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■アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)で読む『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

 2か月ほど前ですが、六本木で毎月開かれているABDコミュニティで『ファクトフルネス』をを体験してきました。気になっている本で、読みやすいという話もありましたが、機会があったのでABDでまずは済ませてしまおうという安易な考えからの参加です(^^)

●今回のスタイル

参加人数:14人(ファシリ2名も参加)
合計時間:225分(3時間45分)
ページ割:章、コラムごと。一人20~30ページ
オープニング:20分
コサマライズ:45分→60分くらい。
プレゼン:一人3分→合計で55分くらい。
ギャラリーウォーク:15分
ダイアログ:60分(小グループ→全体)
エンディング:15分

 多様なバックボーンを持つ方々と一緒に取り組みました。参加者に多様性があるからか、ダイアローグで出てくる話がとても新鮮でした。やはり対話の時間が重要だということを実感します。

 参加人数も多く、ダイアログはたっぷりと時間をとりました。
 まずワールドカフェ。3人一組になり、10分くらいで組み合わせを変えての対話。人に話すことによって自分が感じたことが言語化されつつも、色々な人の感じたことを自分にも落とし込んで発展していきます。また、「さっきこんな話が出た」なども対話を促進させる材料になります。

●読んだ本

 『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

●著者

・ハンス・ロスリング
 医師、グローバルヘルスの教授、そして教育者としても著名である。世界保健機構やユニセフのアドバイザーを務め、スウェーデンで国境なき医師団を立ち上げたほか、ギャップマインダー財団を設立した。
ハンスのTEDトークは延べ3500万回以上も再生されており、タイム誌が選ぶ世界で最も影響力の大きな100人に選ばれた。2017年に他界したが、人生最後の年は本書の執筆に捧げた。
・オーラ・ロスリングとアンナ・ロスリング・ロンランド
 オーラはハンスの息子で、アンナはその妻。ギャップマインダー財団の共同創設者。オーラはギャップマインダー財団で2005年から2007年、2010年から現在までディレクターを務めている。
 アンナとオーラが開発した「トレンダライザー」というバブルチャートのツールをグーグルが買収した後は、グーグルでオーラはパブリックデータチームのリーダー、アンナはシニア・ユーザビリティデザイナーを務めた。2人はともに功績を認められ、さまざまな賞を受賞している。

●内容サマリ

①ファクトフルネスとは事実に基づく世界の見方

データで世界を正しく見て、物事を正しく判断する。

②人間にはドラマチック本能がある

ネガティブ、恐怖…などの本能によって人間はリスクを回避しようとする。

③世界はよくなっている

データを見ると、戦争は減少、自然保護や識字率などは増加。

●章ごとの要約(あくまでABDベース)

イントロダクション

 「factfulness(ファクトフルネス)」は、著者であるハンス・ロスリングと、息子のオーラ、その妻のアンナの3人が議論と共同作業を重ねてできたものである。ハンスは熱意と好奇心をもって取り組み、オーラとアンナは見やすさを重点におき、異なる才能・知識・視点をもって考え出された。

 「13の質問」を用意し、回答を得たところ、科学者やこの本を読むような層は、チンパンジーよりも正答率が低かった。
 これは、1990年以降、知識不足であったり知識のアップデート不足で、人が悲観的になってきていることが要因。

