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50代のおばさんがうつ病になりました。⑥

 こちらの心療内科は一度、別件で来たこともあったので、受付のスタッフや、医師の印象は良かったことを覚えている。相性が合わないところには通えない。
 初診の手続きをして待合室で呼ばれるのを待つ。予約制のため、混雑もなく静寂が心地良かった。
 目を瞑っているのが本当に楽だ。眠い訳ではないのだが、目を瞑っていたいのだ。目から入る情報が非常に煩わしい。

 やがて私の名前が呼ばれた。診察室のドアから医師がニコニコと笑顔で迎えてくれた。優しい笑顔に安心する。医師もきっと患者を不安にさせないように心がけているのだろう。

 さて、診察に入る。ここ最近の騒動を大きな目眩のところから、大きな頭痛により脳外科に救急車で向かったこと等説明する。結局のところ異常はなく脳外科の医師からストレスと言われた等を話す。
 医師から簡単に生活環境、成育歴(極々簡単に)を聞かれた。そして、疲れはいつからあるか、と聞かれたので滋養強壮剤を飲みだしたのは最近だが、子どもを産んでから疲れない日はないとも説明した。
 楽しみも今はない。それどころじゃない。日々忙しさに追われている。疲れてしまって何もする気になれないという話しにもなった。促されるまま答えていったが、中には愚痴めいたものまで吐露してたように思う。とにかく私の日々の大変さをわかってほしい。同じ女性だからわかってくれるよね。医師はうんうんと頷き、私を認めてくれてる気にさせてくれた。

 そして、医師が出した診断は
『うつ病』だった。
私が言葉も出ず「?」という顔をしていると、「大丈夫。恥ずかしいことではないですよ」
いやいや、そうじゃなくて。
「いや、あの、まさか自分がうつ病だなんて信じられなくて。すごく落ち込んでいる訳でもないし」
「カンネルさんが、おっしゃっていた話しは典型的なうつの症状ですね」
「えぇ〜⁈」とても自分がうつ病だなんて信じられない。

 もし、お休みできる環境が作れるならその方が回復も早い、とのことなので1ヶ月休業することにして治療に集中することにした。集中して一気に治してやる!と意気込んだ。

 自覚症状も感じず、正直うつ病だなんて信じられない私。だって落ち込むことさえ、もう無くなったドライな私。そんな私がうつ病⁈

処方された薬は

❶ミルタザビン錠
 抗うつ剤
❷アルプラゾム錠
 また大きな目眩が起こった時
 不安定な時用に精神安定剤

この2種類。

❶ミルタザビン錠を寝る前に飲むことから始まった。ご存知の方もいると思うが、この薬の特徴としては、胃の調子を良くしてくれる。そして、3日程の服用で効果は実感できると医師は言っていた。
❷アルプラゾム錠は頓服薬として冷蔵庫保管した。

 その夜、家族に私が『うつ病』を患ったことを打ち明けた。
 しばらくは仕事を休業することや、アルバイト先にも迷惑をかけるのでやめる方向でいること等。
 とにかく一気に治して、早く日常生活を送れるようにするから!と家族に伝えた。
 家族はまさか家族に『うつ病』患者が出てしまうとは、と神妙な顔つきで私の話しを聞いていた。
 優しく実直な長女は、朝のお弁当作り、風呂掃除、夕食後の皿洗いを申し出てくれた。お弁当作りには異論はない。ただ、風呂掃除や、皿洗いに関してはちょっと素直にお願いしたい気持ちにはなれなかった。そこが私のダメなところである。気になって他人に任せられられない領域がある。私と同じように作業を進め、仕上がりも私と同じようにできていないと嫌なのだ。
 今まで家族に家事をやらせなかった訳ではない。でも、汚れが残った皿が水切りカゴの中でみつけてしまったり、風呂掃除に関しては浴槽内に少しヌルつきが残っていたり、浴槽の蓋に泡が残っていたりすると非常に気になるのだ。洗濯の物干しをお願いした後、干し方が気に入らず全て私流に干し直したこともある。
 潔癖症という訳ではない。自分流でやらないと気が済まないのだ。そこは目を瞑らないと自分が大変よ、と友人に言われ、口や手を出さないようにして、だいぶ我慢が出来るようになった。ここは、少々の汚れのは片目を瞑って任せることにした。

 食欲も全然湧かないし、ここのところの病院通いでぐったりだ。
 早速頂いた薬を飲んでさっさと眠ることにした。
 時間は20:00ちょっと前。この時間帯が私の就寝時期の定番となった。



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