【PANCRASE】新王者グライコ・フランサ「戦いたくても戦えなかった彼に──」=7.1「PANCRASE 297」

7月1日の「PANCRASE 297」でウェルター級の新王者が誕生した。激闘の末、佐藤天(TRIBE TOKYO M.M.A)を4R一本勝ちで破ったブラジルのグライコ・フランサ(ASTRA FIGHT TEAM)は、日本で念願のベルトを巻き、デカゴンの中央で号泣した。そのとき、ウェルター級キング・オブ・パンクラシストの胸に去来した思いとは──。

▼メインイベント 第12代パンクラス・ウェルター級王座決定戦 5分5R
○グライコ・フランサ(ブラジル/4位)
[4R 1分15秒 リアネイキドチョーク]
×佐藤 天(TRIBE TOKYO M.M.A/1位)
※フランサが第12代王者に

――佐藤天選手とのウェルター級王座決定戦はまさしく死闘、でした。一番の勝因はなんだと思いますか?

「勝因は、勝つことに対して自信を持つことだったと思っている。トレーニングもしっかりやってきたし、今回はティム・ルバーグがレスリングも強化してくれた。ティムは2度、オールアメリカンになっているし、Bellatorでも勝っていて(Bellator2勝/MMA15勝3敗)MMAでレスリングを活かすことに長けている。サトウとの戦いはレスリングが肝になると思っていたんだ。それに、他のコーチのみんなのヘルプ。何より、天国に逝った友人、アラン・ドス・サントスのおかげだと思っている」

――アランとは仲が良かったんですか?

「アラン・ドス・サントスと知り合ったきっかけは、最初は僕の彼女からだった。クリチーバで彼女から紹介されてね。僕は子どもの頃に柔道と空手をやっていて、キックボクシングの経験もあったから、アランが『立ち技と組み技の経験があるなら、MMAをやるべきだ』って勧めてくれて、強豪が揃うアストラファイトチームに誘ってくれたんだ。彼と知り合ったからこそ、ベストチームに入ることができたし、いまの僕がある。彼のおかげなんだ。アランは僕より6つ歳上で、3年早くMMAを始めていて、16勝3敗という素晴らしい戦績だった。体重が近かったし、彼から教わり、たくさん共に練習した。アランはUFCでも戦えるといわれていたし、PANCRASEのチャンピオンにもなれるっていわれていたんだ……。それが残念なことに、2カ月前にがんで亡くなってしまって(涙ぐんで)……。だから、このチャンピオンベルトを獲れたことを、彼に感謝している」

――……対戦した佐藤選手も、事故で亡くなった練習仲間(秋葉尉頼)との約束を果たすという思いを抱きながら、グライコ選手と戦っていたと思います。

「そうだったのか……。ベルトを取ると約束を?」

――「UFCで勝つこと」です。

「ああ……そうか……、サトウも僕と同じ思いだったんだね。僕は2015年にTUFブラジル(シーズン04)で優勝したけど、UFCでは1勝2敗でリリースされた。当時はライト級だった。それからウェルター級の身体を作って、ASPERA FCでウェルター級のベルトも取って、いまここにいる。サトウと同じように僕もUFCで再び勝つことが目標だ。だから、腕にTUFのタトゥーを入れた。絶対に、UFCにカムバックして勝ち名乗りを挙げる。このタトゥーを見るたびにそれを思い出すようにね。そのためにもPANCRASEで必ずチャンピオンにならなきゃいけなかった」

――そんな両者の思いと積み重ねがぶつかりあった試合でした。1Rから懐の深い佐藤選手の右ジャブを被弾し、3Rには右から左のワンツー、そして左ボディ、ヒジ打ちで金網に釘付けにされました。あの場面、残り3分以上ありましたが、よく心が折れなかったですね。

「サトウはほんとうにタフで素晴らしい選手だった。サウスポーから右ジャブも左ストレートも効かされたよ。ただ、僕もアストラで常にハードなトレーニングをしてきたからね。モルセゴ(ハファエル・シウバ)がサウスポー対策を教えてくれたし、UFCで戦っているダレン・ティルとも5年ほどずっと練習を重ねてきている。(ドナルド・)セラーニをKOしてしまう男だよ。サウスポーで距離の長いティルのような相手とのスパーリングでこちらの打撃を当てるのは大変だ。決定打をもらわないこと、粘り強く戦うことには慣れていたよ」

――あれほどのダメージがあって、スタミナも苦しいなか終盤、テイクダウンできる自信はあったのですか?

