよ。

オジサン:まぁ、そうですね。重くてゆっくりな感じですけど。

デス:ミドルテンポ、もしくはスローテンポのメタルっていう感じだよね。ドゥーム・メタルなんかにも通じる。で、そんなアリチェンのことを、サウンドガーデンの(Vo.の)クリス・コーネルが、「彼らはデビューする前はバービーちゃんメタルだったよ」って証言してたことがあって、バービー人形のような格好したメタルバンド、つまりヘアーメタルっぽかったってことだよね。実際、デビュー前のデモ音源を聴くと、ガンズとかSKID ROWみたいな曲をやってるんだよね。

オジサン:それはちょっと意外です。

デス:ね。それはそれでクオリティ的にも悪くなかったんだけど、アリチェンは「フェイスリフト」でデビューする頃には、だいぶヘヴィーな方向に舵を切ってた。それは、おそらく同時期のシアトルの他のバンドの影響もあって、ああいうヘヴィーでダークな方向に行ったんだと思うんだけども。
 でさ、この「フェイスリフト」ってアルバムが、すぐ後に何のお手本になったかというと…メタリカのブラックアルバムなんだよ。

オジサン:おおー!

デス:それまでのメタリカって、いわゆるスラッシュメタルなわけだけど、ブラックアルバムでは、ミドルテンポ、スローテンポ中心で、スピードよりもヘヴィネス重視、曲の構成自体はシンプルなものが多くなって、昔のように、一見してすごくプログレッシブで起承転結がしっかりしたドラマチックな展開がほとんどないアルバムになってる。それはシアトル勢からの影響も大きい。
 メタリカのメンバーもガンズのメンバーと同じで、早い時期からシアトル勢に目を付けていたんだけど、ブラックアルバムは、明らかにその中でもアリチェンからの影響がある。あとサウンドガーデンもかな。実際、ラーズ・ウルリッヒ(メタリカのDr.)やカーク・ハメット(g)はアリチェンやサウンドガーデンがお気に入りで…、まあその辺の影響を受けたって聞くと分かりやすいよね。

オジサン:なるほど、なるほど。色々繋がりますね。

デス:そう。今言ったように、やっぱりここでHR/HM勢、しかもスラッシュメタルからガンズやSKID ROWみたいなもうちょっとライトなものまで、色んなものがこう緩やかにグランジ・オルタナと繋がるわけだよ。アリチェンはもともと自分たちがHR系だったから、80年代のHR/HMに対する敵意とかもなくて、Van Halen(ヴァン・ヘイレン)ともツアーしてるし、Bon JoviのLivin' on a Prayerの影響でトーキング・モジュレーターというエフェクターを使った曲もある。あとさ、前にも言ったけど、カート・コバーンが最初に行ったライブはサミー・ヘイガー説が有力だからね!

オジ:なんだかんだでオルタナ勢もそれぞれHR/HMと縁がありますね。

デス:そう!しかも、こう見てくると、むしろHR/HM的なものと何らかの接点があったバンドたちが結果的に売れてることが分かるよね。パンク組のマッドハニーよりHR/HM組のパール・ジャムの方が比較にならないくらい売れてるわけだし。ヒットチャートに登場したシアトル勢の中では最もパンク寄りだと言われてたNIRVANAですらも、アンダーグラウンドの頑迷な連中からは、「NIRVANAはアンダーグラウンドの割に音がメタルっぽ過ぎる」とか悪口を言われてたわけ。

オジサン:そうなんですか?!それならパール・ジャムとかアリチェンとかサウンドガーデンとか、メタルっぽ過ぎるどころ騒ぎじゃないですよね。でもHR/HMっぽいって、それ、何が悪いんですかね?

デス:そう、何が悪い?だし、だいたいそれにケチつけてるお前らはどこの誰だよ?って話なんだけど。サウンドガーデンもガンズの前座やったり、ヒットチャートに入るようになったことで、商業音楽やHR/HMに媚びてセルアウトしたとか言われたらしいし。

オジサン:ムチャクチャですね…。そんなこと言う人たちは、勝手にしみったれた音楽を閉鎖的なアンダーグラウンドのシーンでやってればいいんじゃないですかね。

デス:うんうん。

オジサン:で、今、デスのひとの話には出てこなかったHRバンドで言うと、イギリスのThunder(サンダー)っていうバンドも、NIRVANAとかを聴いて、コード4つだけで作ってみた、っていうRiver of Pain(リヴァー・オブ・ペイン)って曲があるんですけど、まあ、すごくいい曲なんですよ。そうやって、当時、HR勢も色んな影響を受けて変わったりしてて、音楽って…なんていうんですかね。特に、大きく括ってロックって言われるジャンルだったら、みんなお互いに影響し合って、普通にこう混ざり合ってて…って思うんですよね。

