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【ONE】「ONE Championship日本大会は2019年3月30日に開催します。MMAも立ち技も、日本&海外のスーパースターを全員、出すかもしれません」=チャトリ・シットヨートンCEO

 ONE Championship CEOにしてアジア初のメガジムEVOLVE MMAのリーダー。タイで生まれ育ったチャトリ・シットヨートン氏は、幼少からムエタイをはじめ、選手、コーチとして活躍、米国留学時にはヘンゾ・グレイシーから柔術も学んでいるファイターだ。同時に、ハーバード大でMBAを習得したエリートビジネスマンでもある。

 そんなチャトリ氏が7月1日、PANCRASE297スタジオコースト大会を視察。大会後、囲み取材に応じた。

「ユウヤ(若松佑弥)には驚きました」──開口一番いきなりの日本語で感想を語りだしたチャトリ氏は母親が日本人。「自宅では母と日本語で話している」というアジア最大のMMAプロモーションの代表は、今回の取材もほとんど通訳を介さず、日本語で受け答えをした。

 アジア各地の土着格闘技をバックボーンとする選手を積極的に起用し、アジア各国で大会を開催しているONE Championship。4月マニラ大会からは立ち技部門「ONE Super Series」もスタートさせ、世界の強豪を集めている。

 2019年3月、ついに日本進出を果たすONE Championshipは、東京でどんな大会を開こうとしているのか。そして、ONEを率いるチャトリ・シットヨートン氏の格闘技観とは?(ONE試合写真=(C)ONE Championship)

──まずはさきほど終わったばかりのPANCRASEを視察した感想を。

「PANCRASEはブランド力もあり、すごく格好いいです。雰囲気がよかったです」

──特に印象に残った選手は?

「私にとってはユウヤ(若松佑弥)です。ユウヤには驚かされました。とてもテクニカルでバランスもよく、肉体的にも優れているように見えました」

──若松選手はデガゴンのなかで「ONEに出たい」と希望しましたが。

「ウェルカムです。絶対、契約します。ユウヤは世界中のスーパースターとやりあえます。才能を持っているし、スピードもある。将来、チャンピオンになる存在です」

──今回の来日の目的は?

「AbemaTVと電通との打ち合わせがありました。8月に東京でONE Championshipの記者会見をやりたいと思っています。その準備のために来日しました。そして今日のユウヤのように選手たちとも会いました」

──AbemaTVにより日本でもライブ中継されたミャンマー大会のメインで死闘を繰り広げたオングラ・エヌサンと長谷川賢選手に5万ドルのボーナスを支給すると発表されました。どんな思いからでしょうか。

「それは、ただただ凄かったからです。ONE Championshipの7年間で、私の一番、大好きな試合でした。すごく心を、武士道スピリッツを感じました。だから、長谷川さんとエヌサンさんの2人にボーナスとしてそれぞれ5万ドルを出しました」

──先日、プレスリリースで2019年の日本大会開催を発表しました。日本のファンや選手、マーケットにどんな魅力を感じていますか。

「空手、柔道、合気道、相撲、剣道……日本の格闘技界は長い歴史を持っています。それに日本の選手たちはとてもハイレベルです。でも、あまり金銭的に恵まれていません。格闘技のジムの数や規模も大きくはありません。だから、世界一になるのは大変です。でもONE Championshipが投資するので、もっとレベルも規模も上がってくると思います。

 その格闘技の長い歴史を持つ日本で、ONE ChampionshipはPRIDEよりも大きな大会を開催したいのです。いまONE Championshipは世界規模で考えれば、PRIDEよりも大きいです。でも日本では誰もがONE Championshipを知っているわけではありません。だから一生懸命、電通とAbemaTVの友達の助けを借りて頑張ります。AbemaTVの北野雄司さん(※写真)、電通の方々、ほかにも優秀なビジネスマンたちと仕事が出来て、私はすごく幸運だと思っています」

──過去にROAD FCが日本大会を有明コロシアムで1度だけ行いました。スポンサーに向けたショーケース的な意味合いもあったと思います。ONE Championshipは日本で継続的に試合を行う考えはあるのでしょうか。

「1年間に6大会を開催したいです。でもいますぐには出来ません。来年2019年はだいたい2回くらいの開催になると思います。そしてだんだんと増やしていきます」

──継続開催を考えているのですね。

「日本人選手もまだまだたくさん契約していきます。2019年、ONE Championshipは年間36大会を予定しています。東京、バンコク、マニラ、ジャカルタ、シンガポール、北京、上海……そして、来年は138カ国でテレビ放映をしていきます。だから、日本人選手にもチャンスはたくさんあります。王座挑戦のチャンスも。来年にはあらたな日本人王者も生まれると私は思っています」

──初めての日本大会を2019年の3月に予定しているのですね?

「はい。3月30日の土曜日に日本大会を予定しています」

──3月30日、東京大会ということですが、ある程度大きな会場になりますか?

