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【RIZIN】5年ぶり再戦、バンタム級日本最高峰の戦いは、堀口恭司が扇久保博正を降す。堀口「試合前にあのビデオは勘弁してくれよと」、扇久保「殺してくれ、と思いながら試合をしていた」=7.29「RIZIN.11」

7月29日(日)さいたまスーパーアリーナにて開催された『RIZIN.11』のセミファイナルで、堀口恭司(ATT)が扇久保博正(パラエストラ松戸)と5年ぶりに再戦。堀口は序盤でフラッシュダウンを喫しながらも、以降は終始危なげない戦いで、扇久保を圧倒。気迫を見せた扇久保だが、徐々に削られスタミナをロス。堀口が判定3-0で勝利した。

濃密な15分の攻防でいかに堀口は実力者・扇久保を制したのか。試合詳報と試合後の両者のコメント全文を紹介する。(写真=RIZIN FF)

▼第9試合 RIZIN MMAルール 60kg契約 1R10分・2R5分 ※ヒジ打ちあり

○堀口恭司(ATT/RIZINバンタム級トーナメント優勝)
[判定3-0]
×扇久保博正(パラエストラ松戸/修斗第6代世界フライ級王者)

1R10分、左右足を入れ替える扇久保。オーソの堀口はフェイントで扇久保を下がらせ、跳びヒザで詰めると、扇久保はシングルレッグからダブルレッグに切り替え尻餅をつかすと、片腕を立て寝かされない堀口に対し、首を抱えにいく。突き放そうとする堀口。すぐに左で差す扇久保は離れ際に右の拳を入れ、際の打撃でヒジも入れるがここは堀口がかわす。

扇久保が低い姿勢を取りレベルチェンジすると、テイクダウンを警戒し頭の位置を合わせる堀口。左から右を続けて打つと、走りこんでの蹴りも放つ。かわして右を振り、組み付く扇久保だが、体を入れ替えスタンドバックに回る堀口。いったん引き込みチョーク狙いも、足を外すと立つ扇久保の背後についてヒザ。扇久保はアームロック狙いから正対し、バックヒジから右ロングフック! 顔に受けバランスを崩してダウンした堀口にすぐに組み付き腰を殺して、堀口の立ち際をバックを奪う!

しかし、すぐに腰をずらしてチョークをかけさせず正対する堀口はコーナーを背に上半身を立てると、組み付く扇久保の頭を下げさせ蹴り上げから突き放して立つと、離れ際に右ストレートを放つ。かわす扇久保に跳びヒザも。その着地際にダブルレッグから四つに移行し、左で差す扇久保は左をかちあげ回して投げるが、堀口は驚異的なバランスで側転するように立ってしまう。扇久保は左ハイも圧力に後退。堀口の右ボディストレートが腹に突き刺さる。さらに堀口の左右で扇久保は足を取りにヒザを折って座るようになってしまう。がぶる堀口は扇久保の立ち際に右フック! 扇久保の左瞼の縫合していた傷口が開き出血してしまう。

扇久保のダブルレッグをがぶるようになった堀口はすぐさまバックへ。自らグラウンドを仕掛ける堀口。右腕でチョークを狙いつつパウンドに切り替え、再び逆腕でチョークへ。それを抜いてサークリングする扇久保。追う堀口に扇久保は右を振るが、見切る堀口は大胆に詰めてワンツー! スタミナ苦しい扇久保は遠間から足を取りに行くが、難なく掘口に切られてしまう。

右ローを連打する堀口。さらにワンツーも素早くかいくぐりシングルレッグでコーナーに押し込む扇久保に堀口はレスリングのスイッチから扇久保の左足を上げると扇久保は頭をマットにひっくり返されてしまう。そこにすぐに堀口はサッカーキックへ。再び組み付く扇久保を切り、堀口が4点ヒザを突いて亀の扇久保に強い鉄槌、パウンドを入れ、10分の1Rがゴング。

