ミミズコンポストはじめました。その3

なぜミミズがニンジンの皮を食べないのか理由がわかった。ニンジンの皮が腐っていないからだ。ミミズと一口に言ってもその種類は様々だ。大きいミミズもいれば小さいミミズもいる。晩年のダーウィンはミミズが巣穴に葉っぱをどのように引き込むかを研究していたらしい。そのミミズは日本には生息していないかなり大型のもので、地中深くに住み、地表に落ちている葉っぱを住処の穴の中に引き込み食べている。一方、俺が飼っているミミズはシマミミズと言って小型の部類に入り、地表の腐植土を食べそこをすみかにし、地中深いところにはいない。シマミミズは生ゴミを食べるというよりも土の中の有機物を食べると言った方が正しいようだ。

俺の飼育しているミミズ達がニンジンの皮を食べないのは、好き嫌いの問題というより単に大き過ぎたのだ。生ゴミが腐ってドロドロになるか土の中に分解されなければミミズは餌を食べることが出来なかったのだ。ニンジンの皮を食べず新聞紙を食べていたのは、湿気を吸ってしなしなになった新聞紙が柔らかく食べやすかったからだったのだ。
俺は少しだけミミズの事を理解したような気がした。

水分を吸ってしなしなになった新聞紙を避けてミミズの様子を伺う、という事を繰り返していると、だんだん新聞紙がクシャクシャに丸くなってきた。いちいち平らに直すのは面倒なのでくしゃくしゃに丸くなったまま土の上に置いておいた。丸くなっても湿っているのでペタッと押してやれば平らになる。問題ないだろう。


そんなある日、いつものようにミミズ達に何か変わりがないかと様子を見ようとクシャクシャに丸くなった新聞紙を手でつかみ持ち上げた。その瞬間、クシャクシャに丸くなった新聞紙の隙間に挟まっていたミミズが転がり落ちてきて、危うく俺の手に触れそうになった。湿った新聞紙はミミズにとっては快適そうだな、もしかしたら隙間にミミズが挟まっているかも知れないな、と警戒していたにも関わらず、いざ想像していた事が実際に起こると、俺は思わず叫び声をあげそうになった。もしミミズが手の平に

ぽとっ

と落ちてきていたら、叫び声をあげそうになったどころでは済まなく、実際に叫び声をあげていただろう。ミミズのことは好きになって来たけど、触れたくはない。

ミミズを飼育してだいぶ慣れてきたとはいえ、それはあくまでも外見の気持ち悪さだけであって、感触の気持ち悪さはまた別の話だ。感触の気持ち悪さと言っても、まだミミズに触れたことはない。もしかしたら実際に触れてみると、ひんやりとしてぬらぬらとテカったミミズの身体は、意外と気持ち良かったりするのかもしれない。さらに慣れてくると、バスタブをミミズで一杯にし、素っ裸でその中に飛び込み、タオルを頭の上において 鼻歌を歌ったりするようになるのかもしれない。しかし、まだそれを試すことはしない。おそらく生涯そんなことはしないだろう。ミミズはこんなにも気持ち悪いのだから。

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