「霧の中」

「霧の中」佐川一政

パリ人肉事件: 1981年、フランスで起こった猟奇殺人事件。日本人留学生の佐川一政が、友人であるオランダ人女性を射殺し、食べたというもの。犯人はその後精神鑑定の末に責任能力なしとされ釈放。

勾留中に実際の事件の詳細をその犯人自らが小説化するという異例の作品が本作です。ずっと積んであったのですが、氏の訃報が先日あったのできっかけに読み切りました。

序盤は冴えない留学生の周囲に馴染めぬ苦悩や片想いの進展などが共感性羞恥たっぷりにつづられているのですが、中盤になって過去の恋愛遍歴を振り返り始めたあたりから、ん??って。
徐々に著者の異常性が浮き彫りになっていきます。幼少期より、被害妄想と自尊心が歪に膨れ上がっていきながら、明らかに性欲と食欲が混ざり合っている性質を自覚するに至ります。比喩でもなんでもなかった「食べてしまいたい」。どうやら強姦未遂事件が親によって揉み消されていたあたり、家庭環境もこのモンスターを育てた要因となったのかもしれません。そういうふうにして序盤を読み返すと、終始一貫したホラーサイコパスであったと気付かされます。
そして、、終盤。
これ以上はここに書けないし描かない方がいい。

これが本当であろうと演技であろうと、
どちらにしてもドス黒い邪悪がここにあります。

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