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私は傘村トータさんの歌詞が苦手だ

(画像は今のツイッターアイコンです。いつものように版権キャラではこのnoteを載せられないと思ったため画像を添付しました)


私が最も好きな曲調の一つがバラード。ピアノの音が入っている曲も大好きだからピアノバラードも大好き。
そして数少ない私が苦手だと自覚している歌詞、それは心情表現を一から十まで全て説明する歌詞。

そして私的にその二つが合わさった曲を作る方が居た。私のTLでとても人気もあり、なおかつ実力もある、惚れ惚れするほど綺麗なピアノバラードを得意とするボカロPさん、傘村トータさん。あなたの曲は本当に好み、だから曲を聴く時は歌詞に極力注目しない様に努めた。

今までたまに「曲とかは好きなのにどうしても歌詞が苦手な方が居る」という事だけはツイートしていた。絶対に名前は出せなかった。だってその人はTLで人気、特に近年ではTLに限らず評価もされていて、その人の曲によって救われた人も居るのを知っている。その人をフォローしている人が何人も何人も居たので言えなかった。あなたの相互フォロワーも何人もいるのも知っている。だからタグで私が「こういう曲が好きなんですよね~」って言ったときにあなたの曲を薦めた方がいた。上のような「こういう歌詞が苦手なんですよね…」と呟いたときに真っ先にあなたの曲の話をした方がいた。だから絶対に名前を出さないつもりだった。出せなかった。

この文章を世に出すということは、あなたに見られることを想定し、そしてあなたを慕っているFF内外の人に見られることを想定している。そんな周りの状況でこんな文章を世に出すなんて何を考えて居るんだ、好きな人が見たらどう思うのだ。そう思うかもしれない。私もそう思う。このnoteを機にあなたやFF内外の人にブロックされても仕方がないと思うしそれくらいの覚悟がある。なのになぜこの文書を書いたのか、それは自分に失望したから。懺悔したかったから。そして、その失望や懺悔を偽って隠したくなかったから。要するに自分の欲を満たすだけの身勝手な理由、それだけである。


あなたを知ったのはいつからか覚えていない。おそらくTLで名前が挙がっていたからか、ニコボで適当にランキング再生をしていた時にバラード調の楽曲に惹かれたか、どちらかだと思う。私はピアノバラード含むバラード調の曲が大好きだったためあなたの音に惹かれた。数曲聴いてみたがどれも素敵だと思った。しかし、曲を聴いている時に引っかかるものがあった。おそらく歌詞の言いまわしとかだろう。だから歌詞を調べてみた。まともに歌詞を受け止められなかった。珍しく歌詞を苦手だと思った。私は歌を聴くなら歌詞は逐一心情を説明しなくても良い、いや、説明しないほうが好ましいと思っている。少しくらい婉曲的な表現が使われている方が好みなのだ。再生回数の多い曲の歌詞をいくつか読んだところ、あなたの歌詞は心情表現を赤裸々に、明け透けに、思うことの全てを歌詞で表しているように見えた。でもTLであなたの曲が好きな人はあなたのその歌詞に惹かれていた。


マジカルミライ2019のアルバムで曲目が一部公開された時、正直な話驚いた。あなたが「LIFE」を一般公募として曲を投稿していたことを知っていたから。当時の私はその曲を聴いていない。当時は入賞した人以外公募曲を聴いていないのでこれは投稿者云々の問題ではないのでそこだけは言っておきたい。その入賞結果が発表されてTLではこんなツイートを複数見かけた。「傘村さんいないのか……」「マジミラの公演で傘村さんの曲を見たかった」等々。入賞された方々へのリスペクト皆無な発言はどうかと思ったが、それは置いといて、まあ感想は人それぞれである。自分が応援している人が選ばれなかったのは普通に考えても悲しい。その時点では特に私は思うことはなかった。あなたのことを今まで通り一人のボカロPとして認識する感覚しか持ち合わせていなかった、はずだった。

「僕が夢を捨てて大人になるまで」がマジカルミライの演目に組み込まれることを知ったTLの喜び様はお祭り騒ぎだったと思う。なのに、私はこの演目画像を見たときに「マジか」と呟いてしまった。該当曲は元々聴いたことがあった。しかし、以前聴いた時に歌詞を苦手だと思って受け入れることが出来なかった曲の一つだった。TLの皆の様に素直に喜べなかった自分に愕然とした。申し訳無かった。TLのみんながあなたの曲が演奏されることに盛り上がっていたところに、私は一人ポツンと取り残された様な気持ちになった。素直に「おめでとうございます」が言えなかった。私は「おめでとうございます」という紋切り型のメッセージさえ言えなかった自分に失望した。