デス:そうそうそうそう。元々ロックはクロスオーバーしてナンボのジャンルだからね。

オジサン:だから、"グランジ・オルタナvs HR/HM"みたいな聴き方って、なんかそれ、音楽的もロック的にも楽しいの?っていう疑問がますます湧いてきました。80年代のハードでヘヴィなロックと90年代のハードでヘヴィなロック、どっちも分け隔てなく楽しめばいいだけですよね。それの何がダメなんですかね。

デスのエフェクターケース

スラッシュメタル四天王の柔軟性

デス:で、カート・コバーンが評価していたからなのか、メタリカだけはディスらない連中がいるって話をこの前したけど、まさにそういう連中が"グランジ・オルタナ革命論"をありがたがって、同時にメタリカだけは例外、って「メタリカ別格論」を展開してたりする。

オジサン:メタリカの『LOAD(ロード)』『RELOAD(リロード)』は、ボク個人の感想としては微妙ですけど…。
 でも、メタリカ別格論によると、メタリカ以外は、メタリカやオルタナ勢の劣化コピーをしただけで、ちゃんとした新しい音楽的な進歩なんかできてないんだ、みたいな評価をされているって話が出ましたよね。

デス:そうそう。さっきも言ったように、メタリカ以前に、まずアリチェンがメタリカのブラックアルバム的なことを先にやってたわけなんだけど、どちらかと言うとスピードの方に傾いていたメタルを、もうちょっとミドルテンポやスローテンポにして、重さとかダークさとか、あとはリズムとかグルーブとかの方に要点を置くっていうアプローチは、メタリカ以前にもやってるバンドが他にもいる。有名なメタルバンドで言えば、Slayer(スレイヤー)が4枚目のアルバムからメタリカよりも先にそういうアプローチをしてるわけよね。

オジサン:あのスピード狂のイメージのあるスレイヤーが、ですか?スレイヤーって、なんかひたすら速く弾いてるってイメージが強いんですけど。

デス:うん。スレイヤーは、それこそスピードを極めたバンドと言われているし、実際、3rdアルバムぐらいでスピーディーなスラッシュメタルを極めてるんだけど、そこから今度はスピードに頼らない曲作りしてみようみたいな方向にいってる。他にも、例えばスイス出身のCeltic Frost(セルティック・フロスト)っていう独創的で素晴らしいバンドがいて…

オジサン:全然知りません…。

デス:ウチでもたまにかけてるよ(笑)。このバンドはVenom(ヴェノム)やスレイヤーと並んで、ブラックメタルとかデスメタルとかドゥームメタルとかゴシックメタルとか、90年代になって本格的に花開くエクストリームでダークなメタルの元祖といわれるバンドなんだけど、むしろスレイヤーより先にスピードに頼らないメタル路線を成功させてるんだよ。ちなみに例のデイヴ・グロールのProbotにもセルティック・フロストのボーカルの人が参加してて、かつカート・コバーンもセルティック・フロストはお気に入りだったんだよね。

オジサン:へー、そうなんですね。っていうか、カート・コバーン、メタラーじゃないですか!

デス:あと、86年にRUN-D.M.C.とコラボしたAerosmith(エアロスミス)みたいに、Anthrax(アンスラックス)も87年という割と早い段階でHR/HMとヒップホップとの融合というのを試みてて、ラップをバリバリやってるのね。他にもアンスラックスは、後にPublic Enemy(パブリック・エネミー)とコラボして…、というか、正確には、パブリック・エネミーの代表曲のBring The Noise(ブリング・ザ・ノイズ)をパブリック・エネミーと一緒に再録音しているんだけど、これもラップとヘヴィーメタルの融合の先駆けと言われてる。特にRage Against The Machine(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)以降に流行るラップ・メタルの原点だよね。