「どこの国でもONE Championshipはその国の一番大きなスタジアムで開催していますが、電通からのアドバイスもあり、日本では最初は小さく始めていこうと思います」

北野氏 チャトリCEOは「小さく」とは言っていますが、日本では「大きい」といわれる会場になると思います。

「この国で最大というわけではないから、私にとっては小さな会場です。たとえばマニラのスタジアムは約2万人入ります。ONE Championshipでは、だいたい通常1万~2万人入る会場を使用しています」

──日本で開催するにあたり、日本のファンのマインドにアピールするのにどんなことが必要だと考えていますか。

「日本人のスーパースターと海外のスーパースター、その両方を見せたいと考えています。そして格闘技の母国に相応しく、MMAとキックボクシングとムエタイのミックストイベントにしたいと思っています」

──立ち技部門でもスターを投入すると。

「すでにONE Championshipの立ち技シリーズであるONE Super Seriesは、世界でナンバーワンのキックボクシングリーグです。ジョルジオ・ペトロシアンがいてアンディ・サワーやヨーセンクライ、多くのルンピニーやラジャダムナンのチャンピオンたち、様々なビッグネームがいます。もう……全部出すかもしれません(笑)。そんな考えも持っています。さらにMMAもシンヤ・アオキ(青木真也)らビッグネームが控えています」

──その場合、リングとケージどちらになりますか。

「来年、最初の日本大会はケージを考えています」

──日本から参戦を希望するファイターに望むことは?

「まずはフィニッシュに向かう試合をすること。試合を終わらせようとする選手であること。それから美しいテクニックを持っていること。私自身もキックボクシングや柔術などの格闘技をやってきて、そういった美しいテクニックの瞬間を見たいと常々思っているからです」

※チャトリCEOはタイで生まれ育ち、幼少時からシットヨートンジムでムエタイをスタート。ファイター、コーチとして30年近くムエタイに関わり、米国時代にはヘンゾ・グレイシーの道場で柔術も学んでいる。

──ユニファイドとは異なるONE Championshipのルールについてどう考えていますか。

「ユニファイドルールは、私にとっては本物の格闘技ではないです。グラウンド状態の考え方などに違和感があります。UFCの場合はだいたい40パーセントくらいがKOか一本で決着しますが、ONE Championshipでは72パーセントの試合がKOか一本で試合が決します。それは、グラウンド状態でヒザが使えることなどが関係しています。私にとってはONE Championshipのルールこそが本物の格闘技のルールなんです。

 ONE Championshipはアジアで生まれました。私もアジア人です。格闘技はアジアのなかで5千年の歴史を持つ文化のひとつです。そのアジアのONE Championshipで私は本物の格闘技を世界に見せたいと思っています」

──ところで……これはチャトリCEOに聞くべきことではないかもしれませんが、先日、マカオで行われたONE世界フライ級王座統一戦の判定に驚きました。アドリアーノ・モライシュが敗れたことについて、チャトリCEOはあの判定をどうとらえましたか。ONEの格闘技としてのあり方を考える上でもうかがいたいです。

「実は私もアドリアーノ・モライシュがゲヘ・エウスタキーオに勝ったと思いました。だから判定に驚きました。でも、ONE Championshipの判定はラウンドごとの採点ではなくトータル(※この王座戦では5Rトータル)の判定で、ダメージが一番重要です。ゲヘはストライキングダメージをより与えていた。しかしコントロールはアドリアーノがしていた。そしてサブミッションアテンプト(試み)もあった。でも“危ない”アテンプトは少なかった。

いつもギリギリの際どい判定のときは、24時間以内にONE Championshipの14人のオフィシャルコミッティ──ジャッジやレフェリーたちが試合を見直します。それが50/50の評価であれば、ジャッジは変わりません。でも、そのパーセンテージが50パーセントを超えて逆の評価だった場合、判定は変わります」

──判定を覆すことがあると。

「はい。だからミャンマー大会でのサゲッダーオ・ペットパヤータイとマー・ジャウェンの試合は、あのときの判定は3-0でサゲッダーオの勝利でしたが、翌日の14人のオフィシャルコミッティのレビューにより、判定がマー・ジャウェンの勝利に変更されています」

──いまの判定基準の考え方、そしてオフィシャルコミッティによる見直しは、日本人選手が戦ううえでも知っておく必要がありますね。さて、日本大会は「日本vs世界、日本vsアジアの強豪」などのコンセプトになるのでしょうか。

「まだコンセプトのようなものは決まっていません。ただ、これからAbemaTVと電通とONE Championshipでタッグを組んで、日本の格闘技を再び、PRIDEのときのように、いやそれ以上にするアイデアがあります」

──日本大会についての8月の会見も楽しみにしています。

「期待していてください!」

【ONE契約下にある選手】 

18名 ※順不同、2018年6月25日時点

内藤のび太(パラエストラ松戸/ONE世界ストロー級王者) 
鈴木隼人(BRAVEジム)
渋谷莉孔
竹中大地(パラエストラ和泉)
今成正和(今成柔術)
藤沢彰博(心技道場)
青木真也(フリー)
安藤晃司(NEVERQUIT)
山田哲也(しんわトータルコンバット)
V.V Mei(和術慧舟會GODS /RIKIGYM/Team Teppen)
松嶋こよみ(パンクラスイズム横浜)
和田竜光(フリー)※
7月7日 中国・広東省広州市大会出場
朴 光哲(KRAZY BEE)
下石康太(BLOWS)※
7月13日 マレーシア・クアラルンプール大会出場
長谷川賢(フリー)
徳留一樹(パラエストラ八王子)
※7月13日 マレーシア大会出場
上久保周哉 (TRY.H studio) ※7月7日 中国・広東省広州市大会出場
小笠原裕典(クロスポイント吉祥寺)※ONE SUPER SERIES

また、「AbemaTV」と「ONE Championship」はリアリティショー「格闘代理戦争」での連携など、様々な分野で共同プロジェクトを進めており、今後もイベントの内容や選手ラインアップに関してもさらなるコミュニケーションを深めていく予定。

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