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僕の妹は思っていたよりも欲深いようです。

PM11:21


保乃「なぁ〜」

〇〇「なに?」

保乃「あんな、保乃な?いますごい暇やんか?」

〇〇「知るか」

とある日、僕と妹の保乃はリビングのソファに座りながらぼーっとテレビを眺めていた。


夜中に流れる少し下世話なテレビ番組を半笑いで流し見る。


僕はソファの背もたれに体重を軽くかけて座り、保乃ちゃんは僕の膝に頭を乗せてダラダラと、、、



保乃「お兄は冷たいな、、、保乃泣いてまうわ。」

〇〇「ほんなら泣いとけ」

保乃「うぇ〜ん!」バタバタ

〇〇「膝の上で暴れんの〜」ナデナデ



年齢差としては僕が高2、保乃ちゃんが高1と年齢差が近い。


それに昔からこんな感じに保乃ちゃんがベタベタしてくるので近所の人たちから『2人は仲がようて羨ましいわ〜』とすれ違うたびに言われる。



保乃「なぁ、、、なんかおもろいことないん?」


〇〇「そんなん自分で探せばええやんか」


保乃「探すのもめんどいから聞いてるやん!」


〇〇「せやったら早よ寝ることやな」


保乃「そしたら一日が勿体無いやん!あと頭!」


〇〇「うっさいなぁ、、、」ナデナデ



保乃ちゃんに対して軽い悪態をつきながらペット感覚で頭を撫でる。

どうやら彼女自身も頭を撫でられるのが好きらしく、隙あらば『お兄!頭!』とねだってくる。



『最近の個人的なニュースはありますか?』



ふとテレビからそんな声が聞こえてきた。

夜遅くまで駅に残っている高校生やサラリーマンに話を聞いているらしい。



『え〜?そっすね、、、、彼女に振られました!笑』

テレビでは、一見は誠実そうな見かけだが、どこか女慣れしていそうな高校生にマイクが向けられていた。



保乃「この人チャラそうやな〜。
   たぶん浮気でもして彼女にフラれたんやろ」


〇〇「保乃ちゃんこういう人に沼りそうやな?笑」


保乃「はぁ?アホ言え!
   保乃はお兄みたいな人やないと嫌や〜」


〇〇「なに言うてん、、、笑」


保乃「どや?ドキッとしたやろ!」

テレビを見ていた頭をクルンと反転させて僕の顔を覗き込んでくる保乃ちゃん。


、、、、、、可愛い。


兄という関係じゃなければ付き合うために必死になっていただろう。



〇〇「ドキッとか、、、、、せやな笑」


保乃「え?お兄がそんなこと言うの珍しいな?」


〇〇「まあな」


保乃「へぇ、、、そっかぁ!
   お兄は保乃が大好きなんかぁ〜♪」ゴロゴロ

嬉しそうな笑顔を浮かべたまま膝の上を行ったり来たり。

高校生とは思えないほどの子どもっぽさが滲み出ている、、、


保乃「じゃあ今度のお休みはお出かけしよ!
   久々に兄妹デートしようや〜」


〇〇「なにが"じゃあ"なん、、、」


保乃「細かいお兄やな〜。
   そんなんどうだってええやろ?」



その時、またテレビからとあるCMの煌びやかな音がした。



『この春!待望の新エリアがオープン!』



あぁ、保乃ちゃんが小さい頃から好きなテーマパークのCMだ。


特にクマのぬいぐるみをモチーフにしたキャラクターが大好きで、小学校の卒アルでは『将来の夢』にそのキャラクター名を書いていたな。



保乃「えぇっ!もうそんな時期なん?!」


〇〇「なんで知らないん」


保乃「こりゃうっかり、、、そや!ここ行こ!」


〇〇「2人で?」


保乃「当たり前やん!
   春休みと被ってちょうどええやろ!」

キラキラした笑顔でテレビと俺の顔を交互に見つめている保乃ちゃん。


そういやこの場所って、、、、、



〇〇「あー、それじゃ僕は2回行くんかな」


保乃「え?誰と行くん?」


〇〇「彼女と」


保乃「えぇっーーーーーっっ?!」


〇〇「うるさっ!」



耳がぶっ壊れそうなほどの絶叫を顔の近くで、、、

鼓膜生きてるよな?



