見出し画像

うちの彼女を嫉妬させてはいけない理由。

自宅、3/7(金)、PM9:41


時計の針はもう9時過ぎを指していて、提出期限までの猶予はちょうど1日となった。

必修単位のかかった授業も先週に最終回を迎え、劇的なエンドロールが流れた。


『最終課題の提出は来週の朝9時まで』ってね。



〇〇「こうじゃねぇな、、、、」カタカタカタ

村山「何やってんの?」コテンッ

〇〇「大学の課題、美羽は受けてないやつ」

村山「ほぇ〜」

ソファに座りながら膝に置いたパソコンを睨みつけていたのだが、隣に同棲中の彼女、村山美羽が肩に頭を乗せてきた。

特に興味もなさそうな素振りで。


村山「だから今日は図書館いたんだ」

〇〇「そー、でも終わんなかったの」

村山「かわいそ」

〇〇「思ってないだろ」


同じ大学ではあるけれど学部は違う、だけど昼食とか帰る時とかは時間を合わせたりして2人の時間を作っています。

今日はちょっとした用事で大学に行ったんだけど、僕の方が用事が早く済んだので図書館で課題をやってたんです。

っていうか家に帰れば必ず2人にはなるんだけど。


村山「大変そうだね〜」

〇〇「超他人事じゃん笑」

村山「他人事だもん」

〇〇「もっと応援するとかないの?」

村山「さっさとやりな?」

〇〇「はい、、、、」


美羽は僕の肩に頭を傾けたままスマホをいじり始めた。

どうやら先輩や同級生と一緒に撮った写真を見ているらしい。

大学生活が充実してそうで良かった、、、、、じゃねぇよ。


〇〇「ここの書き方分かんね〜」

村山「適当に書けばいいじゃん」

〇〇「単位落としたらどうすんの」

村山「泣けば」

〇〇「やだわ」


僕は課題がめちゃくちゃ行き詰まっていた、、、

こういう時は他に奴に頼るしかないな。


村山「電話するの?」

〇〇「ちょっとね」


プルルルルッ、、、プルルルルッ、、、‼︎


優「もしもーし!」

僕が電話を掛けたのは同級生の村井優、僕を苦しめている授業をうけているので課題もやってるはず!

という事で電話を掛けたら夜だというのにとっても元気な声が返ってきました。

元気ってことは課題終わってんな、、、


〇〇「やっほ、俺なんだけどさ」

優「なに〜、詐欺ですか〜?」

〇〇「違うわ、名前出るから分かるでしょ。」

優「もぉ、、、せっかくユーモアを提供したのに、、、、」

〇〇「はいはいどうも。
   そんな事より課題のことなんだけどさ」

優「え、まだ終わってないの!」

〇〇「だから焦って優に電話してんじゃん」

優「むふふ、私はもう終わっちゃったもんね〜♪」


めちゃくちゃマウントを取ってくる優に少しイラつきながらとにかく話を進めていく。

こっちは深刻な問題なんだから。


優「にしては焦ってる感じないね?」

〇〇「そう?」

優「やっぱ美羽に似てるね〜!さすがカップル!」

〇〇「はいはい、、、そんでさ、ちょっと教えて欲しいところがあるんだけどさ」

優「どこどこ?」


村山「、、、、、、、、チッ」

それから優にアドバイスをもらいながら課題を進めていった。

途中から全然関係ない話で盛り上がったりしてたけど、、、笑

でも課題も8割方は終わってきたから全部が良い調子に進んでる!

、、、、、、隣の美羽を除いて。


村山「はぁ、、、、、」


僕らの会話を邪魔しないように一応の気は遣ってくれてるみたいだけど、不満がダラッダラに漏れてます。

ため息と舌打ちが止まらないです。怖いです。


優「あっ、ねぇねぇ!近くに美羽いる〜?」

〇〇「美羽?いるけど、、、」

優「ねぇ!美羽〜!」


村山「、、、、、、なに」


優「あれ?美羽はテンション低めだね?」

〇〇「いやあの、それ以上刺激するのは」

優「もしかして私と〇〇が話してるのに嫉妬しちゃ」


ピロンッ!


〇〇「あっ」

村山「、、、、、、優、うるさい」

優と繋いでた電話を美羽が強制シャットアウトしてしまった。

さっきまで充満していた優の朗らかな雰囲気が一気に消え、今度は死ぬほど気まずい空気が流れ始めました、、、

美羽は電話を切ったら何をするわけでもなくまた肩にもたれかかってくるだけだし。


〇〇「あの、、、美羽、、、、、?」

村山「なに」

〇〇「ごめんね、、、?」

村山「なにが」


僕の方をチラ見もすることなく、スマホをゆっくりとスクロールしている。

なんかよく分からない緊張で体が強張ってしまう、、、


村山「私のことほっといて優とイチャついてたの?」

〇〇「いやイチャついたわけじゃ」

村山「あ?」

〇〇「なんでもない、、、」


それからまた長い沈黙。

さっきまで元気に動いていたキーボードを叩く指もまったく動かない。


村山「よいしょっ、、、、」


何分だっただろうか、ようやく美羽から音が発せられた。

スマホを机の上に置いて、僕の膝に置いてあったパソコンも机に置いて。

その代わりに美羽がパソコンの場所に座った。


〇〇「みっ、、、美羽?」

村山「バツゲーム」

〇〇「え?」

村山「日付変わるまでは私のおもちゃね」

〇〇「いやそれってどういう」


チュッ、、、


僕の言葉は静かなリップ音と共に封じられた。

美羽の使っているシャンプーの良い匂いがすぐそばに感じだと思うと、次は背中に手が回され、閉じていた口の中をこじ開けられ、、、、


〇〇「んっ、、、ちょっ!待って!」

村山「え?なに拒否してるの?」

何とか美羽の体を僕から引き剥がしたけど、、、

美羽はいつものような綺麗な顔とは違う、小悪魔のような笑顔で僕を見下ろしていた。

少し恐ろしい笑顔、そして僕が大好きな美羽の顔。


村山「今、何時でしょう」


壁に飾られたアナログ時計を見ると長針が10、短針が37を指していた。


村山「あと1時間しかないんだ、、、」

〇〇「待ってまだ課題が」

村山「逃げちゃダメだから」


舌をペロっと出してまた顔を近づけてくる。

僕にはもう彼女を突き放す力も、拒否する気力も吸い取られてしまった。


村山「バツゲームだから、、、ね?」

僕が美羽から解放された時、外はすっかり明るくなっていた。

壁にかかっている時計は長針は10、短針は23を指していた。


村山「すぅ、、、すぅ、、、、、」

〇〇「はぁ、、、、」


隣でスヤスヤと寝息を立てている小悪魔を撫でながら一息。

今度から美羽を嫉妬させるのやめとこ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?