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【QUINTET.2】初の団体戦、そのとき「TEAM 10th Planet」は何を想ったか。劇的優勝を聞く

チームに所属してはいるものの、試合では個と個がぶつかりあう通常の試合を戦ってきたこれまでの「10th Planet」の面々。「QUINTET.2」では、初の団体戦を経験したことで、選手たちは「これまでにない感情を味わった」という。刻一刻と状況が変わるなか、「分け役」「抜き役」を実戦のなかで選択し、見事、優勝を勝ち取った「TEAM 10th Planet」は、団体勝ち抜き戦のそのとき、何を考えていたのか。ジオやリッチーのマルティネス兄弟。PJバーチ、アミール・アラム、アダム・サックノフ、そして総帥エディ・ブラボーに訊いた。

エディ・ブラボーが語る「EBI」の次なるフェーズ

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◆『QUINTET.2』
7月16日東京・大田区総合体育館

【一回戦について】

「TEAM 10th Planet」(vs「TEAM VAGABOND」)

◆PJバーチ(vs クリシェック・スチョラスキー※時間切れ引き分け)「相手はすごくタフだった」

「極めるのが大変な相手だったね。一番手としてプレッシャーも感じていた。僕の戦い次第でチームの勢いも変わって来るからね。でも相手はすごくタフだった。僕のほうがだいぶ上だと思ったし、試合もコントロールしていたと思うけどね」

◆リッチー“ブギーマン”マルティネス(vsジョアオ・アシス※時間切れ引き分け)「世のラバーガードの使い手たちを、そしてエディの代表として戦った」

「相手のジョアオ・アシスはADCC王者で、この柔術というスポーツのレジェンドだ。彼の試合のファンでもあったから、試合ができることになって本当にワクワクしたよ。で、試合では僕のゲーム、つまりラバーガードの展開に彼を引きずり込むことができたと思う。それこそが狙っていたことだったんだ。世のラバーガードの使い手たちを、そしてエディの代表として戦いたいと思っていたんだ。そして実際ラバーガードを使って試合をコントロールできたから、嬉しかったよ。

一度パスされたけど、すぐにガードに戻して攻め込むことができた。ドローに終わったけど、別のルールなら僕の勝ちだったと思う。そういう試合をできてアメージングな気分だよ。今までのキャリアの中で一番気に入っている試合さ」

◆ジオ・マルティネス(vs石井慧※4分時間切れ引き分け)「いつも大きな相手とも練習している。どんな相手とも戦えるんだ」

「イシイはジャイアントで、僕の2倍の大きさがあった。でも僕はちゃんと理由があってチームの真ん中に置かれたんだよ。どんな相手とも戦えるからね。いつも大きな相手とも小さな相手とも一緒に練習していて、自分の柔術は誰に対しても有効だという自信があるんだ。そしていつも大きな相手と戦って自分を証明したいと思っていた。これまでいくら勝っても『スモールガイの中で勝っただけだろ』とか言う奴がいたしね。でも僕に言わせれば体格は関係ないよ。問題は有効な技術を持っているかどうかなんだ。

イシイは非常に重くて優れたパスガードの使い手で、僕をキムラで攻めてきた。試合後もイシイに『腕を痛めつけてしまってソーリー』って言われたから、『君たちのチームを負かしてしまってソーリー』って言い返したんだよ(笑)。大きい相手と戦うのは歓迎だし、すごくいい経験だった。またイシイと戦えと言われれば、喜んでやるよ」