2R、1Rより距離が近くなった堀口。右ローから速い左右連打で詰めていく。さらに左ストレートから組むと、右で差し込んでドライブし、扇久保に尻餅をつかせる。恐るべき組み力。扇久保はフックガードから抱き着き。スタミナ厳しいなか右で脇差し、ダブルレッグから立っていく! そこに堀口もヒザ蹴り! しかし堀口の上半身がロープ外に出てしまう。

中央で再開。クラッチ組む扇久保だが、切る堀口に扇久保は右で差してシングルレッグに切り替えるもブレーク。左からワンツー、左アッパーで前に出る堀口。さらにワンツーもかい潜る扇久保はダブルレッグへ。尻下でクラッチ組む扇久保をすぐに差し上げる堀口。そこに扇久保は跳び付きギロチンを仕掛けるが入りは浅い。スラムで前に落とす堀口はパウンド! 蹴り上げから柔術立ちで立つ扇久保は、堀口の左ミドルを掴みなおもしぶとくダブルレッグへ。尻下でクラッチする扇久保は引っこ抜くが、尻餅はついても上半身は寝かさせない堀口は立つと殴り合いも制し、下になる扇久保に左のパウンドを入れて試合終了。

判定3-0で1Rのフラッシュダウンを補って余りある猛攻、組み技の強さも見せた堀口が勝利した。

堀口(リング上)「いつもみたいに決められなくてすみませんでした。相手も凄く対策を練って来てやり辛かったです。自分のなかでは納得していません。もっと強くなって帰って来ます。今度はしっかりKO・一本を決めます。日本が熱くなるような試合をするんで、応援、よろしくお願いします」

◆堀口恭司「5年前と違ったのは、相手の気持ち」

――試合を終えた率直な感想からお願いします。

「すごく研究されてて、打撃勝負にこなくて、言い方は悪いかもしれないけど、ちょっと“逃げる”相手に自分も苦戦しちゃったかなと思います。相手も来てくれるとやりやすいんですけど、自分が行くと下がってというのだと、どうしても噛み合わなくてやり辛さを感じましたね。すごく相手に研究されていたと思います」

――UFCでのデメトリアス・ジョンソン戦を研究された?

「そういう展開も久しぶりだったので、対応はしていたんですけど、もうちょっと自分から攻められるように、攻めに繋げられるようにしていきたいですね」

――5年前に扇久保選手と対戦したときと何が違いましたか。

「相手の気持ちが違ったかなって感じですかね。はっきり言って、違ったのは気持ちだけだと思います」

――1R、扇久保選手のバックヒジから組み付かれ、離れ際に右フックをもらい、フラッシュダウンしました。

「あれは、フラッシュダウンといってもバランスを崩した感じで、あの後も全然、普通に動けているし、記憶も飛んでいないんで。全然、平気でした」

――それ以降、ちょっと堀口選手がじれたのか、近い距離でも強引に詰めて行っているように感じました。

「そうですね。相手が下がってたんで、もうちょい詰めちゃおうと思うって前に出ました」

――同日にUFCのメインでダスティン・ポイエー、ヨアナ・イェンジェチックが試合で、ATTのマイク・ブラウンは米国でのセコンドでした。影響はなかったでしょうか。

「まあ、そうですね。やっぱりいてくれた方が技術の最終的な調整がわかるんですけど、まぁでも、全然そこは心配なく行けました」

――扇久保選手との組みの展開のなかで、堀口選手の組みの強さも見えました。手応えは?

「手応えは……ないですけど(笑)、組み、強かったですか?」

――と、思いますが。コーナーにシングルレッグで押し込まれてもスイッチから扇久保選手を逆さに回して驚きました。

「ATTでレスリングを練習しているんで。組み技もレベルアップしていると思います。グラウンドも相手のグラウンドの攻めに対しても、自分の寝技も落ち着いて対応できました。レスリングは、もうちょっとできればよかったと反省しています」

