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【RIZIN】五味隆典「勝負を諦めなければ必ず相手のスタミナは切れると信じてやった」、メルビン・ギラード「ボディへの右ストレートが効いた」=7.29「RIZIN.11」

7月29日(日)さいたまスーパーアリーナにて開催された『RIZIN.11』の第7試合で、元UFCのメルビン・ギラード(米国)と対戦した五味隆典(イーストリンカンラスカルジム)。

950g体重超過したギラードに対し、対戦を拒否するつもりだったという五味だが、試合では持ち味を生かしたボクシング勝負でギラードをKO。右ヒザを痛めるなか、勝負を諦めなければ必ず相手のスタミナは切れると信じてやっていた」という通り、相手の強打にも心を折らすことなく、勝機を掴み、ギラードの意識を断った。

レスリングシューズを履きながらスタンド勝負に挑んだギラードだが、そのカウンターは脅威でもあった。試合後、両者は何を語ったか。コメント全文は以下の通り。(写真=RIZIN FF/Mizuaki Wakahara)

【試合展開】

1R、出だしはサウスポーの五味、オーソのギラードはレスリングシューズでサポーターを巻いた五味の前足に右ローを蹴る。ギラードの右アッパーをかわして先に五味がシングルレッグへ。切るギラードは離れ際に右! 下がる五味だが、左フックをヒット! 今度はギラードが下がる。追う五味はオーソに変える。

左ジャブは五味。そこに右アッパーを狙うギラード。五味はさらにジャブを突く。五味の大きな右にカウンターの右アッパーを放つギラード。両者足を止めて互いに右の打ち合いを3連打! 徐々に下がるギラード。五味の圧力を嫌い、前蹴りを放つ。

左構えに戻し。左ボディを狙う五味。しかしそこにギラードは右のカウンターを当てる。間合いをリセットする五味。ギラードは右ミドル。払う五味。左構えの遠間から左ボディフックを突き刺す五味。そこにギラードは再びカウンターの右フックをヒット! 顔を逃がしつつも振られる五味。

なおも五味は勇気を持って今度は左をボディストレートで突き刺すと今度はカウンターの右はかわす。ロープに詰まるギラードは右を繰り出すが、そこに五味はオーソから右ストレート! 崩れるギラードだが、そこで踏ん張った五味は右足が抜けるようにバランスを崩してしまう。身体が泳ぐ五味。

すかさず前に詰まるギラード。レスリングシューズを履いた足で右ローキック。そこに右オーバーハンドフックを合わせに行く五味はバランスを崩してヒザを一瞬マットにつくが、すぐに立ち上がるも顔面が無防備に。そこに右フックを当てるギラード!

下がる五味に右を強振するギラードだが、五味も鬼の表情で右を合わせに行く。さらに返しの左! バランスを崩し思わず右に抜けていくギラード。すぐに追う五味は右のロングフックへ。かわすギラードだがロープに詰まる。そこに左構えから左ストレートを顔面に当てる五味! ラッシュをかける五味は、左フックから右を顔面にヒット!! 前に崩れるギラードのテンプルにさらに左を入れてダウンを奪うと、鉄槌2発。頭からマットに崩れるギラードを見て、すぐにレフェリーが間に入った。五味が1R、2分33秒のKO勝利。

UFC5連敗からRIZINでの矢地祐介戦で一本負けながら復活のきざしを見せていた五味が、2014年4月26日以来の白星をさいたまスーパーアリーナで掴み取った。

総立ちの観客に向けて、いつかのようにコーナーポストに上った五味は、リングに着地すると、ティトの墓堀りパフォーマンスをリング上で決めた。

そしてリング上でマイクを握ると、「真夏に判定だめだよ、KOじゃなきゃ! やっと帰ってきたかな。これが俺の試合だから。持ってるよね、俺。これも暑いなか練習につきあってくれたセコンドのみんなのおかげ。メルビン選手も急なオファーなか受けてくれたけど、問題児なんでね。正直、体重オーバー、二度目の体重オーバー、ほんと日本の格闘技ナメんなっての。今年1回か2回、またここに上がろうと思ってます。今日はホント勝ったの信じられないんでね、ほんとに皆さんのおかげです。ありがとうございます。最高に美味いビール飲んで帰ってください! せっかくなんでもう一回いいですか? インスタの準備お願いします!」と語り、再びコーナーに上り、かつての名場面を再現すると、セコンドの盟友・竹内出、帯谷信弘らと記念撮影に収まった。

