妊娠した夢の話

ある朝、目を醒ますと、私は妊娠していた。誰ともセックスはしてなかった。心当たりはゼロだった。なんで妊娠してるとわかったかというと、妊娠検査薬を使って確かめた訳でもないし、つわりで気が付いた訳でもないし、直感的にピンときた訳でもない。ある朝、目を醒ますと、私のお腹は、今にも破裂しそうなほどに、膨れていたのだ。十月十日目な見た目だったのだ。

大きく膨らんだ自分のお腹を、大きく撫でてみると、ぽこん、という音とともに五センチほどの小さな足型が、おへそのちょうど斜め上に現れた。

やばい。妊娠しちゃった。私、もう臨月なのに、昨日までお酒も飲んでたし、タバコも吸ってた。やばいやばい。どうしよう。この子に何かあったらどうしよう。と、父親の顔も分からない(本当にわからないんだよな)その子に想いを寄せ、ダクダクに冷や汗をかきながら起きた。夢でよかった、と安堵すると同時に、いきなり母親になったにも関わらず心配することといえば自分の留学生活でも、世間体でもなく、自分の子供オンリーだったことを思い出し、夢の中でも私はお人好しなのか、と少し呆れ、少しだけ嬉しくなった。

あの子のお腹にいる5.5mmの赤ちゃんが、私の夢の中にいた赤ちゃんくらいまで、無事に成長しますように。

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