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痛みに耐えながら歩き続けた話

子供は意味なくテンションが上がることがある。
どちらかというと大人しい方だったわたしも突飛な行動をして大変な目に遭ったことがあった。

兄弟2人で父方の実家に遊びに行ったときのこと。
特にすることがなくなったわたしは意味なく座椅子を大きく揺らしていた。

揺れがだんだんと楽しくなってきて、笑いながらさらに大きく揺らしていると、そのままガラス戸の中に頭を突っ込んでしまった。

ガシャーンッと大きい音がして、座椅子が止まった。

まず思ったのは「ヤバい、怒られる」だった。
この段階でまた痛みはない。
驚きの方が大きかった。

大きな音を聞きつけたおばあさんがやってきて、わたしのことを見ると小さく悲鳴をあげた。

そりゃそうだ。
頭に小さなガラスが刺さっているのである。

「だ、大丈夫?」
「うん」

いや、うんじゃないだろ、子供の頃のわたしよ。

このとき家にいたのはおばあさんだけで、彼女は運転ができなかった。
幸い近くに病院があったので、歩いていくことになった。

今考えてみると、タクシー呼んでくれてもよくない?

おばあさんに手を引かれながら、歩いて病院を目指す。
だんだんと頭が痛み出した。一度痛みを感じると、じわじわとそれが広がっていった。
しかし、どうすることもできないので、とにかく耐えて歩き続ける。

ようやく病院に着くと、すぐさまガラスの除去が始まった。

記憶の中ではこのときが1番痛かった。
ガラスを突き破った瞬間よりも、刺さったまま歩いていたときよりも、このときがもっともクリアな痛みがあった。

結局、この事故でわたしは一切泣かなかった。
むしろ、この後怒られるのがイヤだなぁということをずっと考えていた。
その後、親から怒られたかどうかは覚えていない。

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