見出し画像

【RISE】那須川天心「3R目に拳を痛めて左を打たないで勝てるのか、と恐怖を感じた。ロッタンは何で倒れないんだろうと。無事に帰って来れたって思ったら、涙が出てきた」=6.17「RISE 125」

那須川天心が無敗の31連勝の中で迎えた相手は、現ルンピニースタジアム認定スーパーフェザー級1位、ラジャダムナンスタジアム認定同級2位、タイ国プロムエタイ協会同級1位の強豪ロッタン・ジットムアンノン。

RISE世界フェザー級王座をかけた両者の戦いは5Rでは決着がつかず、延長1Rの死闘の末、那須川が世界のベルトを腰に巻いた。試合後、涙を見せた那須川は、何を想い、泣いたのか。左腕を包帯で巻いて現れた那須川の試合直後の会見を全文掲載する。(photographs by Wakahara Mizuaki)

【追記】那須川天心(※6月18日、一夜明け会見にて)
「ロッタン選手ともう1回やりたいですね。やらなきゃいけないと思っています」

「昨日は応援、ありがとうございました。昨日リングの上で言った(※下記参照)思いが全てです。相手はほんとうに強かったですが、経験を自分のスキルに活かし、またロッタン選手といつか戦うことが必ずあると思うので、ぜひ再戦して、再戦では白黒はっきりつけたいと思います。

昨日は皆さんの応援やセコンドの声があって、初めて本当の意味で自分だけじゃないというのが分かりました。あとは、もっと57kgに適応できる身体を作って、どんどん防衛してRISEの世界ベルトの価値を上げていきたいです。

(那須川選手自身は試合を見直してをどう感じた?)常にプレッシャーをかけられて、印象は悪いなと感じました。ポイント、有効打はこっちが取っているんじゃないかなと思う部分もあったので、もっと誰が見ても分かるように、しっかりと勝てるようにしないとダメだなという反省点はありました。

(729『RIZIN.11』に出場予定となっているが影響は?)まだ病院へ行ってないので分かりませんが、その結果次第かなと思います。3Rに、自分は(相手の)頭を打たないので(通常は拳を痛めることが無いが)、ほっぺの辺りにしっかり打ったはずなのに拳を痛めてしまって……。ロッタン選手は打たれ強くて、人間じゃないんじゃないかって思いました(苦笑)。

(今の状況は?)今は包帯をしているので、手を握ることが出来ませんので、どうかな? と思っています。

(ベルトは)凄い重みを感じました。本当に世界最強の選手と戦って取ったベルトなので、めちゃくちゃ高い価値があると思います。またその価値を上げるために防衛していきたいと思います。

(再戦について)もう1回やりたいですね。やらなきゃいけないと思っています。ロッタン選手は自分の1個上(那須川は8月で20歳、ロッタンは21歳)ですし、まだまだやるチャンスはいっぱいあるので、白黒つけたいと思っています。

(原口健飛の挑戦表明については)そうですね。原口選手はいま同世代で頑張っている選手なので、当たる機会があれば思いっきり倒しにいきます」

◆伊藤隆 RISE代表(一夜明け会見にて)
「ロッタンはONEと契約したが、11月両国大会には出場の許可が出ている」

「昨夜のメインに賛否両論あると思いますが、団体としてはレフェリー・ジャッジに判断を託しています。個人的には、有効打は天心で印象でロッタン。総合して本戦はドロー、延長は有効打の数で天心だったと思います。互いにルールに納得して戦っています。

ロッタンはONE Championshipと2年契約を結びましたが、チャトリ代表と話し合い、11月17日のRISE両国国技館大会出場の許可をもらっています。後はタイサイドとの話し合いになります。

昨日の大会後、ONEのチャトリ代表からフェザー級王座決定戦の2人(工藤政英と森本“狂犬”義久)と他の選手にもオファーがかかりました。KunlunFightのトニー・チェンも観戦に来ていたので、両団体とは引き続き、選手の貸し借りなどの協力はしていきたいという意思疎通は出来ています。

(工藤は王者としてRIZIN参戦を希望しているが)RIZIN陣営とも話をさせてもらいたいと思っています」

那須川(※試合直後)「痛めたけど打たないと勝てない。手はどうなってもいいや、と思いながら打った

──試合を終えた率直な感想を。

「そうですね……うーん、周りのみんなに勝たせてもらったという感じですかね。それだけですかね」

──どんなゲームプランだった?

「プランは、3R以内に絶対に倒せるなと思って、自分のパンチが1Rからどんどん当たったんで、もう倒れるだろうと思って、ずっと打っていたんですけど、3R目に拳、というか手を痛めてしまった。なかなか使い辛かったですけど……打たないと勝てなかったんで。もう気力で打ってました」

──足首も?

「そうですね。もう、全身痛いです。試合中、初めて真っ白になりました。世界戦、という感じでしたね」

──ロッタン選手の強さはどんなところに?

「いやー、ほんとうに打たれ強かったです。何でこんなに倒れないんだろうと思いましたし、まあ、みんなに勝たせてもらったという感じです」

【写真】那須川の右を首で受けて右を返すロッタン。那須川も顎を引いているが……。

──これまでの数々の強豪と比べて、どう異なりますか?

