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天国への扉

険しい表情をしたおじいちゃんが部屋の奥から出てきた。
白のランニングに茶色のスラックス、頭には麦わら帽子だ。

「おじいちゃん、どこ行くの?」
ぼくの声に気づくとおじいちゃんはやさしい笑顔を向けてくれた。
どことなく、はかない感じがする。

「ちょっとな」
短くそう答えるとおじいちゃんは再び険しい表情に戻った。
不安そうな表情を浮かべたおばあちゃんが水筒を持って立っている。

「本当に行くんですか?」
水筒を手渡しながらおばあちゃんが尋ねると、おじいちゃんは小さくうなずいた。

「魚屋の田中さんもやられとる。わしだけ何もしないわけにはいかないんだ」
「でも」
「頼む。行かせてくれ」
おじいちゃんはおばあちゃんの肩にポンと手を置いた。

「じゃ行ってくる。孫のことは頼んだぞ」
「ええ。お気をつけて」
「大丈夫。ちゃんと帰ってくるさ」

おじいちゃんは玄関から照りつける日差しの中に消えていった。
おばあちゃんは黙ってその後ろ姿を見続けている。

「おばあちゃん。おじいちゃんはどこに行ったの?」
「おじいさんはね。戦場に行ったの」
「センジョウ?」
「ええ。とても危険なところよ。毎年何人も倒れているの」

おじいちゃんはそんなところに行ったのか。
本当に無事に帰ってこられるんだろうか。

ゲートボールとはそんなに危険なスポーツなのか。

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