「古代文字の解読」

「古代文字の解読」
高津 春繁/関根 正雄/永井 正勝

“発音も不明な謎に満ちた文様ーエジプト聖刻文字、楔形文字、ヒッタイト文書、ウガリット文書、ミュケーナイ文書。主要古代文字が解読されるまで推理、仮説、検証を重ねた、気の遠くなるような忍耐と興奮の軌跡を、言語学と旧約聖書研究の泰斗が平易かつ正確に描写。数千年を超えた過去との交流を先人とともに体感できる一冊。”

付箋を貼りまくって収集つかなくなっちゃう本って二種類ありまして。
一つが感動したり感心したり大事なこと宝箱状態で興奮のうちに貼りまくる系。
もう一つは、重要なことに触れている感覚はあるんだけれど難しすぎてとりあえず一歩一歩自分の現在地を付箋で確かめながらじゃないといつのまにか寝落ちしちゃう系。
本書は間違いなく後者です(笑)

ヒエログリフや楔形文字はなんとなーーく読めたりするんですが、その解読の歴史は本書で初めて知ることも多かったです。考えてみりゃそうなんですが、一種類の文字が一種類の言語に対応している、ということは必ずではないわけで。解読に至るスタイルも、ポーの黄金虫よろしく純粋に統計的なアプローチがあったり、神話や歴史を重視する流派があったり、、、。生涯かけてたった一文字の読みを確定させていったり、かと思えば素人のひらめきが思わぬ突破口を拓き、、ながらも専門性の無さから紆余曲折したり。。先達を否定したり肩に乗ったりしながら一歩ずつ真実に近づこうとする知の連鎖は、サイモンシンの「宇宙創生」の科学者達の歩みを彷彿とさせます。

楔形文字にも有名なバビロニア楔形文字の他にも何種類もあったり、時代と共に変化したりしてもはや魔境です。それは粘土板に棒を押し付けて書くか引っ掻いて書くかの違いから生まれているとかなんとか。
ヒエログリフなんて、ロゼッタストーンを見つけて万事解決!くらいの印象でしたが、「絵から文字になったのだから中国漢字からの影響を受けているのだろう」なんて説がそれなりに主流だった時代もあったりして、カオス

周囲の国から影響を受けた読みと独自の読みが混在したり、意味を離れて音だけを表す文字があったり、何気にヨーロッパの古代文字達は、中国語というより日本語の発想だと理解しやすいのかもしれません。音読み訓読みカナ文字混在っていう発想は現代西洋だと難解なのかもしれませんね。

繋がってないようなものがふと繋がる電撃、
沖縄のめんそーれが「御免候」と繋がっていると知った時のような、世界が開ける感覚。
“ロマン化劇化などせずとも、事実そのものが既に人の心を躍らせるものを蔵している。”
これ読んで!とは言いにくけれど、
これ読んだ!と言った時の気分は最高、
そんな一冊です。

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