◆アミール・アラム(vsアンドレイ・カズショナク※ヒザ十字)「僕の愛するチームを危機に追い込んでしまった」

「僕が今日味わった気持ちの全てを説明するのは難しいよ。僕は今まで、肝心なところでいつも失敗してきたんだ。いざという時に、いつも力を出せなかった。大会の決勝戦とかタイトルマッチとか。中学生の時のレスリングでも、ADCCでも、EBIでもね。トップに立つ寸前でいつも失敗する、僕はそういう男なんだって、ずっと自分で思っていたんだ。そこで今日の一回戦、チームが僕を必要としてくれる場面が来た。なのに、そこで僕はまた失敗したんだ。単に失敗しただけじゃない。ただ負けただけじゃない。僕は秒殺されてしまったんだ。しかもビッグネームとは言えない相手にだ。それに加えて、僕の愛するチームを危機に追い込んでしまったんだ。試合後、足はものすごく痛かったけど、こんな痛みなんて負けてしまった恥ずかしさに比べれば何でもなかったよ。僕は一回戦で、そんな気持ちに追い込まれたんだ」

◆アダム・サックノフ(vsアンドレイ・カズショナク※リアネイキドチョーク)(vsミカエル・ドピッツ※4分時間切れ引き分け)「2週間前に足を怪我していたからヒールフックが禁止されていたことは幸運だった」

「今はいろんな気持ちが心をよぎっているけど、思うのはこの試合は僕にとって本当に大きなものだということだ。僕も今アミールが言ったのと同じようなことを経験してきた。最高レベルの舞台までは辿り着く。でもそこで望む結果を出せないでいたんだ。この大会のことを僕は、EBIやADCCと同等の晴れ舞台だと思っていた。そこで戦えて本当に嬉しかったよ。チームの大将をやるのは大変だった。どういう形で出番が回って来るか分からないからね。で、結局チームの最後の砦として戦うことになった。大きなプレッシャーがあったよ。僕は2週間ほど前に足を怪我してしまって、満足に練習できなかったんだ。そして試合で相手はまさにその足を攻めてきたんだ。一瞬タップすることも考えた。でもなんとか凌ぐことができた。ヒールフックが禁止されていたことも幸運だったかもしれない。それでチームのために勝つことができて本当に嬉しかったよ」

※大将戦で出された指導の数、そしてチーム全体で受けた指導の数も同数であったため、最後は大将戦の旗判定に。判定3-0で「TEAM 10th Planet」の決勝進出が決まった。

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■「TEAM VAGABOND」

◆クリシェック・スチョラスキ「PJはディフェンスがうまかった」

「PJはディフェンスがとてもうまかった。レッグロッグを何回か試したけどダメだった。だから肩固めを狙っていったけどプレッシャーをかけられてうまくいかなかった」

◆ジョアオ・アシス「極めきれなかった」

「最初は自分のほうがプレシャーをかけていて相手のラバーガードより良かったと思う。でも、最終的には極めきることができなかった。両者失格はルールだから仕方ないけど」

◆石井 慧「僕がとるべきだった……」

「(相手のオーダーについて)マルチネス兄弟は後ろにくるかなと考えていて、最初抜いて行こうという感じだったんですけど、まさか軽いのが真ん中にくると思わなかったです。(ジオとは)体重差があってあそこは僕がとるべきだったんですけど、ちょっと取れなくて非常に残念です。相手もやっぱり気持ちが強かったし。向こう多分(怪我で)ダメな選手もいると思うんで、僕たちに(決勝戦を)やらせてくれないですかね。5人とも元気だから。キャンプ含めて6週間集中して15時間の移動、試合は4分……。4分やってギャラもらって帰るだなんて、ギャラ泥棒だと思われますね。それも申し訳なくて。悔しいです。もうちょっと反則(指導)きたら僕たちの方が攻めてたかなと思うんですけど。旗判定にしても全体の判定だったら良かったんですけど(※最後は大将戦の旗判定)」

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■1回戦「TEAM Reebok」vs「TEAM Tiger Muay Thai」

◆ユン・ドンシク(vsクリストフ・ヴァンダイク※時間切れ引き分け)

「1回戦は自分が考えていたより相手に力があって緊張した。2人とも柔道ベースだから疲れてしまった。私のせいでチームにマイナスになってしまってごめんなさい」

◆所 英男(vsタレック・スレイマン※4分時間切れ引き分け) 

