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【実践】アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(主催側_6月29日開催)要約あり

 経済の本は、がっつり読んでみたいものの、すぐ眠くなるため、タイトルだけで選書。ベストセラーではあるようですし、今回下調べをした際に訳者が関美和さんが、たくさんの有名な本の訳に携わってるということもわかりました。ということできっと、楽しく読めるのではないかという期待値も上昇。インプット系の本のABDは、できるだけ本以外の情報も与えていくやり方の方がよさそうです。

 ざっと目を通した印象では、一つの章のなかにたくさんの節があるため、もしかしたらサマライズしにくいかなという印象をもちました。ですが、実際にABD本番でよく読んでみると、章ごとに一貫性があるので、問題にはならなかったです。

 ※ABDやってのサマリは、一番最後にまとめています。

●今回のスタイル

参加人数:7(ファシリテーター1名も参加)
合計時間:180分(時間内に完了)
ページ割:20~30ページ程度
オープニング:35分(コサマライズを1回実施)
コサマライズ:60分(コサマライズ2回目)
休憩:10分
プレゼン:一人3分くらい×7回
ギャラリーウォーク:3分×4回(ペア)
ダイアログ:20分(個人でのまとめ→小グループ)
クロージング:15分(個人でのまとめ→チェックアウト)

この構成の工夫としては、以下の3つ。
①人数的に、コサマライズを2回、最後の章は切り捨て
②ABDのあとに持ち帰るものを明確にする

●設計書

 本のボリューム、難易度、人数のバランスを見て、1章をみんなで分割して、短いコサマライズを行ったほうがよさそうと判断。そうすると2~8章まで7人なので各人が1章ずつ消化できそうです。もともと全部はやらなくてもいいかもと思っていたので、キャンセルが発生してもOKと割り切りで臨みました。

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●内容サマリ

・農耕による「余剰作物」によって経済が生まれた
 余剰を管理するために文字や債務が生まれ、債務を担保するために国家の信用力が生まれた。

・未来に利益が生まれることが前提で借金が可能に
 借金と金利が結びつくことで、お金がどこからともなくパッと出る魔法が生み出された。

・予言や予測によって経済は動く
 理論はあるが、人の心理が影響するので、経済学者の予想は外れ、経済の施策は占い師のロジックと大差がない。

・資本主義より民主主義
 資本主義では一握りの富める者が優位になる。民主主義なら一人一票で平等。経済について自分で考える力を持とう。

●オープニング

 オープニングで実施したのは、著者と訳者の紹介。
 特に著者の経歴と、著者が伝えたいことは何なのかが何となくわかるよう、ジェフ・ベゾスの資産規模を引用し、著者の「資本主義が民主主義を食い尽くす」という主張をクイズ形式で紹介。

 その後、人数や本の難易度を鑑みて、アイスブレークの延長として1章だけを人数割して、コサマライズとリレープレゼンを20~30分くらいで実施。

 最後に本書の「オープニング」のサマライズを事前に準備したので、それを披露して、著者の意図を共有。

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●コサマライズ

 今回も章タイトルだけ事前に貼りだしておきました。60分という時間をとりましたが、結構余裕があった印象です。また、貼りだしてのみんなの感想は「絵が多い!女性が多いから?」というくらい、イラストがたくさんでした(^^)

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●リレープレゼン

 3分を目標にプレゼンしてもらいました。前回のファクトフルネスでもプレゼンの時間も交代のタイミングも、ゆるーくしたのですが、そのほうが集中しやすい印象。

●ギャラリーウォーク

 二人一組のペアでギャラリーウォークで実施。最近の流行です。
 これまでこのペアギャラリーウォークは、1セッションあたり90秒から120秒でやってみたんですが、実はよく読み込めていない疑惑もあったので、180秒にしてみました。ただ、だんまりになってしまう時間もあったので、課題が残ります。