「うーん、気持ち、圧力、なんかやっぱり階級も上だな、と感じましたね、すごく。だから、ほんとパンチだけはもらったらダメだなと思って、蹴りは捨てて、パンチは避けながら自分で当てる、というのは練習でずっとやってきたので、試合でも考えなくても出ました。最後に延長でいけたのは、練習してきて……ほんとうに自分でも倒れるくらい頑張ってやってきたので、それが生きたなと思います。みんなに感謝したいです」

──効いた攻撃は?

「効いた、というか……まあ、効いたんですかね。スタミナもほぼ切れかかってたんで、もう気力で。ただ、倒れるような攻撃はなかったです。相手もこれだけ耐えていて、自分も絶対に倒れないぞと思っていました。“気”で勝ちました」

──試合中にロッタンが表情でも挑発してきましたが、どんな気持ちでしたか。

「ああー、打たれ強いなぁって。ほんとうに効いていなんだなと思いました。なんなんですかね。ズルいですよね(苦笑)。効いてたと思うんですよね。手ごたえしかなかったですもん。普通の選手だったら倒れているはずのパンチなのに……」

──胴廻し回転蹴りが出たのは、少し相手が見えてきたから?

「顔面ヒザだったり、ハイキックだったり、そういうのじゃないと倒れないだろうと思ったので。でも、そういうのも通用しない、じゃあどうしようと。カウンター狙うしかない。最後はもう倒す、というより“ヒット”になりました。でもそれでちょっと力みも無くなって、効いたんじゃないかなと思います」

──プロデビューして初めて判定で相手にひとつ入りました。そのとき、どう思いましたか。

「いやー……まあ、自分のすべてを出した結果だったんで、仕方ないかなとも思ったんですけど、まあ、焦りましたね」

──もしかしたら負けたとも?

「いや、何も考えられなかったです。立っているのも気力で立っていたようなものだったので、ドローとなったのもあまり覚えていないです。最後に出れたのも、(自分では)映像を確認しないと分からないくらい」

──試合中に追い込まれている、と感じた?

「初めて、感じましたね。試合中に怖くなったのを。いくら打っても倒れないんで。腹はちょっと嫌がっていたかなと思って。延長は効いていたと周りは言っていたんですけど。自分のパンチを信じていて良かったなと思います」

──特に恐怖を感じたのは?

「3R目くらいですかね。殴って(自分の)拳がすごく痛くなってしまって。左手打たないで勝てるのか、と思ったんですけど。でも、打たないと勝てないんで。手はどうなってもいいや、と思いながら」

──延長Rに入るときは、セコンドのお父さん(弘幸氏)から、どんなことを?

「何て言われたか覚えていないですけど、とにかく……怒鳴られたというか。カツを入れられましたね。それでもう勇気が出ました。自分の父親だったり、タイ人のトレーナーだったり、周りの声が聞こえました。延長に行ったのも初めてで、もうあそこまできたら気持ちで、最後は気持ちで勝てたかなと思います。やっぱり練習は嘘をつかない、というのは本当だと思いました。(延長無制限については?)そういうことも忘れてました。最後はみんなに背中を支えられながら立っていたと思います」

──僅差だったと思いますが、一瞬のタイミングでまとめてポイントを取れたのはどんな?

「どうですかね。分からないです。気合で取れた、という感じですか(苦笑)。なかなか考えることができなかったですし、勝ったという実感もまだ無いですし、試合に勝って勝負に負けたかなという感じですね」

──延長判定を制したと思ったタイミングは?

「(延長1R終わって)もうセコンドはずっと勝った、勝ったと言っていたんで、勝ったかなあと思いました」

──表彰状をもらった瞬間に泣きました。

「もう、ほんとう身体の力が抜けました。全部、抜けました。立ってるのがやっとでした」

──最後の涙の意味は?

「いやー、泣いたっていうか、勝手に出てきたんですよね。泣き虫みたいですけど(苦笑)。なんかホッとしました。無事に帰って来れたっていう」

──あらためて世界には強い選手がいると?

「世界は広いですね。ロッタン……またいつかやることになると思うんですけど、次は倒します。絶対に」

──RISEの世界ベルトを巻きました。

「世界タイトルマッチという名にふさわしい試合、相手だったんじゃないかなと思います。この価値をどんどん上げていきたいです。もう、今日の試合みたいにならないように、どんどんもっともっと強い相手を倒して、圧倒していきたいなと思います」

──勝利インタビューを受けて、あらためて勝利を確認したと思いますが。

「ありがとうございました。周囲の皆さんの力をほんとうに感じました」

【試合詳報】https://www.facebook.com/gong.kakutogi/posts/1739811226109770

【一夜明け会見が一般公開】

6月18日(月)15時から(入場開始 14:45)、東京ガーデンパレス・天空の間(文京区湯島1-7-5-2F)にて、一夜明け会見が一般公開形式で行われる。

【GYAO! がRISE125を無料生配信】

6月17日の「Cygames presents RISE125」が、GYAO! で6月18日(月)18時からアーカイブ配信を予定。

──────────────────────────────

『ゴング格闘技ベストセレクション 1986-2017』発売中!

那須川天心×父・弘幸氏の対談も掲載された『ゴング格闘技ベストセレクション 1986-2017』がイースト・プレスより発売中。本文二段組、560頁に及ぶ第1弾の今回は歴史篇。柔道、柔術、レスリング、バーリトゥード、MMA、空手、キック、立ち技格闘技──ゴン格31年の取材史に書き下ろしコラムも収録! → http://goo.gl/Enmvrc

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?