 人は脳の機能として、ドラマチックな世界の見方をしてしまうため、事実に基づく世界の見方を提唱する。

 ファクトフルネスを習慣化することで、世界を正しく理解して判断力を上げ、何を恐れて何に希望を持てばいいのかを見極めることができる。

第1章 分断本能 「世界は分断されている」という思い込み

 「金持ちと貧乏」、「先進国と途上国」。私たちはグループ分けをしたがるが、本当にそのように分断されているのか、データを使ってみてみる。

●質問「現在、低所得国の女子の何割が初等教育を終了するか?」
 A:20%
 B:40%
 C:60%
 正解率は7%で、これはチンパンジー以下の正答率。

●質問「世界で最も多くの人が住んでいるのは?」
 A:低所得
 B:中所得
 C:高所得
 私たちはあの人たちを何と呼ぶだろうか。

 分断本能を抑えるには、平均の比較、極端な数字の比較、などデータの見方を知ること。

 世界を理解するために、所得レベルで4つのグループにわける。
【レベル1】1日2ドルまで。10億人。極度の貧困。
【レベル2】1日8ドルまで。30億人。病気に罹ると身の回りのモノを売らなければならない。
【レベル3】1日32ドルまで。20億人。冷蔵庫が使え食料を保存可能。
【レベル4】1日32ドル以上。10億人。3ドルなんて、はした金。

第2章 ネガティブ本能 「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み

 世界はだんだん良くなっている。

 シリアの内線、海洋汚染、住宅バブルの崩壊、温室効果ガス…
 これらが取りざたされるが、 「世界はだんだん悪くなっている」というのは、とんでもない勘違い。真実に基づき世界への理解をもとう。

●質問「貧困はどう変化している?」
●回答「貧困はすごく減っている」

 1800年には85%が貧困と呼ばれる条件に入っていたが、貧困率は1966年に50%に、2017年には世界の人口の9%にまで減っている。でもこの事実を答えられる人は10%未満。

●質問「平均寿命はどう変化している?」
●回答「どんどん伸びている」

 1800年には31歳だった平均寿命は、2017年には72歳にまでなっている。高学歴の人ほど不正解。

 ところで、著者はスウェーデン人だが、「エジプトで生まれた」と言える。2017年のスウェーデンは健康水準がレベル4の領域にいるが、著者の生まれた1948年には今のエジプトと同じ水準にあたる。

 このように世界はどんどん良くなっている。
 石油事故や戦争などは減り、自然保護や識字率や女性参政国は増えている。

 なぜこのように勘違いをするのかと言うと、人間にはネガティブ本能があるから。ネガティブ本能とは…
 ①あやふやな過去の記憶
 ②ジャーナリストや活動家による偏った報道
 ③以前に比べたら良くなっていると言いにくい空気

 暮らしが良くなるにつれ、悪いニュースが目につくようになり、「世界は全然進歩していない」と思う人が増えた。ネガティブなニュースは圧倒的に耳に入りやすいのに、良い出来事、ゆっくりとした進歩はニュースになりにくい。
 ただ最近では、悪いニュースでったも必ずしも悪い出来事ではなく、監視の目がより届くようになったという証でもある。

第3章 直線本能 「世界の人口はひたすら増える」という思い込み

 世界の人口は、ひたすら増えている!というとんでもない勘違い。
 人口は増えている。しかし、どのように増えているのか。

 ●質問「子供(15歳未満)の人口は現在20億人いる。国連の予測で2100年にはどのくらいになる?」

 答えは、20億人。子どもの数は増えない。
 女性一人当たりの子供の数は、レベル2以上の世帯だと平均2人だが、レベル1だと5人いる。これは、病気でなくなるので、たくさん産まないと子供に畑や仕事を手伝ってもらえなくなる。 

 貧困を救うことで、人口が増える(=持続可能な世界が実現できなくなるのでは)という質問を受ける。しかし、極度の貧困が子どもを増やし続けることに目を向けることができれば、人間の尊厳を傷つけられるような状況から救い出し、病気でなくなる子供を減らすために全力を尽くすべきではないか?

第4章 恐怖本能 「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み

 私たちの頭の中は、「めったに起きないこと」で埋め尽くされている。
 恐怖本能を刺激する、世界は危険であるという情報で溢れるが、現実に今の時代は人類史上最も平和で安全である。

 私たちの頭の中と外の世界の間には「関心フィルター」という防御壁がある。関心フィルターは、本書で取り上げる10の本能の穴のみ。メディアはこのことを理解して、このフィルターを通り抜ける情報だけを流そうとする。

 よくわからないまま恐怖でパニックになるのではなく、ファクトフルネス(事実に基づく世界の見方)に沿って、データで現実を見て、その危険性と頻度からリスクを把握しよう。
 例えば、テロで死亡する確率よりも、酔っ払いに殺される可能性のほうが50倍も高い。