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●ダイアログ

 グループでのダイアローグの前に自分だけで振り返ってもらいました。今回は「大事に思ったこと」「新しい問い」を考えてもらいました。ここはもうちょっとどんな問いで振り返ってもらうかを考えたいなと思いました。

 ダイアローグは自分の振り返りをもとに、テーブルグループで実施。もう少し人数がいて3テーブルくらいあればワールドカフェにしたかったのですが、入れ替えが微妙な感じになりそうだったので、1回で終了。

●エンディング

 実は結構時間的な余裕がありました。なので、ダイアローグも少し延長。その後、最後のチェックアウトでは、1人ずつ今日の感想を手あげ制で言っていってもらいました。

●リフレクション

 いつも通り、PDF化して参加者に共有。
 本書のエピローグをやらなかったので、後日それを私がまとめて共有。
 別途、本書をベースにした勉強会を実施する予定なので、参加者によってはそちらにも任意参加。

●ABDサマリ

【プロローグ】
 自然科学(物理学、工学など)は、理論が洗練されるほど分かりやすくなる。経済学は、モデルが洗練されるほど、リアルから離れていく。

 この本を通して、より経済を身近なものにして、誰もが経済についてしっかりと意見が言えるようにまとめ、なるべく経済の専門用語は使わないようにした。

 私たちが考えなければならないのは、「資本主義」。「資本主義」という怪物との共存を考える。

【1章】なぜ、こんなに「格差」があるのか
 「なぜ、こんなに格差があるのか?」その理由は経済にある。 
 1万5000年前までさかのぼると、人類は、言語を8.2万年前に発するようになり、農耕を7万年前に始めた。この2度の大きな飛躍によって、経済の要素「余剰(余った作物)」が生まれ、経済が誕生した。

 「余剰」は、「文字」「債務」「通貨」を生んだ。
 文字は、倉庫に預ける穀物の量を記録し、債務と通貨は○○さんがどれだけの小麦を預けたか」を記録したのが始まり。ただし通貨は重いので持ち歩きできず、借用書という形で使われた。借用書を有効にするには「信用」が必要であるため、メソポタミアの時代には国家が借用書の内容を保証した。
 

 農耕は「新しい道具」と「余剰(余った作物)」を生んだ。
 農耕を効率化するために、新しいテクノロジー(道具)を生み出した。一方で余剰作物はウイルスや細菌を発生させ、生物兵器として使われることもあった。

 なぜ、アボリジニがイギリスを侵略しなかったのか?という問いの答えは、オーストラリア大陸は自然豊かで農耕が不要だったから。ユーラシア大陸は農耕が必要だったため余剰が生まれ、ウイルスも武器も支配者も生まれた。

 その理屈ならなぜ、アフリカから強国が誕生しないのか。
 答えは「形」の違い。アフリカ大陸は縦長。ユーラシア大陸は横長。横長だと場所が変わって活用できるもテクノロジーやノウハウはそんなに変わらない。

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 格差が発生するのは、寡頭制で説明できる。また寡頭制は、余剰が特定少数に集中し、それは代々連鎖する。 

 格差には2つある。「グローバルな格差」と「社会の中の格差」。支配者が余剰を独占するというのは思い込みで、当たり前に疑問を持ち続けよう。

【2章】市場社会の誕生
 経験価値(助け合い)から交換価値(売買)に変化し、市場社会が生まれた。市場社会の誕生は、労働者・生産手段・土地の三要素が商品となったことから始まる。

 航海手段の発達により、グローバル貿易が進み、羊毛→絹→刀→香辛料→羊毛…というサイクルが回り、羊毛に高い交換価値があることに気が付いた土地を所有している領主は、土地を囲い込み、農奴を追い出し、羊を飼う選択をした。こうして追い出された濃度は労働力をカネに変えるしかなくなった。さらに領主は土地を起業家(農奴)に貸すことによって土地を商品化した。

