見出し画像

ガラスと水晶の見分け方

序文

前回、前々回と、少しマニアックで難しい記事が続いたので、今回は宝石や鉱物に最近興味を持ちはじめた入門者にもやさしい内容の記事にしたいと思います。
ガラスと水晶はどちらも透明で光沢があり、成分的にも同じ二酸化ケイ素でできています。
実際に模造宝石としてガラスを使うこともありますし、パッと見た目には違いが分かりづらいですよね。
しかし、この違いを理解することは奥深い宝石の世界を知っていくにはとてもいいきっかけになると思います。
宝石たちはなぜこんなにも多様な姿かたち、性質をしているのか、そんな疑問を読み解く最初の一歩になるかもしれません。


ポイント

本質的な違いは、”結晶質であるかどうか” です。
主成分は同じ二酸化ケイ素ですが、結晶構造の違いがガラスと水晶を分けていて、それが色々な特徴の違いにつながっています。


結晶質と非晶質

結晶とは、原子や分子、イオンが規則正しく配列して結合した状態の固体のことです。
厳密な言葉にすると難しく感じますが、イメージで大丈夫です。

出典:フォトサイエンス

この結晶、”配列”と言うからには、並び方にルールがあります。
これを結晶系といいます。結晶系には、色々な種類があって、「等軸晶系」や「六方晶系」みたいなややこしい名前がついています。
結晶の形の特徴は分子の並び方が原因なんですね。

出典:宝石の世界

同じ種類の原子や分子が集まっているものでも、いくつかの種類の結晶構造をとれる場合があって、有名な例が炭素ですね。

炭素は結晶のでき方によって色々な性質の同素体になります。
ダイヤモンドは等軸晶系、黒鉛は六方晶系の結晶です。成分は同じですが、結晶系がちがうので色や見た目、力学的な特性、何から何まで全然違いますよね。

出典:フォトサイエンス

結晶質

水晶
水晶の結晶の形は六方晶系と呼ばれています。
結晶質であるため、劈開があります。柱を斜めに切ったような割れ方で、不明瞭ではありますが特徴的です。
水晶のような結晶質は光学的にも特徴があります。水晶を透過した光が複数の屈折率をもつという性質です。このような性質を複屈折性といいます。
複屈折性をもつ物体越しに景色を見ると、その景色がブレて見えたり滲んで見えたりします。ただし、水晶では複屈折性があまり大きくないため、大きな水晶玉でないとこのような現象を観察することは難しいです。
ほかにも、水晶には旋光性という性質もあります。詳しい説明は難しいので省略しますが、実際にガラスと水晶を判別するにはこの性質を利用するのが最も有効で、実際に使われることも多いです。
また、結晶質の水晶はガラスに比べて硬い物質になります。モース硬度(物体同士をこすりあわせたときのキズのつきやすさ)は7となっていて、ナイフではキズがつかず、トパーズやコランダム(ルビー・サファイア)だとキズがつく程度です。

出典:宝石―その美と科学―


非晶質

ガラス
非晶質には原子や分子の配列にルールがありません。
より正確に言えば、SiとOの位置関係にはルールがありますが、SiO2の塊同士の位置関係には厳密なルールがなくつながっているという状態です。
結晶を持たないため、固体に属する状態といっていいのか、非常に粘度の低い液体といっていいのか、それとも液体とも固体とも違うもうひとつの状態なのか、まだ科学的にもハッキリと結論がついていないという身近ながら謎も多い物質です。
このような非晶質はほかに、ゴムや飴なんかがあります。なんとなくやわらかいというイメージがありますよね。
また、非晶質には劈開がありません。割れやすい力の方向などが存在しないんですね。スパっとキレイな面で割れずに、貝殻の模様のような断面をみせます。黒曜石は天然のガラスのようなものですが、黒曜石の断面をイメージすると分かりやすいかもしれません。

潜晶質

メノウ
メノウも同じSiO2でできた宝石ですが、こちらは潜晶質という構造をしています。
ものすごく細かな結晶質水晶がたくさん集合して固まることで、見かけ上非晶質のようにみえます。

実際の見分け方

ここから先は

1,103字

宝石ふむふむプラン

¥500 / 月
このメンバーシップの詳細

サポートいただけると幸いです。いただいたサポートは資料代などとして活動に利用させていただきます。