母「こら保乃ちゃ〜ん!
  夜も遅いんやから静かにしいや〜!」



寝室の方から母さんの小言が聞こえる。

いやあんたの声もなかなかデカいけど、、、



保乃「お兄って彼女おったん?!」


〇〇「いるよ?」


保乃「いつから!?」


〇〇「半年くらい前かな、、、」


保乃「なっが?!
   なんで保乃に教えてくれへんかったの!!」

いつの間にか僕の膝枕から起き上がり、まるで恋人くらいの近い距離感で話しかけてくる。


そんな興奮しなくてもええのに、、、



保乃「写真見せて!」


〇〇「えぇ、、、嫌だけど」


保乃「うっさいあほ!早よ見せんか!!」


〇〇「はいはい」



別に隠してたわけじゃないし、なんなら食卓で彼女の話をしたことも何回かあった。


そういや保乃ちゃんはバレー部の夜練でいないこと多かったな、、、


僕は罪滅ぼしのような気持ちで彼女の写真をスマホのフォルダから探し始める。



〇〇「ほい、この子」


保乃「全くどこの誰や、、、保乃のお兄を、、、、、、え?」


〇〇「え?」


保乃「ほっ、、、ほんまにこの人?!」


〇〇「うん」


保乃「バレー部の先輩やんかぁ!
   なんでお兄が理佐さんと付き合ってんの〜!」

僕が保乃ちゃんに彼女がいることを言わなかったもう一つの理由。


それは彼女である渡邉理佐と保乃ちゃんの所属してる部活が一緒だから。


てっきりもうその繋がりで話してるもんだと思ってたけど。



〇〇「理佐が2人で行こうね〜って」


保乃「、、、、、いつ行くん?」


〇〇「春休み入ってすぐかな」


保乃「ほぉん、、、」


〇〇「どした?」


保乃「まぁまぁ、別にええやろ?
   そんじゃあ保乃はもう寝るな」


〇〇「え?結局僕と行くん?行かんの?」


保乃「2人では行かんかな、そんじゃ」



なんか急に愛想がどこかに行った保乃ちゃんはスタスタと自分の部屋へ戻って行った。


一体何やったん、、、


あれから保乃ちゃんはいつものようにベタベタすることもなく、僕がなにを聞いても『そやな』とか『ほな』としか言わない急激な反抗期を迎えました。


僕も母さんも父さんも、そんな保乃ちゃんになす術がなく、、、



理佐「〇〇?なんか変な顔してるよ?」


〇〇「は?」


理佐「ほら、こんな顔してんの初めて見た。笑」


〇〇「なに写真撮ってん、、、笑」


理佐「ふふっ、壁紙にしちゃおっかな〜♪」

少しモヤモヤした気持ちを抱えながら理佐とのテーマパークでデート。


理佐とは高校に入学し、席替えで隣同士になったのがきっかけだった。


テスト前に理佐が分からない問題を教えたのに始まり、一緒に図書館で勉強し、そのまま一緒に帰り、休日に出掛けて、、、、、


そういうステップを踏んで恋人になりました。



〇〇「理佐ってこういうとこ好きなん?」


理佐「あんま来ないけど好きだよ」


〇〇「そういうカチューシャつけてんのも珍しいなぁ、、、やっぱ理佐はなんでも似合うわ」


理佐「なに急に笑」


〇〇「見たまんま、ほれ」


理佐「うーわ、盗撮魔だ」


〇〇「理佐もやったろ。笑
   じゃあ僕はこの理佐を壁紙にしたるわ」


理佐「嫌なんだけど」


〇〇「もうすでに俺の写真を壁紙にしてるやつに言われたくない」



2人とも特にテンションの上がり下がりは無く、常に一定の状態。


もし心電図だったら脈拍のない、ずーっと死んでるようなもの。


だけどこの空気感が死ぬほど心地いいんだよな。



〇〇「そんじゃアトラクションでも乗る?」


理佐「いーよー、なにから行こっか」


〇〇「コースター系とか乗りたない?」


理佐「手握ってくれるなら」


〇〇「かわ、、、死んでも乗るわ、てかいつでも握るわ」ギュッ


理佐「ん、、、、、///」



あっ、照れ隠しで急にサングラスかけ始めた。


手を繋いでるせいでぜんっぜん上手いこと掛けれてないけど。



〇〇「ほら、ちゃんとしいや」


理佐「あんたのせいだから?」


〇〇「はいはい、照れ隠しな」


