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1日の中で出会う「無礼な行動」と「どっちでもない行動」と「礼節のある行動」をカウントしてみたら、人生でとても大切なことが分かる。

しゅんしゅしゅんです。

5年前に転職した同期がいる。

思いやりと優しさにあふれるナイスガイだ。そんな彼が転職したのは外資系生命保険会社。いわゆるライフコンサルタント。

ハングリー精神が強いわけでもなかったが、彼は完全歩合の世界の中で結果を残している。上位数%の成績優秀者は家族で海外旅行に招待されるらしいが、今のところは毎年海外に行っている。

生命保険営業といえば古くはGNP商法なんて言われたりする。義理(G)人情(N)プレゼント(P)だ。通い詰めてお菓子などのプレゼントを渡して仲良くなって保険を契約してもらう手法。

保険業界のトップセールスの方が書いた本はたくさんある。例えば「かばんはハンカチの上に置きなさい」といったタイトルの本。外回りで汚れている(かもしれないと思われる)カバンを顧客宅に置く時は自分のハンカチを床の上に敷いて、その上にカバンを置きなさいといったことだ。

「そこまでやるもんかいなあ」と瞬間的に思ったりするが、転職した同期の彼も実際やるらしい。

でもそれもバカにできない。

生命保険は商品自体に大きな差別化がないからこそ営業力がモノを言う世界だ。彼がいうには、保険営業はいかに減点を避けるかの世界なのだと。人を不快にするかもしれないことは全て排除するのだと。


そんな彼が、僕からすると驚くべき行動をとった。


彼のお客さんの中にパーソナルフィッターという肩書で個人でオーダーメイドスーツを作られている方がいたので、紹介してもらいスーツを作りにいったのだ。紹介した手前もあるのだろうが、休日にも関わらず彼はわざわざついてきてくれた。

その帰り道。僕の家の最寄り駅まで彼の車で送ってくれることになった。そして二人で車に向かっている時に、なんと彼は車の助手席の席を空けてくれたのだ。僕のために。とてもスマートに。とてつもなくさりげなく。空けた後に、駐車場の料金を払いに自動精算機の方に歩いていった。

僕は彼と仲がいい。転職する前はルームシェアをしていたくらい気心しれた仲だ。なのにそんな僕に対しても彼はドアをあけたのだ。お客さんが相手ならわかる(それでもすごいのだけど)。普段お客さん相手の気遣いで疲れているであろうからこそ、気心しれた僕相手にそんなことする必要なんてないのに。

こういった行動のひとつひとつがもう体に染みついているのだろう。

「生命保険業界で営業していて学べることってなんなの?」と聞いてみた。

すると彼は「想像力かなあ」と答えた。

例えばを聞くと、あるお客さんが商談の中で「ハワイが好きで毎年ハワイに行くのだ。リタイアした後はハワイで住めたら最高だなあ」と言ったとする。すると訪問後にお礼の手紙を出す際には、ハワイの風景が描かれたポストカードを選んで送る。そんな細やかな話がごまんと出てくる。

お客さんの「快」「不快」を把握して、何をすれば「不快」を発生させずに、何をしたら「快」を生み出すことができるのか、徹底して想像して実行している。

僕は仕事で企画職をやっている。サービスを考える時に、何がお客さんのニーズかを中心に据えて企画する。もちろんだ。でも彼の想像は本当に1個人1個人の快・不快を深く深く想像している。ある程度マスの顧客群を想像する僕とは狭さと深さのレベルが違う。

想像力はビジネススキルのベースだと思うが、営業力の最高峰と言われる保険の営業でみにつくスキルやスタンスはまた別格だなと感じた次第である。

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「礼儀正しさこそ最強の生存戦略である」という本を読んだ。

本書の内容はこうだ

礼節とは、他人を尊重し、また品位を感じさせる丁寧で親切な態度。礼節ある言動とは、つまり相手を丁重に扱う言動ということ。礼節がもたらすメリットは、仕事が得やすい、幅広い人脈が気付ける、出世できる。逆に無礼はさまざまな不都合を招く。礼節の3大原則は、笑顔を絶やさない、相手を尊重する、人の話に耳を傾ける。さらに5つの心得は①与える人になる②成果を共有する③褒め上手な人になる④フィードバック上手になる⑤意義を共有する 

礼節が招くメリットと無礼が招くデメリットを科学的に説明し、礼節ある言動のtipsを紹介してくれる本書。礼節という新しい言葉を使っているが、真新しいことは言っていない。最近のトレンドである「ギブ&ギブ」や「心理的安全性」とベクトルは同じ話だ。


でも改めて、礼節の威力は半端ないと思う。


冒頭の彼が「保険の営業はいかに減点を発生させないか」と言ったことと同じだ。礼節の反対は無礼。1日生きてカウントすれば、自分が受けたり見かけたりする無礼は1日に数十個あれど、礼節は1日2.3個といったところではないだろうか。

無礼でないということは礼節であるということではない。相手がどう思うかわからないからコミュニケーションをとらずに控え目にしておくというのは無礼ではないが礼節でもない。中立は1日に数百個あるだろう。

だからこそ、礼節は目立つ。飛び抜けて記憶に残る。ハロー効果が働くとすると、たった一つの礼節はその人が全体的に優れた人物であることを印象づけるに十分な効果がある。

SNS上でのコミュニケーションに疲れ、信頼社会が望まれ、コミュニティが流行る今、信頼関係や心理的安全性が叫ばれる今だからこそ、礼節はさらに大切になってくるのだろう。

昔から人に好かれるための本はたくさんあるが、今だからこそ再評価されるのではないだろうか。対面コミュニケーションでの礼節が、大きな差別化を生むこの時代だからこそ、学ぶべきは、気をつけるべきは礼節かもしれない。

過去のベストセラー。

今だからこそ、もう一回読んでみようかしら。

では。

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