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50代のおばさんがうつ病になりました。⑨

 ホームセンターでの買い物で、うつ病の症状を改めて自覚した。それからが本当のうつ病との戦いとなった。
 最初の診察から二週間が経ち、二度目の診察の日がきた。
 医師の言う通り三日で薬の効果を感じたことや、ホームセンターでの出来事や、以下に綴った出来事などを話した。
 日々の食材の買い出しに行けば、何を買えば良いのか頭が回らず、カートのハンドルを握りながら途方に暮れる。
 テレビっ子の私が、テレビを観られなくなっていた。朝の情報番組ぐらいは時計代わりにつけてみるのだが、情報量が多すぎて気分が悪くなってくる。とにかく画面も音も煩わしい。ならば音楽をと思ってApple musicを聴くも、これまたキツイ。
 送られて来る封書に目を通そうと、開けてはみても文字が読めない。目が見えない訳ではない。読む集中力がないという感覚だろうか。ということは、大好きな読書もできないということ。
 自宅周辺は住宅街なので、人の往来も多くはないが、大きなターミナル駅やショッピングモールに行くと人混みに酔ってしまう。レストランのメニューは、美味しそうな料理画像でわかりやすく作られているが、それすらも見ていられない。料理画像が勢いよく目に入ってきて、選べる状況ではない。
 そして、常にぐったりとしていて家にいる時は横になってることが多く、結果、外に出ることも減ってしまった。
 そして、今までシャキシャキ何でも出来ていた私が、何も出来なくなってしまったことに落ち込みも激しかった。
 とにかく常にぐったり疲れている。家事を少しやっては横になる、の繰り返し。

うつ病だと病名を告げられた途端に、まるで暗示にかけられたようにうつ病の症状が顕著に現れた。

 「今はそれで良いんですよ。焦ってはダメ。まずは、好きなことをまたやりたくなる意欲を底上げしていきましょう。食欲はどうですか?」
と医師は私を励ましながら問う。
 実は食欲は増してしまった。ミルタザビン錠の、胃の調子を整えてくれるという効果のせいだろう。常に何か口寂しく、用もないのに日に何度も冷蔵庫を開けて、すぐ食べられるものは無いか眺めてしまう。
 その旨を話すと、処方を変えようということになった。「意欲の底上げをもう少し強く出していきたいと思います。前までに出来ていた趣味がまた楽しく出来ることを目指しましょう。そして、少し精神的にも不安定な部分も楽にしていけると良いと思いますが、どうでしょうか。」
 私に異存はなかった。抗うつ剤はレクサプロ錠に変わり精神安定薬ロフラゼプ酸エチル錠と不眠時服用にゾルピデム錠も追加された。
そして、どうしようもなく辛くて悲しいとか、動悸がする程苦しくザワザワと胸騒ぎがする時用はアルプラゾム錠を服用して構わないとのことだった。

焦らない。好きなことがまた出来る自分に戻る。目標はこれだ。本当の自分を取り戻すこと。

 目標は一日も早い仕事復帰と考えていたが、それはまだ先だ。
 私は一ヶ月で仕事を復帰するという目標は完全に下すことにした。自分を取り戻さずして仕事の復帰はありえない。
 もちろん、経済的にも余裕がある訳ではないので、それを考えると不安感に押しつぶされそうになる。そんな時は「どうにかなる。どうにかなる」と自分に言い聞かせる。それでも不安でどうしようもない時はアルプラゾム錠を飲んで寝ることにする。ダメな自分を責め、泣きながら。目が覚めた時には少しは気分が落ち着いていることを祈って。






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