第5章 過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み

 物語の裏にある数字を見ることが大切。同じくらい数字の裏にある物語を見るのも大切。過大視本能は「数字の大小への勘違い」と「一つの実例を重視しすぎる」という2種類の勘違いを生む。メディアはこの過大視本能につけ込む。

 例えば、同じ日に2つの出来事が発生した。
 ①女性が男性に斧で殺された(DVだった)
 ②男性が狩猟中にクマに襲われて殺された
 
 データで見れば、スウェーデンでは、
 DVによる死亡事件は30日に1回。
 クマによる死亡は100年に1回。

 メディアはクマの事件を取り上げて、斧の事件はほとんど取り上げなかった。どちらも痛ましい事件だが、頻度の差は1300倍。より多くの命を救いたければクマよりもDVを防がないといけない。

一つしかない数字をニュースで見たら、必ず比較と割り算で考えよう。
 ①どの数字と比べているのか
 ②1年前や10年前と比較してどう違うか
 ③似たような国と地域と比べたらどうか
 ④その数字で割るべきか
 ⑤合計したらどうなるか
 ⑥一人当たりにするとどうなるか

第6章 パターン化本能 「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み

 人は、一つの事例を全てに当てはめてしまう。
 例えば、気を失った兵士の安全を高めるためには、うつ伏せにさせる。しかし、赤ちゃんをうつ伏せにするのは逆に危険である。
 また、自分たちの環境が普通だと思っていないか。私たちが普段使うエレベーターは挟まっても開くが、もしセンサーのないエレベーターがあったら、挟まっても開かないのだ。

 また、見逃しているところにビジネスチャンスがあるのだとすれば、それは誤ったパターン化であり、見当違いな行動につながる。

 自分とそれ以外という分断をして、自分以外はバカだと思っていないか。
 過半数という範囲には、60%も90%もひとまとめにされるが、本当に同じ意味なのか?
 このパターン化本能を克服するためには、
・実際に現場を見る
・データで数字を見る
・暮らしぶりは文化ではなくお金が一番影響する
これらを考えることで適切な分類が分かる。

 

第7章 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み

 変わらないことは楽である。人間の生き残りに適した考え方である。
 宿命本能とは、もって生まれた宿命によって人や国や宗教や文化の行方は決まるという思い込み。

 ●質問「世界中の30歳男性は平均10年の学校教育を受けている。では同じ年齢の女性は?」
 ●回答「9年」

 アフガンなどの残酷なニュースがあるものの、女性の教育が進んでいないなんてことはない。北欧以外では男女平等が進んでいないと思い込んでいないか?

 アフリカは世界に追いつける。
 すでにチュニジア、アルジェリアなどでは平均寿命が世界平均72歳を上回っている。サハラ以南の50か国ではスウェーデンを上回るペースで乳幼児の死亡率が改善している。

 西洋の発展はそのままではない。
 IMFはレベル4の国々の経済成長率を3%から2%に引き下げた。その一方で、アフリカやアジアの成長率は5%と認めている。
 
 宿命本能をどう抑えるか?
 ①小さな進歩を追いかける
  毎日の少しの変化は数十年で多いな変化に。
 ②知識をアップデートする
  社会科学の知識はすぐに賞味期限切れになる。テクノロジー、国、文化も刻々と変化している。
 ③おじいちゃんおばあちゃんと話す
  今の価値観と昔の価値感を比べる
 ④文化が変わった例を集める
  例えばアメリカの同性婚支持率の変化(27%から72%に)

第8章 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

 世の中の様々な問題に一つの原因と一つの解答を当てはめてしまう傾向がある。これを単純化本能という。
 その原因は、政治思想や専門知識。自分の考えを裏付ける例を集めて単純化しようとする。専門家でも自分の領域外では普通の人以下である。活動家の多くは自分が注目する社会問題を大げさに語り、進歩に目がいっていない。
 専門知識があるととにかくそれを使いたくなるが、あくまで役立つのは問題解決の一部分だけ。 