――今回は5分3RではなくRIZINルールの1R10分でしたがいかがでしたか。

「自分は10分だろうが5分だろうが、別に変わらないです。スタミも全然、大丈夫なんで、特に問題なかったです」

――勝利はしましたが、あまりテンションは上がっていないようですが。

「試合前にいろいろあって……気持ちも高ぶらなかったですね。試合前に煽りVTR(二瓶氏の映像)を流したじゃないですか。勘弁してくれよって、速攻ヘッドホンで耳塞いで。聞いちゃうと泣いちゃうんで。さすがに試合前は勘弁してくれよって、そんな感じです」

――試合を通して、(亡き)師匠の二瓶弘宇氏に伝えられましたか。

「いや……たぶん、めちゃくちゃ怒られると思います。『何やってんの、オメェ』って。だからちょっと『すみません』って感じです(苦笑)」

――今後の展望は?

「日本が盛り上がる試合をどんどんしていきたいです。そのために日本に帰ってきたので。そういう盛り上がる試合を組んでくれると嬉しいです」

――戦いたい相手は?

「まぁ、キックで那須川くんとやりたいなと思います。キックやるならしっかり勝ちにいきます」

―――――――――――――――

◆扇久保博正「勝ち続けてまた堀口選手と戦えれば」

――試合を終えた率直な感想からお願いします。

「1ラウンドの途中からスタミナが切れてしまって、それが敗因かなと思います」

――気持ちが感じられる試合内容でした。どんな思いで戦っていましたか?

「そうですね……死ぬ、殺してくれと思いながら、試合をしていました。……コイツ、いつ俺を失神させてくれるかな、と思いながら」

――傷口が開いてしまいましたが、堀口選手の打撃は効きましたか?

「意外とスタンドの打撃は見えたので、ほとんどもらっていないと思いますけど……途中から、僕が攻めているのに消耗してしまって、堀口選手も寝技をしっかり練習してきているので対処されて、どんどんそこで削られてしまいました」

――堀口選手を苦戦させる場面もありました。

「うーん、1ラウンド途中までほんとうに“これ勝てるんじゃねえか?”と思いながらやっていたんですけど、どんどん疲れてきちゃって、スタミナがもっとあれば勝てたかなと思います」

――作戦通りに動けてはいた?

「そうですね。(左右足を)スイッチをしながら的を絞らせず、堀口選手より低い位置に構えて、強い打撃を打たせないように、という作戦通りにはできたと思います」

――5年前に堀口選手と対戦したときと何が違いましたか。

「そうですね……5年前は戦ったというより一方的に殴られてたんで、よくわからないですけど……わからないですね。すみません」

――堀口選手も「相当研究された」と言っていましたが。

「いや、正直そんなに研究していないですね。本当に。コーチの鶴屋(浩)さんに『デメトリアスだ』という指示だけ出されて、それをずっと練習してきたので、それが出たのかなと思います」

――スタミナが切れた要因は?

「堀口選手がタックルを切った後の体重の掛け方とかが凄く上手くて。ああ、強いなと思ってやっていました。ちょっと予想より組みが強かったですね。スイッチされたときも、『俺がやんなきゃダメじゃん』って思って。三点倒立みたいになっちゃいました(苦笑)。強かったです」

――1R10分でしたが、5分3Rだったら展開も変わっていましたか。

「うーん、まあ、格闘技なんで10分・5分で作りこんできたんで、5分3Rだったらまた違う作りこみになりますし、そこはちょっとなんとも言えないですけど、まあ、初めての10分だったので長くは感じました」

――今後の展望は?

「『RIZIN』に継続参戦して盛り上げていきたいです。勝ち続けて、またいずれ堀口選手と戦えればいいなと思っています」

――教え子の浅倉カンナ選手が勝利しました。評価を。

「RENA選手も凄い強くなってて気迫も感じたし、でも本当に(浅倉は)凄いプレッシャーだと思うんですよね。二十歳の女の子がこんな期待されて……、判定だったけどよく頑張ったと思います。愛の力だと思います」

――入場曲で吉田拓郎の曲を使っている理由を教えてください。

「吉田拓郎さんの大ファンで、ずっと聞いていて。それで、PRIDEとか見てるときから俺が入場するときは『落陽』だと決めていました。ライブで一番盛り上がるんで、最高です」

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