  産業革命がイギリスで起きたのは、以下の3つが挙げられる。
 ①貿易で豊かになるしかなかった
 ②中央集権により、農奴を簡単に追い出すことができた
 ③土地の所有者が集中していたので合意を取りやすかった

【3章】「利益」と「借金」のウエディングマーチ
 悪魔が考えた地獄より残酷なこと、それは借金と利益の結びつき。
 それまでの「助け合い」は満足感だが、「契約」は利子が動機になる。

 封建時代は、生産して分配されたが、市場社会は生産前に分配される。生産前の土地を借りるには、カネがいる。我々は借金の奴隷。
 将来の利益を生み出さなければならない「企業」にとっては、生産性を上げることがカギになる。競争社会において生産性を上げるには、テクノロジーへの先行投資などが必要となり、借金が必要になる。

 借金と利子の考え方は、メフィストフェレスを登場させた2つの寓話の比較で価値感の変化を知ることができる。1つは「フォースタス博士」もう1つは「ファウスト」。契約により、フォースタスもファウストもどちらも何でもできる力を得るが、幸せの絶頂で魂を差し出すもの。結末が異なり、フォースタスは地獄へ。ファウストでは贖罪により救われる。
 この違いは、借金の利子に対しての価値観の違い。フォースタスの時代は高利貸しが卑しい職業だったが、ファウストの時代は利子をつけることが当たり前になっていた。

【4章】「金融」の黒魔術
 起業家はタイムトラベラー。羊毛生産者は未来に発生する交換価値を、今にもってくる。銀行はツアーガイドで、カネをどこからともなくパッと出す。

 以前は、借金を返済できると確信した場合にカネを貸したが、今は確信できなくても貸す。これは急激に成長に対して、借金が膨れ上がったことと、銀行が被害をこうむらない方法が発明されたことが要因。
 起業家に50万ポンドを貸すとすると、銀行は利子と手数料もらう。50万ポンドは、銀行が5000人の投資家に100ポンドずつの債券を発行することで用意ができる。銀行は債券に預金よりも高い金利を付けるので、投資家は債券を買う。債券の金利は起業家からもらう利子よりも低いため、銀行は損をしない仕組み。これが魔法。

 しかし、魔法をたくさん使うと、社会全体が借金漬けになる。経済成長が借金に追いつかなくなり、やがて破綻する。
 この状況を国(中央銀行)が助ける。どこからともなく、パッと出す。

 焦げ付き=ご破算=債務免除
 ヴィクトリア時代は、借金を返し終わるまで投獄されたが、今は破産したら何もかも失うのではリスクが高すぎると、借金を一律に保護していない。

 公的債務は必要なもの。税金だけでは対応できない。公的債務は絶対安心で売れる。


【5章】世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界
 安い賃金でも働けない人をどう捉えるか…?

 「労働者」は「トマト」とは違う。
 起業家は、労働者に対して労働者そのものではなく、貢献した結果が欲しい。一方でトマトは、トマトそのものが欲しい。

 「労働者」を雇うことで増える売上と給料などの費用をどう考えるか(楽観的に見るか、悲観的に見るか)、経済全体の先行きの憶測に左右される。

 「マネー・マーケット」では、金利の引き下げがあったら、起業家は景気が悪いと判断し、雇わないという判断やお金を借りないという判断をする。そうすると景気が低迷する。経済は予言の力で動く。

 これらは、他人の心を推し量って行動を予想する人間らしさそのもの。
 今は転換期。これまでは人間と機械の調和だったが、これからは人間を機会に置き換えることになる。

【6章】驚くべき「機械」の呪い
 起業家は、機会が全てを解決するという夢を持っている。
 借金をして利益を出さなければならない。このカギは生産性の向上。しかし機械化は多くの製品やサービスを生み出し、イノベーションを求められるので、ストレスに…