オジサン:その先駆けになったのが、スラッシュメタル四天王の一角を占めるアンスラックスなわけですか!スラッシュ四天王、すごいじゃないですか。

デス:そう!そもそもスラッシュメタルっていうのが、Iron Maiden(アイアン・メイデン)とかJudas Priest(ジューダス・プリースト)的な正統派のヘヴィーメタルと、Discharge(ディスチャージ)とかBad Braines(バッド・ブレインズ)みたいなハードコア・パンク的なものの融合と言われたわけだよ。

オジサン:具体名を挙げても、ボク含めて「聴いたことないです」みたいなバンドも出てきてる気がしますけど、まぁ、いいです。はい、どうぞ続けてください。

デス:要するに、スラッシュメタルは、それまで相容れないとされていたメタルとパンクを融合させたという点で、後のオルタナ的なアプローチを先取りしているし、だから元々柔軟性に富んだバンドが多いジャンルなんだよ。で、スラッシュメタル勢の代表格たちは、みんな80年代前半にデビューしてる。メタリカにしてもアンスラックスにしてもスレイヤーにしても。Megadeth(メガデス)だけはちょっとデビューが遅かったけど、ご存知の通り、メガデスのデイヴ・ムステインは、もともとはメタリカのオリジナルメンバーだから、他と同じくらいキャリアは長い。

オジサン:じゃあ、80年代を通してみんな色々と試みてたってことですね。

デス:そう。パンクサイドからはBlack Flag(ブラック・フラッグ)がパンクとHRの融合を試みて、バッド・ブレインズやディスチャージもパンクとメタルの融合を試みた。Suicidal Tendencies(スイサイダル・テンデンシーズ)やニューヨーク・ハードコア勢なんかもその流れにいるかな。で、乱暴に言ってしまうと、そういったパンク・ミーツ・メタル路線で数百万枚とか売れるレベルに最初に到達したのが、多分ガンズ、みたいな感じ。ガンズがブレイクした時点では、スラッシュメタル勢とかハードコア・パンク勢とは比べ物にならないくらい、ガンズが抜きんでて売れてたから。

オジサン:そうですよね。あの頃も今もさすがにガンズ知らないひとはあんまりいないと思いますし…。まあ正確にはガンズはメタルよりHRって感じなんでしょうけど、いずれにせよパンクとHR/HMの融合が当時は斬新だったわけですよね。

デス:そう考えると、そもそもNIRVANAって言うほど新しかったのか?
 いや、確かに新しいには新しいんだけれどもね、100%すべてが新しくて、前人未到のことやってたかというと、意外とそうでもない。実はそれ以前に、NIRVANAがブレイクするお膳立てを色んなバンドがしてたとも言えるわけだよね。

オジサン:なんかちょっとあれですね。あの、全然違う話なんですけど、映画『ジョーカー』の対談を思い出しちゃいました。色んなお膳立てが整ったところに出てきて、「すごいものを作りましたよ」みたいな顔しやがって…みたいな話をしましたよね。

デス:ただ、『ジョーカー』との違いはNIRVANAは別に自分たちがすべて始めたとは言ってないんだよ。特にそう思ってもないはずだし、謙虚なところが結構ある。

オジサン:確かに。『ジョーカー』を狂喜して持ち上げてるオッサンたちも、謙虚というか冷静になってほしいですね。

デス:実際、NIRVANAのメンバーも、自分たちはサウンドガーデンの影響を受けたとかメルヴィンズの影響を受けたとか、自分たちが影響を受けたアーティストたちの名前を積極的に挙げてリスペクトを示してんだよね。だから、どちらかというと、勝手にNIRVANAを救世主・革命児呼ばわりする、変なロキノン勢とかが勝手にNIRVANAを突然変異の革命児バンドってことにしてるっていうか。

オジサン:ロキノン親父、困った人たちですね、ほんと。

片側からだけのクロスオーバーはない

デス:で、さらに、さっきも話した通り、ヒップホップサイドからもHR/HMと融合しようという試みが80年代にすでにあったし、90年代に入ると、N.W.Aなどと並ぶ西海岸のギャングスタ・ラップの代表格のIce-Tが、Body Count (ボディー・カウント)というメタルバンドを結成するしね。
 あとパブリック・エネミーとアンスラックスだけど、この両者は、一緒にツアーもやってるんだよ。どっちもニューヨーク出身だし、人種や音楽ジャンルが違っても仲間意識があったんだと思う。アンスラックスはポリティカルなことも歌うバンドで、人種差別とかも批判してたから。で、パブリック・エネミーの人が当時「アンスラックスとのツアーなんて成功するわけないとみんな言ってたけど、こうやって俺たちは成功させたぜ」みたいなこと言ってるんだけど、これはジャンルが違う者同士の共演に対し、先入観や偏見から文句を言う頑迷な連中が多かったことの証拠だよね。あと、ラップに対する蔑視やアフリカ系に対する差別意識から「成功するわけない(というか成功してほしくない)」とか必死でケチつけてた連中もいただろし。ちなみにパブリック・エネミーはアンスラックス以外にも、スレイヤーの曲をサンプリングしたりしてる。これは88年だったと思うけど。