「前回、ユンさんとストラウス選手にちょっと腰が引けちゃった感じで負けちゃったんで、今回は攻めたいと思ったんですけど、攻めきれずに終わってしまい悔しいです」

◆ハイサム・リダ(vsバイキング・ウォン※トーホールド)(vsアレックス・シルド※ヒザ十字)(vsスチュアート・クーパー※RNC)3人抜き

「自分のスタイルはいつもアグレッシブにアタックすることで、それが1回戦は思った通りにいって、まさか全部早く極められるとは正直思ってなかったです。なんとか勝って嬉しかったです」

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【決勝戦について】

「TEAM 10th Planet」vs「TEAM Reebok」

◆PJ(vs中村大介※時間切れ引き分け)「ナカムラから『絶対にタップを取らせないぞ』という気持ちを感じた」

「ナカムラも、僕の一回戦と同じようにタフだったよ。試合も正直一回戦と同じような感じだった。僕がコントロールしていたし、持てる技を全て出して極めにいったけど、向こうはとにかくしぶとくてタフで、絶対にタップを取らせないぞって感じで凌がれてしまった。でも楽しかったよ」

◆リッチー(vs桜庭和志※ダースチョーク)(vsハイサム・リダ※腕十字)「尊敬するサクラバに得意のダースを極めることができて最高だった。リダは予想以上のパワーがあった」

「この大会に出ている全ての選手がサクラバと戦いたかったと思う。僕らのチームもほかのチームの選手も、彼と戦いたくないなんて選手はいないだろう。そんな中で僕が彼と戦えて本当に嬉しかったし、光栄だったよ。サクラバのことは本当に尊敬していて、ある意味(一回戦の相手の)ジョアオ・アシスよりも尊敬しているよ。試合ではレッグロック等を仕掛けられたけど、僕の知らない技はなかった。桜庭は強いけど、今日は僕はチームを代表して戦わなくてはならなかったんだ。そしてそれこそまさに僕がやったことだ。この試合ではどんなことになってもタップするつもりはなかったし、勝たなきゃいけなかったんだ。彼からパスガードを取れて、そして僕の得意技のダース(チョーク)を極めることができて最高だったよ。

ただ、その試合ですごく疲れてしまったんだ。別に言い訳をするつもりはないし、次の試合も楽しかったんだけどね。相手の力が強いことはわかっていたけど、戦って見たら予想上だった。彼の力の強さを少し甘く見ていたかもしれない。彼は良いテクニックも持っていたけど、力がそれ以上だったよ。ガードをパスされてキムラから腕十字を仕掛けられた時、相手の方を向こうとしていたんだけど、逃げるには体力が残ってなかったんだ。そこで完全に腕を伸ばされてタップするしかなかったんだ。今でも痛むけど、完全に折られることはなかったからね。怪我して6カ月試合に出れないとかは避けたかったから、できるところまでは戦って、深く極められたらタップしたんだ。残りのチームのみんながやってくれると知っていたからね」

◆ジオ(vsハイサム・リダ※ノーアームギロチンチョーク)(vs所英男※時間切れ引き分け)「マスター・エディ・ブラボーが僕に言ったんだ。『兄貴の仇を取って来い!』って。トコロ戦は左腕がもう使えなかった」

「僕はチームのみんなと、そして兄とはものすごく親しいんだ。そしてすごく感情的なグラップラーなんだ。ハートで戦うタイプなんだよ、兄が戦うのを見るたびに、自分が戦う時以上のプレッシャーを感じるんだ。そうやって兄の試合に感情移入するし、兄も僕の試合では同じ状態になる。そんな兄はサクラバとのロングマッチを制して疲れてしまった。兄はサクラバのようなタフな相手をフィニッシュするに多くのエネルギーを費やしたにちがいない。