◆五味隆典(試合後の会見)
「日本の格闘技を本当にナメられたくなかった」

――メルヴィン・ギラードを1RKO。試合を終えた率直な感想をお願いします。

「まあ、いい試合ができましたけど……ウェイトオーバーとかはもうちょっと競技としてしっかりやってほしいとは思いますけどね」

――久々にコーナーポストの上に立ちましたが、どんな景色でしたか。

「PRIDEに出ていたときは、25、26(歳)だったので、15年ぐらい前ですかね? なんとかね、今の人にも知ってもらいたくて、なんとか実現できてよかったです」

――試合後、ティト・オーティズの墓掘りパフォーマンスをしていましたが。

「あれはね、あまりいいことじゃないんだけど……。本当はね、今日の昼過ぎまで『試合をやらない』って(自分は)言ってたんだよね。昨日から一睡もできなかったし。ボクシングでも山中(慎介)選手の試合であったよね。(試合前の)1個しかない男同士のルールなんで。体重オーバーして試合に勝って帰るという競技になっているので、僕は体重オーバーしたら断固として試合をパスしようと思っていたんです。大怪我にも繋がるし。相手は体重落とす気もなかったようだから。

 試合が実現したのはいいことだけど、結局(試合を)了承したら、昼以降に(ギラードが)なんか急に元気になっちゃって、なんだ芝居かよって思いました。オープニングの時に相手を見たらすげえデケえなあ、どうしようってと思って(苦笑)。それで……質問、何でしたっけ?(笑)。(墓掘りパフォーマンスについて)ああ、そうそう、俺の名前のコールのときにそれを(ギラードが)やってたんだよね。それで(自分が勝ってやった)。本当はいいことじゃないけれど」

――途中、ヒザを痛めていたせいでしょうか。バランスを崩しました。

「半月板が去年からちょっと悪いんですけど。練習とは違う角度になると抜けてしまうことがあるんです。パンチで効いたわけじゃないんです。なかなか治らないものですね」

――打ち合いの勝負になって押し込まれましたが、反撃しました。最後の決め手はなんだったと思いますか?

「そうですね……とにかく(相手は)ウェイトコントロールも失敗してるし、足を動かして冷静に戦えば(ギラードの)スタミナが切れると思っていましたね。勝負を諦めなければ必ずスタミナは切れると信じてやっていましたね。一発の威力がちょっと違ったけど」

――ボディも効かせていました。

「それに(相手が)合わせてきたアッパーは怖かったですけど、本来なら僕がやりたかったんですけどね。パッキャオ選手のようにね。でも、諦めなかったことで気持ちが折れてくれたので良かったですよね」

――KO勝利で会場が沸きました。

「去年の年末もそうですが、大声出して心の底からストレス発散できる楽しい時間を提供できたのかなと思いますけど、僕もこの試合で52試合目なんでそろそろしんどいです(笑)。最初に決まった選手(アンディ・サワー)の契約問題とか、今日の体重オーバーとか本当に疲れたので、色々とモヤモヤしましたね。減量もしんどいですけど、しんどい思いは全選手一緒なんでね」

――観客の声援はどう感じましたか。

「いつも憶えていないんだよね、だからまた試合やっちゃうんだろうね(笑)。北岡(悟)選手とも戦ったことがあるし、一緒に勝って欲しかったけど負けて。だから『やっちゃおう』って思いましたけどね。俺も北岡選手も年齢が近いから思うようには身体が動かないけど。日本の格闘技を本当にナメられたくないって思ったし。『真夏のさいたま、判定ダメだよ。KOじゃなきゃ』って言ったけど、最近俺の真似してるやついるでしょ?『判定ダメだよ、一本じゃなきゃ』って小さいこと言ってるやつがいるでしょ(笑)。やっぱり本家が言わないとね。本家が言いますよ。やっぱり嬉しかったですよ。皆さんの後押しのおかげですよ」

――北岡選手に勝ったディエゴ・ブランダオンが「五味選手と戦いたい」と言っていました。

「あの選手もUFCで戦っていたんですよね? なるほど。70kgまで落とせるかな? まあ機会があればやりたいですよね。強かったですよね。北岡選手とは僕もやっているんで、対日本人より対外国人もね。どんな試合でも本性出して打ち合えば……いいたいこともいろいろあったし、日本の格闘技をナメられたくなかったし」

――今後の展望は?