 ミノス王の迷宮では、イカロスが自由を求め羽ばたいたが、蝋でできた翼は太陽に近くなるほど溶け、やがて墜落する。
 市場経済も似ているが、実際には競争相手が少なくなって労働力のほうが安いことに気が付き回復していく。

 巨大企業にとっての素晴らしい世界は、利益と力の独占。ライバル企業の労働者に自社の商品を売りつけること。今この力を持つのはグーグル、アップル、テスラ、アマゾンなどのテクノロジー企業。

 自動化の増加によって全体の収入のなかで労働者に向かう割合は減り、機械を所有する一握りの人たちのポケットに入るようになっている。
 一握りの企業の奴隷にならないためには、企業が所有する機械の一部を全ての人で共有し、その恩恵も共有する世界を作るしかない。

【7章】誰にも管理されない「新しいお金」
 第二次世界大戦のときの収容所という市場では、国籍別の裁定取引(アービトラージ)をして、利ざやで稼ぐ者がいた。
 最初は利ざやは大きかったが、だんだんと競合が出てくると仕入額が高くなり、利ざやは減る。そうこうしているうちに消費者も価値が分かってくるので「均衡」していく。

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 タバコは収容所では通貨の役割を果たした。腐らない、持ち運びできる、ため込める、スモーカーにとって必需品。マネーサプライとして赤十字。
 通貨の価値は相対的な希少性にとって決まるため、戦争がまだ終わらないと予想するのであれば、金利を上げる(利子であるタバコを1本から2本にあげる)。金利は物価の予測に左右される。
 戦争が終わると判断されれば、タバコは返されない。貨幣経済はそれが続くと人々が信頼できるかどうかにかかっている。

 ビットコインは総量制なので、マネーサプライに誰も介入できないため、危機が起きたときに和らげることが難しい。

【8章】人は地球のウイルスか
 『マトリックス』で、エージェント・スミスはモーフィアスに対し「人間は環境と調和しないウイルスと一緒」という言葉を発している。

 人間は自分たちが賢い、特別な存在だと思っている。
 自分たちが環境に適応するのではなく、環境を自分たちの望み通りに変えられると信じている。これは環境破壊である。

 ではどうすればいいのか。
 ・利益追求に制限をかける
 ・自然を交換価値に則らせ、管理する。

 これらを実現するために、地球を守るためには、民主主義である必要がある。民主主義では一人一票。富める者に複数票が与えられる(株式会社の議決権)資本主義では、富める者に有利な決断がされてしまう。

【エピローグ】進む方向を見つける「思考実験」
 もし、人間に究極の喜びを与えてくれる機械「HALPEVAM」があったらその世界に居続けたいだろうか。

 「満足なブタより不満足なソクラテス」とスチュワート・ミルがいうように、常に満足であると人間は成長も発展も返信もできない。

 支配者は自らの権力を維持するためにイデオロギーを作り使う。昔は宗教であり、今は市場社会。経済学が自然秩序になっているかのように見える。しかし、経済を学者に任せることは宗教と同じ。

 アフリカのアザンデ族は迷信と現実の違いを別の迷信で説明する。
 経済学は、不況の理由を競争不足のせいと言い、規制緩和を推進し、それでだめなら民営化を促進し、労働市場が問題だと言う。アザンデ族と何が違うのか。経済学は公式のある神学である。

 内側だけだと、支配者のイデオロギーの中で思考が止まってしまうので、外の世界からの視点を持ち続けよう。

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satoru shoji

オリコングループの(株)oricon ME 顧客満足度調査事業本部長。 アクティブ・ブック・ダイアローグ協会認定ファシリテーター。MBA修士。

【実践】アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)のやり方

みんなで、楽しく、短時間で、記憶に残る読書法「アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)」を実践した記録です。ファシリテートする方向けに参考になればとアップしています。全体的なやり方や進め方(コンテンツ構成、時間配分、フォローアップ)の参考になると嬉しいです!
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