次の試合で疲れた兄がミスを犯して悪いポジションになり、タップを取られた時、マスター・エディ・ブラボーが僕に言ったんだ。『兄貴の仇を取って来い!』ってね。それで気合が入ったよ。そこで試合場に立った時は、相手がどれだけ背が高く重くても気にしなかったんだ。自分のやるべき仕事にただひたすら集中していたよ。うちの道場には彼と同じくらい背の高いグラップラーがいていつも練習しているから、一度首を捕まえてしまえば、向こうが逃げるのは難しいって分かっていたんだ。だから首を狩りに行ったんだよ。人は腕十字や足関節を耐えることはできる。でも絞め落としてしまえば終わりだ。チョークというのは柔術における究極の技術なんだよ。それを狙いに行ったのさ。決め手はマルセロチンだった。(首を捕らえて)マウントを取ってフィニッシュ出来て最高の気分だったよ。チームを代表して勝てたからね。僕はいつも全力で10th planetを代表して戦っているから。

そして次の試合はタフマッチだったよ。相手(所)は僕と同じ体格だったけど、僕の想像以上の難敵だった。すぐにギロチンで仕留めようとしたんだけど、そこで使った同じ腕は一回戦で(石井に)キムラを仕掛けられていた側で、そして次の試合(ハイサム戦)でギロチンを極めるのにも使ったんだよ。だから戦略を変えざるを得なかったんだ。左腕はもう使えなかったからね。たとえ相手をフィニッシュ出来なくても、絶対にタップをとらせず相手を失格させようと思ったんだ。そうすれば残りの二人が勝ってくれるって信じていたからね。だから二人を失格に追い込めて満足しているよ。

チームのために戦えたのは本当にアメージングだった。チームみんなで戦いに臨んだんだ。戦争に向かうみたいだったよ。みんなが自分の役割を全うした。1人でも欠けていたら勝利を得ることはできなかったんだ。チームで勝ち取ったんだ。エディにとってメンバーを選ぶのは大変だったに違いない。うちにはすごく優秀な選手がたくさんいるからね。その中で選ばれた僕ら5人は、使命感に燃えていたんだ。世界の強豪たちに立ち向かうためにね。だからこうやってチームとして、チームのために戦うってのは本当に特別なことだったよ。他では味わえないね。負ける時は一緒に負けて、勝つ時は一緒に勝つんだ。ぜひまたやりたいよ」

◆アミール(vsユン・ドンシク 4分一本勝負※リネイキドチョーク)「僕のキャリアで最高の瞬間だった!」

「最初の試合を終えた僕は、心の中で自分自身と戦わなければならなかったんだ。痛む膝に関して、自分に言い聞かせたんだ。こんなものはなんでもない。ただ受け入れそして無視すればいい。試合場で何をしようが痛むだろう。タックルを仕掛けようがラバーガードを試みようが。そんなものは最初から受け入れて気にしなければいい、とね。そうやって僕は試合場に上がったんだ。味わうことになるあらゆる痛みを全て受け止めるつもりでね。だから入場で歩く時にも弱みを見せるわけにはいかなかった。試合前にもウォームアップで軽く飛んだ時も痛んだけど、そんなのは最初から分かってたから気にしなかったんだ。

そして試合でブギーがサクにツイスターを極めかけた時に、『ワオ!』ってやったよ。そしてブギーはサクからタップを奪った。ブギーのことは普段から本当に高く評価していたけど、その気持ちが一層強まったよ。そしてリダがブギーを倒した。リダは僕らが今までに目撃した最大のモンスターだと感じたよ。ジオが出て行って、その男を極めたんだ。『すげえ!』ってね。本当にインクレディブルだった。そして思ったんだ『俺もチャンスが欲しい。あの舞台に出て行って自分の力を示したい』ってね。だからジオがトコロを極めてしまわず、僕に活躍のチャンスを与えてくれてありがたかったよ。

そして遂に試合場に上がった時、僕はこう思った。『もうこれ以上最悪のことは起こるはずがない。すでに一回戦で起きてしまったのだから。僕はもうこれ以上ないくらいの最大の失敗をしてしまっているんだから』とね。そして相手のバックを奪って足で四の字フックを入れた時に思った。『これは膝にもの凄い痛みが来るぞ』ってね。そして実際僕は痛みに顔を歪め唸っていたけど、気にしちゃいなかった。ひたすら強く強く締め付けたんだ。そして相手をフィニッシュできた。おそらく僕のキャリアで最高の瞬間だったよ……」