「当初は大晦日に向けて徐々に相手を強豪にしていくという考えはあったんですけど、今回がこういう感じになってしまったので、7月、9月、12月と出たかったんですが……、もう8月いっぱいは飲み続けようと思ってるんで、捕まらないと思います(笑)。次は大晦日ですかね。強豪選手とやれたらと思います。みんなが楽しめる試合ができたらと思います」

※一夜明け会見に痛めた足をひきずりながら登壇した五味は、「二日酔いです(笑)。それだけです。減量中、1週間前から焼肉の画像をずっと見ていました。携帯の写真フォルダが全部、肉になるくらい」と開口一番、周囲を和ませると、次戦について、「ヒザを痛めたのでそれを考えながらですし、今回は2試合やった気分なので、大晦日に噛み合うような選手とやれたらなって想いがあります。試合をやるたびに『最後にしよう』と思ってやっていますが……その前に結婚しないといけないですからね。昨日で十分アピール出来たと思います」と次戦の前に結婚相手探しを希望。

榊原委員長は「今回は五味選手の試合に魅せられました。2試合やったくらいだから2試合分のギャラをよこせみたいなプレッシャーを感じつつ、それは払わんぞ、と思っています(笑)。でも、それくらいのストレスと心労はあったと思います」と五味を労いつつ、結婚相手については、「昨日は大物女優も来ていました。出会うところまでは作るようにしますが、あとは自分で頑張ってください(笑)」と返答した。

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◆メルビン・ギラード
「PRIDEルールで戦ってみたかった」

――試合を振り返って感想を。

「ゴミは思った通りの選手、レジェンドファイターだった。素晴らしい選手ということは最初からわかっていたけど。自分のパンチもよく入っていた思うけど、彼はよく耐えて立っていた。敬意を表するよ。この結果を受け止めようと思う。いい試合ができたと思う。ただ体重のこともあり大変な2日間だった。でもそれは言い訳にはしない」

――五味選手のパンチのダメージは?

「それほどダメージは受けていないけど、どちらかというとボディへの右ストレートが効いた。試合全体で言うと互いに打ち合っていたので、その中での結果だと思う」


――体重超過となったが?

「体重の話で言うと、ここ最近は185ポンドの階級で戦っていたので、ここまで体重を絞って戦うことは難しかったかなと思う。またゴミと戦うことができるのなら戦いたい。ただ、ルールに関して言えば、昨日のルールミーティングでは何も言っていなかったのに、直前になって計量オーバーしたせいか、サッカーキックも頭部へのヒザ蹴りもダメになったりだとか、ゴミに勝ってほしい周りの思惑なのかなと感じた。ただ、それはゴミには関係ないこと。ゴミに対してはリスペクトしている。PRIDEに出たかったのでこうして日本で試合ができたことを嬉しく思っている。また試合をしたい」

――今朝の体重は何kgだったんですか?

「74kgだった(契約体重は73kg。前日計量で73.95kg)。ただ昨日の時点で何kgにするのかという許容範囲が変わったんだ。しかし、体重超過はミス。今後このようなことがないように気をつけたい。この2日間、体重調整のために水を取れなかった。その水分を取らないタイミングをミスってしまった」

――あなたはレスラーでもあります。レスリングシューズを履いた理由は踏ん張るためにレスリングを生かしたかったのか、蹴りに使いたかったのか。テイクダウンに活かそうとは思わなかったですか。

「シューズを履こうと決めた理由は日本に着いてから。理由としてはサッカーボールキックもダメ、4点ヒザもダメと言われたのでレスリングシューズを履いて臨もうと思った。テイクダウンのためとは考えなかった。自分のアイドルはケビン・ランデルマン。PRIDEへの憧れもあったのでPRIDEのルールで戦ってみたかったという思いはあった。ただ、俺は『RIZIN』が大好きだし日本のファンも大好きだ。ベアナックルファイトの試合もあるけど、また条件が整えば、日本で戦いたい。2日間、飲まず食わずだったけど、またここで残りのキャリアを捧げたい気持ちだ」

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