オジサン:やはり80年代後半っていうのは、グランジ・オルタナ前夜として重要な時代なわけですね。

デス:ちなみに、当時のスレイヤーとパブリック・エネミーは、デフ・ジャムっていう同じレーベルからアルバムを出してるんだけど、他にも同じニューヨーク出身でレーベルメイトだったのが、Beastie Boys(ビースティ・ボーイズ)。ビースティ・ボーイズは、もともとパンクバンドだったけど、デビューする時にはヒップホップユニットになってたみたいなグループ。そのビースティ・ボーイズのファーストアルバムに入ってる、有名なNo Sleep Till Brooklyn(ノー・スリープ・ティル・ブルックリン)という曲だけど、多分オジサンもPVとか知ってるよね。

オジサン:はい、知ってます。映画の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でも使われてましたよね、その曲。

(編集註:同じマーベルコミック原作映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』でも重要な場面で使われている。)

デス:あの曲でギター弾いているのは誰かっていうと、スレイヤーのギターの人ですよ。

オジサン:また出た、スレイヤー!

デス:スレイヤーのケリー・キングですよ。そもそもデフ・ジャムってレーベルは、ヒップホップ系のレーベルなのよね。なのに、スレイヤーはなぜかそこのレーベルからCD出してんだよね。ヒップホップじゃないのに、デフ・ジャムの人に気に入られて(笑)。

オジサン:(笑)。でも、それもジャンルを超えた絆があって良いですよね。

デス:で、ビースティ・ボーイズも、ある種のクロスオーバーなんだよね。そもそも白人がラップするのは、当時は新しかったし。

オジサン:今の感覚だと別に珍しくない気がしちゃいますけどね。

デス:うん。パンクバンド上がりの白人の悪ガキ3人組、ビースティ・ボーイズが、ヒップホップをやる、ラップをやる、しかも、メタルの人を呼んできてギター弾かせる、サンプリングネタにもHR/HMを思いっきり使うということで、彼らも新しい時代のクロスオーバーの先駆けだったっていうのは結構よく言われる。ちなみにパブリック・エネミーもクロスオーバーの先駆けと言われるんだよね。でも、ロキノン親父たちはビースティ・ボーイズやパブリック・エネミーは評価しても、その両者と一緒にやったスレイヤーとかアンスラックスの事はあんまり評価しようとしない。

オジサン:なんか、そこは「なかったことにしよう」みたいな?あとは単に知らないのかもしれないですよね。あの人たち、事情通を気取って他人のことをニワカ呼ばわりしたがる割に、案外知らないことあったりするじゃないですか。

デス:ほんとそれ。スレイヤーやアンスラックスがいたからこそ、ビースティ・ボーイズやパブリック・エネミーのそういうクロスオーバーな楽曲ってのは成立したとも言えるのに。そこ大事なんだからネグっちゃダメでしょ?って話なんだけど。

オジサン:ビートルズやレッド・ツェッペリンやSex Pistols(セックス・ピストルズ)やNIRVANAの功績は過剰なまでに語っても、80年代のHR/HM系の功労者の存在は視界にも入ってない、みたいな。

デス:うん。なんか、ヒップホップというジャンルは、やっぱり評価したいんだよね、あいつら。実際にはそんなに聴いてなかったとしても、ヒップホップってなんか新しくてすごかったみたいなね。あと、ヒップホップって黒人の音楽であり、プロテストの要素もすごく強い音楽だから…。

オジサン:あぁ。ロキノン系親父って、強面のプロテスト・ソングやレベル・ミュージック好きですよね。パンクが好きなのもそういうのがあるでしょう?

