「世の中と足並みがそろわない」

「世の中と足並みがそろわない」
ふかわりょう

世の中との隔たりと向き合う、不器用すぎる歪な日常。歌人の穂村弘さんの「世界音痴」にも通じる、ちょっとひねていて、真顔でボケて、なのに変に突然鋭いエッセイです。

いろんなニュースがあって、芸人とは何かということが世間を騒がせている昨今。独自すぎる切り口から語られる“世の中”への違和感に、思わず深く頷いてしまうこと請け合いです。さすが「あるあるネタ」のパイオニア(?)。

・名前を省略することは、モノでもヒトでも
自分の支配下にあると主張するような気がして、
「まだそこまで親しくはない」と慎重になってしまうこと。
・額面通りに言葉を受け取って全く行間を読まない間違いが許されるのは綾瀬はるかだけであること。
・本当に気にしていなくさりげないのなら、わざわざぼっちや一人を強調しないはずであること。

わかりすぎる(笑)
かと思えば、
人間と深く関わって改良されていった羊は、
自分で仰向けから起き上がることができず、
”流れる雲を眺めながら、草原に溺れていく“。
その姿に自分を重ねる詩人の一面も垣間見せてくれます。

”振り返ればチャップリンとの出会いやバイトの経験などが橋脚のように人生を支えていますが、当時はそれを橋脚だとは思っていませんでした。”
”結局我々は、便利の果実と、わざわざの果実と、二つの果実を食べながら生きているのでしょう。“

自分の違和感を自分の言葉と自分のリズムで表現できると言うことは、ステキな“タレント・才能”だよなぁと思わせてくれる一冊です。


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