 数字いじりだけで導いた結論は疑うこと。
 世界の全てを数字で表すことはできない。「自由市場」や「平等」といった考え方はそれだけに注目すると危険。

第9章 犯人捜し本能 「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み

 ものごとには単純明快な理由があるという勘違いが犯人捜し本能。
 誰かを責めたいという本能は、本当の世界を見ずに思考停止し、他の理由を探そうとしなくなる。深刻な問題は、問題を引き起こすシステムを見直さなければならない。(うまくいった時も誰か一人の功績にしたがる)

 人は自分の思い込みに合う悪者を探そうとする。
 ・悪いビジネスマン?→悪知恵で儲けてるに違いない!
 ・嘘つきジャーナリスト?→偏見を押し付けている!
 ・外人?→あの国のせいだ!

 物事がうまくいったときは、誰か一人のおかげではなく、社会基盤とテクノロジーのおかげ。一人ではなく名もなきヒーローや発明がある。

 では誰を責めたらいいのか?
 一人の人やグループではなく、システムに注目する。つまり犯人ではなく原因とその仕組みを見つめる。

第10章  焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

 「いつやるか?いまでしょ!」
 恐れに支配され、時間に追われて最悪のケースが頭に浮かぶと、人は愚かな判断をしてしまう。先の長い課題に取り組んでいる活動家は「焦り本能」をうまく使っている。「今すぐ決めなければならない」と迫られる。

 例えばモザンビークで、、、
 原因不明の感染症が発生→感染拡大しないよう道路封鎖(バスの停止)→住人は移動のためにボートを使用→ボードが波にさらわれ全員が溺れた
 
 「今すぐ決めなければならない」という自分の焦りに気付くことが大事。
 まずは、深呼吸をしよう。データにこだわろう。未来予測は不確かであるので、占い師に気を付けよう。そして過激な対策に注意しよう。 
 その対策は証明されているのか。効果測定はされているのか。

第11章  ファクトフルネスを実践しよう

 ファクトフルネスで命拾いした話がある。
 ザイールでコンゾという病の調査で採血をしようとマカンガという村に行った際に、村の人々から「私たちの血を盗むなんてとんでもない!」と言われ殺されそうになった。
 ある女性が、「はしかのワクチンができた方法」「自分の孫がコンゾで手足が不自由になった」「あの病気を止められるかもしれない」という演説で無事に採血を行えた。

 この女性は、ドラマチック本能(恐怖・パターン化・犯人捜し・焦り)を理解し、冷静に道理を説き、説得を行った。

 では私たちは、ファクトフルネスをどう実践したらいいのか。
 教育では、最新の事実に基づき、4つのレベルのグループがそれぞれどういう生活をしているのかを教えるべき。そして、知らないことは知らないという謙虚さと、新しい情報をアップデートする好奇心を持つことを教えよう。
 ビジネス、ジャーナリスト、自組織においても、定期的に知識をアップデートすること。

 まずは質問から。それが最初の一歩。

今回のABD実践の感想

 ファクトフルネスは全部で11章。
 一人当たりだいたい30ページくらいで文字も大きく、読みやすい文章でもあるため、人数さえ集まれば実施難易度は優しいです。しかも章ごとに見開き左側のページからスタートするので、本の裁断もABD向き。
 対話も多くの人が自分の経験と照らし合わせながらできるないようでもあるので、活発に意見がでてきます。今回は「この本を読みきる」ということがベースにありましたが、何か課題解決型のABDでも使えそうな気がしました。情報過多気味の現場など。



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satoru shoji

オリコングループの(株)oricon ME 顧客満足度調査事業本部長。 アクティブ・ブック・ダイアローグ協会認定ファシリテーター。MBA修士。

【実践】アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)のやり方

みんなで、楽しく、短時間で、記憶に残る読書法「アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)」を実践した記録です。ファシリテートする方向けに参考になればとアップしています。全体的なやり方や進め方(コンテンツ構成、時間配分、フォローアップ)の参考になると嬉しいです!
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