◆アダム「決勝ではアミールが僕を助けてくれた」

「僕は決勝戦では試合をすることはなかったんだけど、でもこのチーム戦の展開は最高にクールだったと思うよ。一回戦では僕がアミールを助ける形になったけど、正直その後、僕は完全に体力を使い果たしてしまっていたんだ。足も痛かったし、燃え尽きてしまっていたんだ。でもこのチーム戦という形式のおかげで、決勝ではアミールが逆に僕のことを助けてくれた。チームがこうして一体となれてクールだよ。全員がこの優勝に貢献できたからね。ブギーは、このトーナメントで最強の男の一人であるジョアオ(アシス)を失格に追い込み、ジオはリダを極めたんだ。そしてPJもすごく強い相手を2人失格させたんだ。

そして、もう一つ言いたいことがある。僕はアミールより1パウンドだけ軽かったんだよ。だからこのチームにおけるデブ野郎は正式に僕ではなくアミールということになるんだ(笑)」

◆エディ・ブラボー総帥「我らが10th planetの歴史上でも至上の瞬間だった」

「(この大会の感想は? と聞かれて)ああ、悪くはなかったかな。まあ別に騒ぐようなことじゃない……わけがねえ! この大会の全てが、今までの俺の柔術のキャリアにおいてまったく経験したことのないようなものだったぜ。チーム戦というコンセプトもだし、二回戦うのもそうだ。インクレディブルだ。戦いが何度も行われ、ピンチとチャンスが代わる代わるやってきて本当にドラマチックだったぜ。チームの全員が輝いたんだ。まずPJ。相手をフィニッシュすることこそできなかったが、相手を圧倒してみせた。どちらの試合でも明らかに相手を上回っていたぜ。最初の試合では滑ってバックを取られる場面もあったけど、プロフェッショナルな技術で体勢を戻して攻め込んだ。なぜ俺がPJをトップに持ってきたかを、世界に示してくれたと思うよ。PJはこれから長いこと、10th Planetのトップに君臨し続けると信じるぜ。

それからブギー。おそらく30パウンド近く重いジョアオ・アシスに、ラバーガードを駆使して戦った。イシイと並んでこの大会における最も難敵だったアシス相手にな。そしてブギーはラバーガードってのがどういうものかを、なんでこういう技術があるのかを日本のファンに、そして世界中に見せつけたんだ。世の中には、なぜか未だにラバーガードを疑う連中がいるんだよな。ブギーのやったことはそういう連中への啓蒙だよ。その後ブギーはサクラバからダース(チョーク)を極めたんだ。この試合自体がマーシャルアーツの歴史そのものだな。

その後でブギーはリダにやられてしまったが、この敗戦が次のジオによる大いなるリベンジにつながったんだ。いい映画だってなんだって、ピンチがなければ盛り上がらねえよな。同じことだ。今から考えるとこの展開は完璧だったな。試合場に向かうジオに対して、俺は(アクション映画の登場人物のような口調で)『お前が、殺された兄の仇を打つのじゃあ!』って命じたんだよ。そしてジオは見事にあのアサシン(暗殺者)を仕留めたんだ。

ジオこそ、俺たちみんながチームのエースと認める存在なんだよ。一番軽いジオがエースというのは奇妙に映るかも知れないが、一回戦でイシイと当たった時も俺たちは彼を信頼してたんだ。ジオならどんな状況にも対応できるってな。そして実際にあのモンスター、イシイの凄まじいキムラに耐え抜いて、失格に追い込んでみせたんだ。その上ジオは決勝でもこの大会で片っ端から相手をフィニッシュした、巨大な相手と戦ったんだ。バカでかいモンスターにしがみつく小さなガーゴイルみたいだったぜ。いや、本当にすげえことがさんざん起きた大会だったぜ。まったく『パルプ・フィクション』みたいにクレイジーなシーンが続出した。あと『スカーフェイス』な。この二つの映画のごちゃまぜみたいな大会だったぜ。