今年はこの気持ちの断絶を隠してマジカルミライに行ってはいけないと思った。だってこの思いを隠したらマジカルミライ会場で「傘村さんの曲良かったね、そう思うでしょ?」って話を振られるかもしれない。実はあの人の歌詞が苦手で…あの人の曲目が出た時に皆と同じように喜びを分かち合えなくて…ってその場で言うの?それともまた私は皆をごまかし続けて愛想笑いを浮かべて会話を打ち切るんだ?二年前、砂の惑星を恨んでいた私を、砂の惑星に関して恨みを募らせたままただ黙っているだけだった自分をもう一度経験するんだ?一年前、もやもやした気持ちを隠すのが嫌で仕方なかった私が?(宣伝に思われると嫌なのでurl載せませんでしたがこれに関して詳しくは昨年8月9月のnoteに書きました。一言で表すと砂の惑星が好きなのに周りの反応によって素直に聴くことが出来なくなった話です)

あなたの曲の何が人を魅了するかと思うと、綺麗なメロディーもあると思うけれども、一番は歌詞ではないのか。あなたの全力を込めて全てを曝け出した様な歌詞が視聴者を魅了するのではないか。あなたの作り出すメロディーは歌詞を伝える手段の一つじゃないのか。だったら演目の感想で「あ~!あの方の曲は本当にメロディー素敵だよね~!」とか言ってごまかすのはなんて失礼だと。再三再四言うがあなたの曲の音やボカロの声は大好きなのでこの言葉に嘘偽りはない。ないけど失礼だと思った。


私はこのnoteを書くためにあなたの曲をニコニコ動画にあるものは全部聴いた。現存している動画なら把握出来るだけのコラボ曲もメドレーも全部聴いた。可能な限り歌詞も目を通して読んだ。「そこら辺の凡庸な視聴者が難癖つけている」状態には絶対になりたくなかった。そこら辺のアンチが喚いているとも思われたく無かった。あなたの音楽は真摯だ。このnoteはポジティブを前面に出した文章ではないから、だからこそ、無責任なことを言いたくない。私も絶対に真摯に向き合わなければいけなかった。その結果noteを完成させるのが遅くなってしまった。

今まで歌詞をスルーしてなんとなくあなたの曲を聴いていたから、聞き直して気づいたこともあった。やはりメロディーが綺麗である。色々なボカロの子を使ってくれるし、全員がしっかりあなたが歌詞に乗せた気持ちを伝えられる声で歌っている。歌詞も素直に受け入れられてすとんと入ってくるものも多くあった。
あなたの曲はしっとりピアノバラードだけかと思ったら「力なきもの」みたいな跳ねるピアノの楽しそうな曲もあった。「あの日のオリオンブルー」は初聴きであったがこれもポップかつ元気になる曲で素敵だ。「ガラスの糸」はオシャレで「Ken名曲リンク」に選ばれるべき曲であると思う。民族調の曲も作っていたのかと「それは飛べない魔女の歌」を聴いて驚いた。「バイバイLiar」の恋愛曲もとにかくIAちゃんの可愛いさが全面に出ていて好きだった。お気に入りプレイリストに即ぶっ込んだ。和風曲の「片陰りに咲く其の花は」も好きだった。
投稿当初からあ子さんとのコラボ曲「愛と呼んでもいいでしょう」はポップで初音ミクのかわいさが全面に出ていて好き。同じ様な曲ばかりなのではと食わず嫌いして避けていた2018年頃の白地タイトルサムネの曲達も聴いた。「カーネーション」は歌詞に惹かれたし、「痛み止め」もバラード調で好きだった。「Winner」も明るくて良かった。
あなたがカバー動画も投稿しているなんて知らなかった。あなたのボカロの子の声だと思った。個人的には「命に嫌われている」のカバーが好きだ。最近投稿されたホシミヤさんと水科みりさんとの合作「メルクリウス」でもあなたが関わっている曲だとすぐに声だけでわかった。声で作者が分かるという事はボカロPとして一つの大事な強みになると思う。
そしてやっぱり、あなたの奏でたピアノバラードは素敵だと思った。ゆかりさんの曲では「You All with her Voice」が素敵だった。中でも特に「斑」「君の涙と罰の味」辺りが好きなもので、私がIAちゃんの伸びやかなバラードが好きなのだと再認識させられる。


このnoteを書いている途中で「LIFE」が投稿された。勿論この曲も聴いた。あなたの初音ミクがピアノボカロバラード以外でもこんな曲で勝負出来るし魅力を引き出せる、そんな事を感じさせるバンドサウンドだった。正直な話をするとサビの歌詞が好きだ。もしこの曲がマジカルミライで流れることになっていたなら、こんなnoteを書き上げてしまった私でも歌詞を噛み締めることが出来たのではないかと思ってしまった。だからこの曲が選ばれなかったことを少し残念に思ってしまった。私は音楽について無知であるが最後のサビで高くなって盛り上がる点も好きなところである。


