見出し画像

祭りの記憶

ここ1年ぐらい、東京の高円寺という街によく行く。

この高円寺という場所は、個性的な古着屋さんや雑貨屋さんがたくさんあって、「サブカルチャーの街」というイメージで知られている。

そんな高円寺は「お祭りの街」でもあるような気がする。もちろん実際にお祭りは多いんだけど、それ以上にお祭りが好きそうというか、どことなくお祭り気質な人が多いと思っている。

駅前の広場へ行ってみると、昼でも夜でも関係なく、大道芸のようなパフォーマンスをしている人や、ギターで弾き語りをするミュージシャンとか、お祭りに出てきそうな人がたくさんいる。

そして、高円寺がほんとうに「お祭りの街」になる瞬間がある。毎年8月下旬におこなわれる「阿波おどり大会」の日だ。

「阿波おどり」といえば徳島のお祭りだ。だからこのお祭りはもともと高円寺にあったものではない。

今から半世紀以上も前に、この杉並区で「町おこし」のために始まったイベントが、いつの間にか高円寺を、そして東京を代表するような、大きなお祭りになった。

今では、高円寺から徳島の踊りに参加する人、逆に徳島から高円寺に駆けつける人や、海外から阿波おどりにやってくる人たちだっている。

阿波おどりという一つのスタイルが、いろいろな街のいろいろな人達をつなげてきたのだ。そして、それはきっとこれからも続いていくだろう。

高円寺に住む人たちは、ひょっとするとこの「阿波おどり大会」のために生きているのかもしれない、と思うことがある。

地元の人たちは「連」と呼ばれる阿波おどりのチームに参加して、年に1回それもたった2日のお祭りのために、一年中踊りの練習を欠かさない。

踊らない人たちでさえも、8月のこの時期が近づくにつれてそわそわし出したり、お祭りのことを考えはじめて落ち着かなくなってくる。

そしてお祭り当日になると、みんな街へ出てきて踊りを見に行くのだ。

この阿波おどりもそうだけど、お祭りを見ていると、ふだんはなかなか気づかないような「街の熱気」のようなものを感じられる気がする。

いつもは平和で静かな街だけど、お祭りの日になれば、ふだんの生活を忘れて心の奥底にしまいこんだ熱い気持ちをぶつけることができる。

熱狂的なのは踊り手だけじゃない。見る人たちだって真剣だ。すばらしいパフォーマンスには大きな拍手と歓声がおくられる。

ネットを見て、それぞれ好きなものだけをみて生活することができるこの時代。お祭りという同じものをみんなで共有して、みんなで盛り上がることができる体験はとても貴重だと思うし、それができるような街はとてもいい場所だ。

そして、そんな街の写真をこれからも撮り続けたいと思っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?