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ミュッセ『二人の愛人』とハガル=サラ・コンプレックス

 本稿は、フランスロマン主義の作家ミュッセの中編小説『二人の愛人』について「ハガル=サラ・コンプレックス」の観点より考察したものである。
「ハガル=サラ・コンプレックス」とはフランスの精神分析学者マリーズ・ショワジーにより案出された複合観念であり、その名は『旧約聖書』中のアブラハムの妻サラと彼女の奴隷ハガルの物語より採られたものである¹⁾。澁澤龍彦は「コンプレックスについて」の中でこの概念を次のように紹介している。

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