「乱歩ワールド大全」

「乱歩ワールド大全」野村宏平

“探偵は客席からみません。
いつも楽屋の方から裏側を見ているのです。”

という乱歩作品自体を楽屋裏から覗く解説本です。全乱歩怪人、全乱歩トリックの分類表などはまさに(実用性ゼロで)永久保存版。
ようこそ犯罪者たちのワンダーランドへ。

乱歩の怪人たちは用意周到な反面どこかが抜けていてアンバランス。その内面の矛盾が昇華せずに鬱屈して血を流し暴れる様は、岡本太郎がいうところの「生の呪術的美しさ」があり、読み手の心の闇に寄り添ってくれるのかもしれません。
乱歩自身が怪人に肩入れしすぎてよく地の文が怪人視点になってるくらいですし(笑)その辺の危ういバランス感覚を担当編集であった横溝正史から危惧されたりしていて面白いです。

古今東西のあらゆる探偵小説のトリックや動機を乱歩まとめ上げた「幻影城」を見てもわかるように、彼は本能の作家というよりは、実は生粋のアレンジャーです。さまざまなアイデアを換骨奪胎して自分の作品に落とし込むのが上手い。現代で言うと恩田陸もそういうタイプですね。

これから乱歩世界に触れてみたい人へのガイドにも、乱歩マニアの脳内整理にも、単なる変態さんのおなぐさみにもオススメです^_^

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