あなたの曲をほぼ全部聴いて思った。あなたの歌詞の中で私が受け入れられないのは一部であった。これは私が現在21歳だからではない。かつての15歳の時や18歳の頃にあなたの歌詞を聴いても、今が15歳や18歳であなたの歌詞を聴いても同じことを思ったであろう。

だって私に夢なんてなかった。夢なんてなかったから夢を捨てたことなんてない。全てにおいて割と恵まれた環境にいたから何かを変えたくてもがいたことも闘ったこともない。大人や社会に反発も反抗心も持たない真面目で従順な「いい子」。ただの都合のいい子。なあなあに、特に我武者羅に頑張らずに自分に合ったレベルの人生でほんのり幸せになれれば充分だしそれでいい子。何も考えずに社会の歯車になりたい様な子が私だ。

あなたの歌に出てきた主人公は、そうじゃない。人生でもがいたり闘おうとしながら自分の人生を自分で納得して自分で歩いて生きていこうとしている。悩んで辛くて苦しくて、それでも頑張って前を向いて生きていこうとしている。私の生き方とは違った。

あなたの人生の歌詞が支持される姿を見る度に私の生き方が否定されている気になる。あなたと私の人生は違う。考え方が違うのも分かる。歌詞の人生があなたの人生の全てではないことも分かる。私は元々歌詞に共感を求めてないはずなのに。あなたの考えや生き方こそが正しくて私の生き方は駄目なのだと言われている気になる。そんなことあなたは言っていない。わかっている。「青空トレイン」では『敷かれたレールの上を進むだけの人生 それでもいいじゃんか』と言ってくれている。「明日が来るのが怖い日は」では戦えないことに苦しまなくてもいいと言ってくれている。わかっている。でもそんな気持ちになる。

あなたの歌詞が賛同されて評価されて救われたという人を見る度に、戦って己の道を模索し切り開いていく生き方こそが正しく、長い物には巻かれろ精神で不平不満を抱かず事なかれ主義でなあなあに平凡でそこそこな日常を求めたい私の生き方が否定されている気持ちになる。全てをいちいち説明する如く言い回しが引っかかる歌詞こそがあなたの歌詞を苦手である原因だと思っていた。違った。私の人生が責められているようで苦手だっただけだった。だって言い回しが苦手なだけだったら今までの様にスルーして行けばよかったから。こんなnote書かなくてよかったから。
なんであなたの曲「だけ」がこんなに責められた想いになったかがわからない。わからないけどあなたの歌詞が好きな人の様に、私もあなたの歌詞を一瞬でも受け取ったからかもしれない。私には受け止めきれなかっただけで。


このnoteはただの雑音(ノイズ)である。でもそのノイズが何よりも作者を傷付けるものだということは知っている。1000人中応援してくれる人が999人居たとしても1人のノイズに心を傷付けられる。それは以前目にした三人のボカロPさんのインタビュー記事で述べられていた。(https://natalie.mu/music/pp/vocalonovel/page/4)

こんな文章を書いておいて本当に身勝手なのであるが私のノイズなんて気にしないで欲しい。だってあなたの曲を聴いて聞き惚れて救われた人が、そこまで行かなくてもあなたの曲を大好きな人が沢山居る。殿堂入りの曲をもう複数持つ、陳腐な言い方をすれば「人気P」になったあなたにはこんな文章を書く私なんかより大切にするべきものがある。おそらくマジミラ2019のCDを聴いて歌詞を読んであなたのファンになる人が多数現れる。あなたの歌詞に涙する人が大勢いる。あなたの曲をコンサート会場で聴いてあなたの曲やあなたの曲を歌う初音ミクに惚れる人が必ずいる。あなたにとっても、既存のファンにとっても、これからファンになる人達にとっても、私のこのnoteは邪魔なノイズである。

おそらく、私はこれからもあなたの曲をツイートせずにひっそりと独りで聴いていくと思う。ただ単に再生数を数個増やすだけのどこにでも居る様な、いや、むしろ邪魔な部類に入る視聴者である。最後に、これだけは言わせてください。マジカルミライの曲目に選ばれた光栄なる一人になったこと、おめでとうございます。あなたの曲が奏でられるからマジカルミライに行きたい、あなたの曲を聴くためにチケットをとる、そう言った方もいらっしゃいます。そのようなファンのためにも、あなたは胸を張ってください。

そして、本当に最後に。あなたに望まれ、皆からも好ましいと思わる、望まれるようなファンになれなくてごめんなさい。

#vocanote