採用オウンドメディアを立ち上げようか迷っている方へ

こんにちは。
今日は採用オウンドメディアを立ち上げるべきかをテーマに書きます。


私は元々SEOやコンテンツマーケティングを中心としたWebマーケティングのコンサルティングをしていました。HRに異動して、マーケティングの波ってHRの領域にも数年遅れてやってくるなーというのを感じています。
最近の波のひとつは「採用オウンドメディア」。

数年前、マーケティング業界でもこの波がありました。
「コンテンツマーケティング」という言葉が流行り?だしたとき、北欧、暮らしの道具店さん、サイボウズ式さん、経営ハッカーさんなど、オウンドメディアを活用して成功する事例が増えていたことから「コンテンツマーケティング=オウンドメディア」と捉える人も増えていたんですよね。

ただですね…企画途中で頓挫したり、立ち上げても運用が続かなかったり、成果が出ない中メディア担当者さんがつらい思いをしながら更新をしていたり…といったケースもたくさん見てきました。オウンドメディアってすぐにリターンが期待できる施策でもないわりに運用は大変なんですよね。HRの領域でも、軽い気持ちでオウンドメディアを立ち上げてつらい思いをする方が増えないよう、オウンドメディアを立ち上げる前にぜひ知っておいていただきたいポイントをお伝えしたいと思います。

メディアの目的はなんですか

コンサル時代、「オウンドメディアを立ち上げたいんです」という相談はよく受けていました。当時コンテンツマーケティングの基礎についてセミナーもしていたのですが、その参加者のほとんどはメディアの立ち上げを検討していました。ところが目的を聞いてみると言葉につまることもしばしば。「他社がやっているから」という理由で上司に「やってみなよ」と無茶振りをされる人もいましたね…。

どのマーケティング手法にも言えることですが、全ての施策は課題や目的ありきです。課題がなければ施策を打つ必要もないですし、目的がないならやる理由がない。それなのに、流行りや競合他社に煽られてつい施策に走ってしまうことがよくあるのです。

採用オウンドメディアというとメルカリさんのメルカンを思い浮かべる方も多いと思います。メルカンを立ち上げた松尾さんはその立ち上げの経緯について、次の通り話しています。

黙っていても取材されるような会社にどんどんなりつつあったんですよね。となったら、会社の情報が1つにまとまらなくなってくる。で、候補者の方だったりいろんな方に(情報が)「出たよ」って案内してもそれは全部アンコントローラブルなものなんですよね。メディアが消したら消えるし。というところで、その情報をある意味、社内的にも持っておきたい、コントロールできるようなものを持つべきだという思想からオウンドメディアみたいなことをやろうという話になりました。

引用: メルカリはなぜ採用オウンドメディアを選んだのか? 編集長が語る「メルカン」立ち上げの経緯

ちなみに最近まで自分が運用していたナイルのかだんが立ち上がった経緯も記事があちこちバラバラにあったものを集めたいよね、というのが発端でした(「黙っていても取材されるような会社」ではなかったですが…)。

それから直近の目的は選考フローで活用できること、候補者さんの意向上げができることをメインに置いています。なので、ナイルの事業やカルチャーについて事前に知っておいてもらいたいこと、候補者の方からよくある質問、選考官としてよく出る社員のインタビューなどが中心です。応募をいただいた時点で読んでもらいたい記事のURLを送ったり、質問があったら「ここにも詳しく書いています」と送ったりできるようにしています。

ヒト・モノ・カネは揃っていますか

さて、目的があってオウンドメディアを立ち上げようとしても、大変なのはその運用です。私はメディア運用で大事なのはヒト・モノ・カネが揃っていることだと考えています。

ヒト:
運用できるヒトがいること。メディアが頓挫する多くの原因はここにあると思っています。
専任が望ましいですが、兼務でも、メディアに割くリソースが一定あることが絶対です。それから大事なのがそのヒトがメディアにかける熱い思いを持っていることと、それを周りが応援している状態。
特に、上司の方が担当者任せにして協力的でなく、担当者の方が孤独になる…ということを何度も見てきました。上司やその周りの方も含めてメディアの目的や目指したい方向性を理解し、協力することが理想です。