デス:そう。しかも、ヒップホップの場合、人種的マイノリティによるレベル・ミュージックだから、そういうものを理解できないっていうのは、なんかロックファン的にダサいって意識がある。つーか、アンスラックスだってレベル・ミュージックやってるし、ボーカルの人はネイティブ・アメリカン系の人種的マイノリティなんだが…。

褒め言葉のつもりの「ロックだよね」のマヌケさ

デス:あ、でさ、ちょっと話ずれるけど、あいつら、ロキノン系親父の常套句の「〇〇はもはや"ロック"だよね」っていう語り方があるじゃん?なんか「ロックだよね」って形容すれば褒めてるみたいな。で、「パブリック・エネミーはロックだよね、パンクだよね」とか言っちゃうわけだよ。ロックでもパンクでもなくヒップホップだよ!なんだけど。いや、確かにある程度ロックの要素を取り入れてはいるけど、でも、まあ根本的にはヒップホップなわけだよ、どう聴いたってね。
 「パブリック・エネミーはロックだよね」とかね、「Miles Davis(マイルス・デイヴィス)はロックだよね」とかね。ロックを中心に据えた自分たちの価値判断基準を絶対視し、対象を無理やり自分たちの価値観に寄せることで、なんでもかんでも"ロック"ってことにしようとするじゃん? なんかロックが至上の音楽であるから、ロック認定は光栄に思うべきであるみたいなね。あと、「姿勢がロックだ」みたいなさ。姿勢がロックって…

オジサン:「アティチュードがロック」ってやつですね。

デス:そう、アティチュード!あのね、音楽にはそれぞれ違いがあって、それぞれ良さがあるわけですよ。ヒップホップにはヒップホップの良さがあるし、ロックにはロックの良さがあるし、ジャズにはジャズの良さがあるわけ。なのに、全部ロックだって言うのはさ、例えば食事で言うと、カレーとラーメンとハンバーグにはそれぞれ良さがあるのに、「このハンバーグはもはやカレーだよね」とか言わないわけだよね。「このラーメンはアティチュードがハンバーグだよね」って言わないじゃん?

オジサン:まぁ、そんなこと言ったら変なひとですね。

デス:馬鹿じゃんね。褒め言葉になってない。自分がラーメン屋だったら怒るかもしれないよね?

オジサン:まぁそうですね。

デス:範囲を限定して、あるジャズやヒップホップを「これはある意味ロックを聴くようなテンションでも楽しめるよね。ノイジーなギターが活躍してるし」とか、具体的に言うならいいんだけど、雑語りで「音楽性とは無関係に、もはやここまでくると精神性がロックである」「なにせ、そこらの有象無象のロックバンド以上にロックなのである」「アティチュードがロック以外の何物でもないのだ」みたいなことを言うわけ。じゃあ、その精神性やアティチュードって何ですかって訊いても多分説明できない。苦し紛れに「いやほら、尖っててロッキンだから」とかほざくんだろうけれども。

オジサン:(笑)。「尖ってる」って、別にロックの人たちの専売特許じゃないですし。
 要は、着眼点もボキャブラリーも貧困でうまく説明できないけど、なんか"それらしい"こと言ってる気になりたいから言ってるだけでしょ?みたいなのが結構多いんですよね、ロック親父の使う言葉って。

デス:そうそう。

オジサン:その「アティチュードがロック」だとか、「これを聴いてない人は人生の半分損してる」とか。だって音楽なんて好みなんだから、別に聴こうが聴くまいが勝手にさせろよっていう話で。

デス:音楽好きじゃない人からすると、「音楽なんか聴くことにあんなに金と労力使って、おまえら音楽好きは人生損してる」ってことになるじゃん。

オジサン:そのお金があったら美味しいもの食べるわ、とかそういう人もいるわけですよ。

デス:しかも「半分損してる」って言いながらね、そういうヤツらって、逆にオレらがね「Bon Joviを聴いてないあなたは人生の半分損してるよ」って言ってもね、絶対に聴かないんだよ、意地でも。自分は聴かないくせに、他人には聴けって言ってるわけだよ。傲慢そのもの。
 おそらくBon Joviとか、あとB’zのこととかかも、適当にディスってる奴らはせいぜい売れてる曲くらいしか聴いたことなかったりとか、なんなら売れてる曲すらほとんどろくに聴いてないとかだよ。

オジサン:CMでかかってる部分を聴いたことある、くらいじゃないですかね?

