【PANCRASE】上田将勝「毎日、恐怖と戦いながらやっていました。これからはミルクティーと一緒に──」『PANCRASE 296』引退会見
『PANCRASE 296』スタジオコースト大会の一夜明け会見が5月21日、都内にて行われた。
メインイベントのパンクラス・バンタム級暫定王座戦でハファエル・シウバ(ブラジル)に敗れ、引退を表明した上田将勝(パラエストラ東京)が会見に出席。試合後のバックステージでのコメント(※記事下部に収録)に続き、前夜の激闘と引退後について語った。一問一答は下記の通り。
──あらためて試合を振り返っていかがでしたか。
「負けてやっぱり悔しさもあるんですけど、出し切ったというすっきり感もあるので、もう悔いはないです」
──左足をアイシングされていますが、ダメージは?
「鼻と歩けないぐらい足が痛いです(※上田は傘を松葉杖代わりにして会見場まで来た)。(自分が)蹴ってなったと思うんですけど、これから病院に行きます。鼻は折れていそうな気がします。パンチが重かったです」
──耳が聞こえづらいのは餃子耳になっているほかにも原因が?
「特に昨日から耳がおかしいです。パンチをもらって耳から血が出ていたので、それもあると思います」
──試合後に怪我で思うように練習が出来なかったことを明かされていましたが、どんな状況でしたか。
「背中と腰を、ぎっくり腰のようにずっと痛めていて、それでもう(スパーリング)練習は出来なくて、出来ることをやってきました。もともと痛めていたところを(試合前に)柔術の練習をしたときにバキッと痛めてしまって。あとは治療をしながら、なんとか試合にたどり着こうと思ってやってきました」
──では、公開練習で立ち技だけにしたのも……。
「もう、背中が張ってつらかったです。いつギックリ腰になるか分からないので、毎日、恐怖と戦いながらやっていました。囲み取材で正座したのも、腰が怖くてそうしていました」
──引退を表明して、一夜明けた気持ちは?
「ベルトを獲れなかった悔しさはあります。みんなに喜んでもらえなくて……。でも、出し切ったと思うので、今はスッキリしています。ハファエル選手が強くて、(巻き返すことは)出来なかったです。でも最後まで諦めずに勝負はしました」
──試合後、どのように声をかけられましたか。
「いろいろお話はしました。会場に応援に来てくれた人は『お疲れ様』と泣いてくれる人もいて……。控室でも練習仲間から、『よく頑張った、お疲れ』と言ってもらったり、あと、『ありがとう』と言ってもらえたのが嬉しかったです」
──プロ選手としては区切りがつきましたが、今後、どのようにされますか。
「どうしようかな、といま悩んでいます。これから考えていきます。一緒に練習してきた仲間たちのサポートとかは、これからも続けていきたいと思います」
──選手を指導していくということも?
「いま週一回、『BLOOM』という道場で指導しているので、そこで続けていきたいなとは思っています」
──怪我を治して、何かプライベートでもやりたい事などもありますか。
「特になにも……あっ、好きな物が食べられるから良いかな、と思います」
──何を食べたいですか。
「……お菓子とか(笑)。カルビーのポテトチップスとか。好きだったので」
──ちなみに、何味ですか?