あとはできるだけ普段からSNSをよく使っているヒトが社内に多い方がいいですね。一般的な情報メディアでしたら長期的には検索からの流入も狙えたりしますが、採用オウンドメディアは基本的にはSNS経由の訪問が軸になるでしょう。記事を書いても流通しなければ意味がありません。担当者自身の発信力が一定あるのはもちろん、経営陣も含めて社内の人がシェアに協力してくれるかどうかも大事です。
記事は書くけど誰も拡散協力してくれない…という会社さんにもいくつか出会ったことがありますが、それじゃあ記事を書く労力がもったいないです…。

モノ:
ここで言うモノはネタですね。発信したいネタがあること、または一見何もなさそうに見えても企業の魅力を引き出しネタにできることが重要です。これは「ヒト」にも繋がるところではありますが、「うちに発信できるネタなんてないよ」って思っちゃうようだったら、続かないと思います。

カネ:
メディアは構築から運用まで継続的に費用がかかります。またメディアの認知を高めるのには時間がかかるので、短期的なリターンはほぼ考えられません。長期的に投資ができる経済状況であることが必須です。

オウンドメディアの特徴

オウンドメディアから直接の応募をいきなり増やすのははっきり言って難しいです。そもそも記事を流通させる難易度が高いんですよね。なので、人が足りなくて今すぐに採用が必要!という状態であれば求人媒体やエージェントを活用してください
逆にオウンドメディアが合うのは次のような企業だと思います。

・別のチャネルで人材獲得の経路が確立できている
・打ち出したいコンセプトが明確で、ブランディングを強化したい
・ヒト・モノ・カネが揃っている

どうでしょう、当てはまる企業はそれほど多くないのではないでしょうか…。とにかく難しいんですよオウンドメディアって。だから簡単に言い出さない方がいいよ、というのが正直な気持ちです(笑)。

別にオウンドメディアである必要はない

最後に、そもそも別に情報発信はオウンドメディアである必要はないですよというお話をします。
記事を書くならWantedlyやnoteを活用してもいいですし、それ以前に記事である必要もないので、オフラインのイベントや動画など、なんでもいいんです。何度でも言いますがとにかく目的や課題次第です。

ただしここでは「オウンドメディアを立ち上げるべきか」というテーマなので、トリプルメディアについて少し触れておきます。これは「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」という3種類のメディアの型を表しています。
めっちゃ簡単に言うと、次の通りです。

オウンドメディア:自社が保有するメディア
ペイドメディア:広告出稿をして掲載してもらうメディア
アーンドメディア:ユーザーが投稿する形のメディア

簡単すぎかな…。詳しくはここにまとまっているのでぜひ読んでみてください。

今回は自社でメディアを立ち上げる場合(オウンドメディア)と、Wantedlyなどすでにあるプラットフォームに記事を出していく場合(アーンドメディア)でそれぞれメリットやデメリットを比較します。

オウンドメディアのメリット
・打ち出したいコンセプトの通りに見せ方やデザインの調整ができる
・情報を自社で管理、コントロールすることができる
・自社の情報をストックしておくことができるので、「基本的にはそこを見れば企業のことが分かる」状態にすることができる

オウンドメディアのデメリット
・構築までに時間と費用がかかる
・メディアの構築や運用について詳しい人がいないと大変
・サイトの保守運用が必要
・認知を高めるのが難しい
アーンドメディアのメリット
・すぐに始められる
・そのプラットフォームにすでにユーザーがいるので拡散させやすい
・そのプラットフォーム上でユーザーからのコメントやリアクションが得られやすい

アーンドメディアのデメリット
・記事一覧ページでの投稿の表示順などがコントロールができない
・そもそもそのサイトがなくなれば記事もなくなってしまう
・複数のメディアに投稿している場合、自社記事の管理が面倒(どこにどの記事があるか分からなくなる)

長々と書きましたが、目的が明確でヒト・モノ・カネが揃っているのであれば、オウンドメディアは効果的なチャネルだと思います。
そうではないのであれば、まずはWantedlyや自分のSNSなどを活用して情報発信をして様子を見るのがいいと思います。
うちの場合はどう思う?というご質問などがあればお受けしますので、何かあればTwitterでDMください!


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