デス:しかもまぁ、なんとなく聴き流してるくらいで、まともに聴いたこともないくせに、適当なことを言ってるわけだよ。自分たちの聴いてる音楽については、「これをまともに聴きもせずにスルーしてなんたらかんたら〜、これだからミーハーは」「これがまともに評価されない世の中は嘆かわしい」とかゴタゴタ言うくせにね。自分たちがディスってる音楽に関しては、ろくに聴かずして聴く価値がないって、鈍い勘で適当に言ってる。聴く価値がないって、聴いてないのになんでわかるのか?って話だよ。

オジサン:で、なんかそうやってね。Bon Joviとかを馬鹿にしてるような人とかも、じゃあ、あなたが一番最初に買ったCDは何ですか?ってなると、実はB’zだったりとか、Bon Joviだったりとか。デスのひとたちの世代だと、ミスチルとか…。

デス:チャゲアスとか、ZARDとか、X JAPANとか…。もっと上の世代だったらサザンとか佐野元春とか、ハウンドドッグだったり、TUBEだったりするわけですよ。

オジサン:TUBEって夏になると出てくるひとたちですね。

デス:あと、米米クラブとか。

オジサン:あー、米米クラブはありそうですね。「君がいるだけで」が最初に買ったシングルだろ?みたいな。

デス:光GENJIかもしれないよ。

オジサン:最初に何を買おうが良い想い出にすれば良いと思うんですけど、かつての自分のことを差し置いて、「ヘビメタとか聴いてんの?w」「Bon Joviとか聴いてんの?w」みたいなことを言うわけでしょう、そういう奴ら。
 れっどさんなんて人生で最初に自分で買ったCDがTom Petty(トム・ペティ)ですよ。

デス:珍しいよね(笑)。そもそもトム・ペティってアメリカではすごい売れてるひとだけど…

オジサン:アメリカでは、スタジアム級のライブしかやってなかったですけど、日本には来てもいなかったですからね。

デス:うん。トム・ペティって、一枚のアルバムで1000万枚とかね、アメリカ国内だけでそれぐらい売ってるような人で、要するにあいつらの好きなNIRVANAと売り上げでは変わらない。Bon Jovi、ガンズなんかとも。もちろん、トム・ペティはキャリアが長いから、総売上で言うとさらに上かもね。ただ、同じようなシンガーソングライター系で言えば、ボブ・ディランなんかと比べると日本では知名度が低い。Lou Reed(ルー・リード)やニール・ヤングやブルース・スプリングスティーンなんかもそんなに日本で人気あるイメージないけど、それと比べてもトム・ペティはさらに一段階下のスモール・イン・ジャパンって感じするよね。

オジサン:シンガーソングライター系がアメリカ本国と比べて日本ではイマイチ売れてないのはやっぱり「歌詞が分かんないから」みたいなのが結構あるんじゃないですかね。「歌詞が分かんないから、なんかちょっと乗れないな」みたいな。あとは、割とトーキングスタイルのヴォーカルが多かったり、歌メロがわかりやすくなかったりしてシンガロングしにくいってのもあるかもしれませんね。

デス:そうそう。

オジサン:日本人、シンガロング好きですからね。カラオケが日本で生まれてこれだけ流行って定着したのは、メロディを一緒に歌うのが好き、っていうのがあると思います。

デス:そうだね。だから、どの世代でも、多分、トム・ペティが最初に買ったCDやレコードだという人は日本ではあんまりいないと思う(笑)。まして、うちらの世代ではね。

オジサン:まあ、ちょっと変ですよね(笑)

当時、高校生だった珈音が、Music Lifeのカメラマン長谷部宏さんの写真集に載っていたTom Pettyの写真の構図をお借りして、人物をJon Bon Joviに置きかえて作った年賀状

編集コメント:Bon Joviが、アメリカでのライブでは、トム・ペティの曲も演奏していることを最近知ったところで、大変羨ましい。日本公演では、日本でも知名度の高いアーティストを選んでいるのは、Bon Joviが「ファンにライブを最大限楽しんでもらいたい」と思ってのことなので、当然のことではある。1996年にRoyal Hunt(ロイヤル・ハント、デンマークのメタルバンド)が東京公演初日にABBAの「S.O.S.」を演って、観客の大半がポカーンとなった事例を現場で体験した者としても、Bon Joviの判断は支持できるのだが、アメリカの観客が羨ましい…。

=Vol.6に続く=


ぬいぐるみと人間の対談だのミサンドリーラジオだの、妙なものをupしておりますが、よろしければサポートをお願いします。飛び跳ねて喜びます。