そしてアミール。残念ながら最初の試合では足関節を極められてしまい、手負いの戦士となってしまった。そこで俺は言ったんだ。『戦えないのなら、それは構わない。でも戦いたいのなら、怪我はないものだと思うんだ。全てが万全であるかのように戦うんだ』ってね。アミールはまさにそうやって決勝戦で戦ったんだ。

その前、一回戦でアダムがチームの最後に砦としてマットに立ち、アミールに膝十字を極めた男と戦った。俺はこれは厳しいなと思ってたんだ。アダムが足を怪我していること、練習ができなかったことは知っていたからな。そして試合では相手がそのアダムの負傷している足に膝十字を仕掛けてきた。俺はこれはもうダメだって思ったよ。でもアダムは耐え凌ぎ、バックを奪って極めてみせた。アメージングだったぜ! そしてアダムは次の相手も攻め込んだんだ。

そして判定が下される瞬間も良すぎたぜ! そして次の決勝でも全員が活躍して勝てた。もうあり得ないくらい最高だ。我らが10th planetの歴史上でも至上の瞬間だったと言えるな。なんというか、KISSが70年代に初来日した時の、マネジャーのビル・オーコインになったような気分だったぜ……」

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■「TEAM Reebok」

◆中村大介「後手に回ってしまいました」

「決勝(vsPJバーチ)で1発目だったんでもっとガンガン行きたかったんですけど、ちょっと慎重になりすぎたというか、後手に回ってしまいました。みんなに勢いをつけられなくて攻めに行けなかったのが申し訳ないです。もっと練習します」

◆桜庭和志「いつも練習であれ(ダース)をやられる」

「ちょっとヒザのやつ、カーフスライサーを狙ってたんですけど、ハマりがちょっと浅かったんです。すみません、その後一本取られたのもいつも練習であれやられるんですよ。いつもの感じが出ちゃったんで悔しくて……。1人残しちゃったんでそれがまたメチャクチャ悔しいですね。次また、しっかり一本取れるように頑張ります。団体戦は、輪というか、仲間という感じは出るんでそこはいいと思います。(個人としては?)ハッキリ言って、僕には合ってないと思います。いや、それはもう……チームでやる良さはあるんですけどね。あとはアマチュア(9月23日「Amateur QUINTET.1」墨田区総合体育館 武道場)ですね。(国内に関しては)様子をみながら『FIGHT NIGHT』みたいな軽い階級もできればいいかなと。体重軽くなってくると動きとかも変わってくるんで。そこはまたできればいいかなと思ってます。年内か年明けてすぐか」

◆ハイサム・リダ「ジオが上からくるとは思わなかった」

「10th Planetは昔から知っていて、柔らかいスタイルで下からガンガン攻めてくるのは分かっいたけど、先にリッチー・マルティネスはうまくパスして腕十字を極められたんですけど、弟(ジオ)のほうがみんな強いと言われているんですけど、まさか上からくるとは思わなくて完全にやられたって感じですね。それが凄い悔しいです。自分が一番若いといわれて、一番頑張らないといけないのにそこで負けて、チームが優勝できなかったのは自分のせいだと思うので、また次、リベンジできるようなチャンスが欲しいです。これからもよろしくお願いします」

◆所 秀男「ジオは越えられる気がしないくらいオーラがあった」

「(ジオは)ハイサム選手とやって疲れてましたし、石井(慧)さんとやって疲れていたので、体力的に分があると思ったんですけど……越えられる気がしないくらいオーラとかもあったし、強い選手なんだなあと思って、ちょっと攻めきれなかったです。もう練習するしかないので頑張ります」

◆ユン・ドンシク「引退するか、韓国に帰って考える」

「もうすぐ50歳(45歳)ですね。サクラバさんがもっと上(49歳)だけど、私はだんだん試合が良くなくなっています。力も、スタミナも。だから引退するのがいいかなと今思っていて、韓国に帰って考えます」

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