坂本靖広報 そこ、掘り下げるなぁ(笑)。上田選手はFacebookで試合前、日々、切々と「苦しい」「大変だけど頑張る」という書き込みがありまして、読んでいるだけでオファーをして申し訳ないな、と思いつつも「いいね!」を押していました(笑)。そのやりとりが今回で終わるかと思うと……そんなに深いつきあいでもなく、SNS上だけですが、寂しいですね。お疲れ様でした。ありがとうございました。
──次は、ポテチを食べている姿に「いいね!」を(笑)。
「コンソメ味が好きで、ミルクティーと一緒に食べるのが美味しいんです。試合が終わったらいつも密かに食べていました(微笑)。アップしたことは無かったです」
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上田将勝「最後は見渡して、みんなの顔を見ながらやっていきました」
5月20日、東京・新木場スタジオコーストで開催された「PANCRASE 296」メインイベントで『最後の試合』として「パンクラス・バンタム級暫定王座決定戦」に臨んだ上田将勝がハファエル・シウバに判定負け。試合後、正式に引退を表明した。試合直後の控室での上田の言葉を紹介したい。
▼第10試合 メインイベント パンクラス・バンタム級暫定王座決定戦 5分5R
○ハファエル・シウバ(ブラジル/ASTRA FIGHT TEAM/2位)
[判定3-0] ※50-45×2,49-46
×上田将勝(パラエストラ東京/1位)
※シウバが暫定王者に
試合4日前体重でバンタム級上限の61.2kgから7.2kg重い68.4kgだったシウバだが、前日計量では61.0kgできっちりパス。当日は一回り大きな身体を作ってきた。
開始後、最初の上田のシングルレッグを切ったシウバ。バック回られる上田もチョークを防ぎアームバー、さらにアンクルホールドへの連携を仕掛けるが極め切れず。
スタンドでは上田が左ミドルやボディストレートを効かせるが、上田の踏み込みにシウバは右ストレートを浴びせ、距離が空けば右ロー。さらに要所要所でダブルレッグテイクダウン。レスリングの強い上田を持ってしても、シウバのテイクダウンとクラッチは切れず、長い時間をバックコントロールされた。上田も時間をかけて正対するが、シウバも付け入る隙を与えず。判定3-0でシウバが暫定王者となり、ベルトを巻いた。
(試合後、リング上で)
シウバ「ウエダに感謝したい。亡くなった友人にも。日本が大好きだ。チームの皆とこれからもこのマットで戦いたい」
上田「ハファエル選手、強くて力及ばず無様な試合をしてしまいました。悔しいですが出し切りました。この試合をもって引退します。今まで応援ありがとうございました」
引退を表明した上田は、オープンフィンガーグローブをデカゴンに置き、四方に礼。セコンドの鈴木洋平氏、新井誠介氏らとハグをかわし、ケージサイドで観戦した中井祐樹氏と握手。デカゴンを後にした。
(バックステージにて)
34戦できて、凄くいい格闘技人生だったと思います
──試合を終えた率直な感想をお聞かせください。
「正直、悔しいです。でも……最後、体動かなかったんで。出し切れたと思います。ハファエル選手、強かったです」
──一番、最初のテイクダウントライ、いいタイミングで入ったと思いましたが、切られバックを奪われました。
「ああなっても仕方ないので、動いて疲れさせてやろうと思っていたんですけど、でも削れなかったですね……。とにかくどんな状態でも極めに行ってやろうと思って(自分から)やりました」
──途中、左ミドルとボディストレートを効かせていたように感じました。
「それが作戦だったんですけど……思ったよりも遠くて当たらなかったです。何回かミドルが効いたのは分かったんですけど、そこから行こうと思ったら、逆にストレートとかもらっちゃって……行けなかったです」
──近づくと相手のテイクダウンも強かったです。
「動けなかったですね……休んでいるのは分かったんですけど、何をやってもうまく対処されちゃいました」
──会場の石渡伸太郎選手から「クラッチを切れ」という声がかかっていましたが、なかなか……。
「はい、聞こえてました。(クラッチを)切りたかったんですけど切れなかったんで、もう取りに行こうと思って、自分の得意なことをやりにいきました」
──バックにつかれても、何度か得意の巻き込みやアームバー、バックから腰をズラして正対しました。
「ダメだと思ったけど、自分に出来ることはこれしかないんで、やり切ろうと思って、やり切りました」
──ハファエルは前回と今回で違いましたか?
「前回よりもスタミナもあったし、強くなっていました。勝ちたいという気持ちが向こうの方が強かったです」
──いろいろなところで怪我があったと思いますが、今回はどこまで仕上げられたのですか。
「……最後3週間ぐらい、もう、MMAスパーリングもグラップリングもできなかったです。でも、出来ることをして、いろいろ痛み止めとか打ってなんとか辿り着けました。……でも今日は出し切れました」
──パンクラスはいかがでしたか。
「すごく細やかな団体でした。たとえばチケットを早く送ってくれるとか、試合を決めたいときに組んでくれるとか、すごくしっかりしていて、すごく戦いやすい舞台でした」
──セコンドの声や様々な練習仲間や応援団の声援が飛んでいました。
「いつも周りとか何も見えなかったんですけど、今日は、最後は見渡して、みんなの顔を見ながらやっていきました」
──最後はオープンフィンガーグローブを置きました。
「もう引退することは決めていたんで……最後、マイクももらったんで、引退の舞台にさせてもらって話しました。でも……34戦できて、凄くいい格闘技人生だったと思います(※MMA34戦26勝6敗2分)」
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