「サトウとの試合は本当に『戦争のような試合になる』と試合前から覚悟していた。3R目にサトウがラッシュをかけてきて、距離が近くなったことで、金網を背に僕の左右も当たったんだ。そこでテイクダウンを仕掛けたけど切られた。バックを取られながら、僕はサトウの息づかいを背中で感じていたんだ。『相手も疲れているんだ』って。そこでボディロックしてテイクダウンした。サトウも背中をつけずに立って来たけど、なおダブルレッグからバックを取ることができた。1回チョークにいって(正対されて)下になったけど、上のサトウが疲弊していることをあらためて感じたんだ」

――そこから腕十字を仕掛けるもさばかれバックを取られかけますが、今度はグライコ選手が腰をずらして正対してダブルレッグでテイクダウンを奪い、3Rが終了しました。

「スクランブルできると思ったよ。サトウがあそこで勝負をかけてきたことはわかった。僕も苦しかったし、ラウンドは落としたかもしれないけど、挽回のチャンスは来る、そう信じていたよ」

――3R終了後、先に立ち上がったのはグライコ選手でしたね。そして4R、互いに苦しいなか先にダブルレッグを仕掛けたのもグライコ選手でした。

「何度も何度も練習でやってきたからね。あのとき僕は右を振って詰めて自分のコーナーに向かってダブルレッグに入った。セコンドのティムが目の前にいて、励ましてくれた。クラッチは取れてなかったけど、足を広げたサトウの両足首を掴んだときに、ティムの『いけるぞ』って声が聞こえた。サトウを引き倒してすぐに両足をまたいだ。サトウの背中を逃さずにそこからは……チョークが極まるまで、身体が自然と動いていたんだ」

――勝者も敗者もマット上に大の字でした。どんなことを考えていましたか。

「いろいろな思いが去来したよ。サトウはとてもテクニカルでタフでナイスガイだった。彼は間違いなく世界で戦える選手だ。そんなサトウと死力を尽くしあった。試合後、サトウのセコンド(長南亮TTMMA代表)が握手をして祝福してくれたんだ。マットに倒れて、天井を見上げて、ティムに『写真を』と頼んだ。アランに報告したかった。アランの小さな写真を見た途端、涙を抑えることができなくなった……彼が僕をMMAに導いてくれた。もっと世界中で戦いたかったはずなのにできなかった彼に(涙を流し)…………このベルトを一番にアランに捧げたかったんだ」

――……今回は、1週間前には来日して調整していましたね。

「ブラジルから日本は遠い。サンタカリーナのバウネアーリオ・カンボリウから東京まで飛行機を乗り継いで丸1日はかかる。前回のテヅカ(手塚裕之)戦(スプリット判定勝利)では、時差のために万全の動きができなくて悔いが残ったんだ。今回のタイトルマッチでは早めに来日して体を慣らして、試合に挑むことができたと思う。練習場所として受け入れてくれた日本のジム、友人のヒデ(三好)にも感謝したい」

――最後にファンにメッセージを。

「日本のファンの皆さん、そして、AbemaTVやUFC FIGHT PASS、日本の放送を見てくださった方、会場に来てくださった皆さんに感謝したいと思っています。今回、夢だったベルトを獲得することができました。これからもPANCRASEで戦って、そしてUFCの77kg級でも戦っていけたらと思います。これからもサポートをお願いします」

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【佐藤天の再起戦が決定、豪州2団体の王者と対戦!】

10月21日(日)「PANCRASE 300」スタジオコースト
▼ウェルター級 5分3R
佐藤 天(TRIBE TOKYO M.M.A/2位/13勝2敗)vs
マット・ベイル(NZ/XFC&HEX6冠王/11勝(7KO)1敗)

※佐藤は7月フランサ戦からの再起戦。ニュージーランドINCORPORATED MARTIAL ARTS所属のベイルはUFCルーク・ジュモーのセコンドとして来日経験も。オーソドックスからアグレッシブな打撃を放つが、距離を保ちタイミングよく放つ右ストレートも持つ。柔術は紫帯で腰も強く、パンチだけでなくキックで削りながらテイクダウンを織り交ぜて戦うことも出来る。唯一の黒星は元UFCファイターのベニー・アロウェイに2016年9月に判定負け。以降は、5連勝中の強豪だ。佐藤は8月に2週間のシンガポールEvolveでの合宿をこなしている。


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