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売春するしかない


「売春するしかない」
そう思った事が一度だけある。

まだ若かった、、、20代後半。
切羽詰まっていた。

会社に勤めてはいたが、薄給で。
社会保険・年金も未加入で
残業手当もつかない。
今ならブラック中のブラックだ。

“働けど働けど我が暮らし楽にならず〟

仕事は目が回るほど忙しく、
ほとんど毎日朝帰りだ。
睡眠時間が“1週間で8時間〟はザラで。
交通費は出ないのでタクシーは使えない。
片道1時間強をかけて自転車で通った。

社長だけがいい思いをしてた。
アルマーニを身にまとい、
高級外車に乗り、愛人もいた。

「ひとつのことで成功した人って
何をやっても成功するんだよ」が口癖。

では、なぜ辞めなかったのか、
そこで学ぶものがあったので
必死に辛抱した。

お金がなくて、生活が苦しくて
つい魔が差した。
“立ちんぼ〟だ。

もう売春するしかない。
短絡的だが、そう思ってしまったのだ。

若いし、まだ需要があるだろう・・・
ある日の夜、“立ちんぼの聖地〟と言われる
通りの近くまで行った。

ふと我に返った。

後悔するかもしれない。
この一線だけは超えてはならない、
第六感のようなものが
ギリギリ踏みとどまらせた。

その後、貧困からどうやって
脱出したのか覚えてないが、
しばらくして、その会社を辞めて独立した。

あるパーティで当時の社長に偶然会った。
その時にこう言われた。
「キミぐらいの小者、
僕は簡単に潰せるからね」
と。

脅しか・・・せせら笑いをしていた。

この男のもとで何年間も
粉骨砕身、働いてきたのか、私は(涙)

応援するどころか、
「なんて、◯ン◯マのちっせー男なんだ」
と思った事は確かで、嘆息した。


誰にも弱音など吐けなかった。
だからと言って
消費者金融にも行かなかった。

あの頃は本当に辛かった。
情けなくて、天井見ながら
涙を流したのを昨日のことのように
よく覚えている。

今でも、どんなにお金がなくても
あの頃の事を思えば
大したことはないと思える。

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