理佐「うるさい、、、」



可愛らしく凄んだ目をこちらに向けて先に歩き出そうとする理佐。

するとその時、、、



山﨑「あれ?理佐さんじゃないですかー!」

遠くの方からモデルのような女の子が理佐に向かってブンブンと手を振っている。


あれは確か、、、、、保乃ちゃんの友達の山﨑天ちゃんかな。



理佐「えっ!なんで天ちゃんいるの!?」


山﨑「遊びに来たに決まってるじゃないですか〜♪それによく見れば〇〇先輩も!」


〇〇「よう見んでも分かるやろ」


山﨑「あっ!ちょっと待っててください!」


〇〇「無視すんなって」



相変わらず自由奔放で気ままなやつだな、、、笑

僕たちに話しかけてすぐにまたどこかへ行ってしまった。



〇〇「なんやと思う?」


理佐「めずらしいものとか」


〇〇「たとえば?」


理佐「ミニオン」


〇〇「Dにいたらあかんやろ」



山﨑「おーいっ!ふったりっともー!!」

遠くから天ちゃんの馬鹿でかい声が聞こえてくる。


彼女には『恥ずかしい』という感情を学んで欲しいと心から願う。



山﨑「ほら!連れてきましたよ〜」


〇〇「なんやねん、誰を連れてきた、、、、、は?」

理佐「おっ、2人で来てたんだ!」


山﨑「はい!先輩の大好きな妹さんですよ〜!」

保乃「おぉ、、、お兄やんか〜?」

天ちゃんが連れてきたのは、つい最近まで反抗期らしきものを迎えていた我が妹。


あからさまに目が泳ぎまくって不自然さが満ち溢れている。



〇〇「な〜にやってん」


保乃「お兄こそ!
   まさか保乃に合わせてきたんか〜?」


〇〇「んなわけないやろ。
   そもそもいつ来るって話はせんかったやん」


保乃「またまた〜笑」



理佐「なんか2人の世界だね〜」


山﨑「2人はデート中でしたよね?
   じゃあそろそろ私たちは退散します!」


理佐「うん、またね〜」


山﨑「あとでラブラブ話聞かせてくださいよ?
   私の中で最推しカップルなんで!」


理佐「なにそれ笑。まあ気が向いたらしてあげる」


山﨑「やった!それじゃ保乃ちゃん!行くよ!」



保乃「え?まだお兄といた」


山﨑「はいはい!家帰ったらそれ叶うから!」


保乃「いややっ!お兄とアトラクションも乗り」


山﨑「はいお静かに〜」



僕と保乃ちゃんがやいやい言い争いしてると天ちゃんが手を引っ張ってどこかへ。

なんか嵐みたいな時間だったな、、、



〇〇「、、、、、、なんやったん?」 


理佐「さあ?まあ早くアトラクション行こ」


〇〇「何気に楽しみにしとるわな」


理佐「そんなことないけど?」



さっきから僕の腕をぐいぐいと引っ張ってることに気づいてないのか。


まあいいや、とにかく今は理佐と楽しもうか。


それからいろんなアトラクション乗ったり、色んなところで写真を撮ったり、適度にイチャついてみたり、、、、


気づけばもうあっという間に閉園時間が間近に迫っていた。



理佐「ん〜っ!そこそこ楽しかったな〜♪」


〇〇「そこそこねぇ、、、笑」


理佐「なに?なんか文句?」


〇〇「いやスマホにわろてる理佐の写真が死ぬほど保存されてるから楽しかったんかと、、、」


理佐「まだ盗撮魔になってんの?」


〇〇「あんたも僕の写真撮っとるやろ、主に僕ソロの」


理佐「知らな〜い」

周囲にいる家族やカップルなんかは両手いっぱいのお土産を持ちながらエントランスゲートに向かっている。


園内BGMもいつの間にか少し寂しげな曲調に変わり、僕たちの心をセンチメンタルにさせた。



理佐「こういうとこも悪くないね〜」


〇〇「また来よか」


理佐「お泊まりもしたいかな」


〇〇「えっ、、、誰とすんの、、、、、、」


理佐「あんた以外いないでしょバカ」


〇〇「やっぱ理佐は僕のこと好きやんな〜」


理佐「手、握り潰すよ?」


〇〇「握るだけにしといて」ギュッ



テーマパークに遊びにきた人たちがどんどんと帰路につき、僕たちもその後を続いていた。

するとまた、、、、、


山﨑「おーいっ!」
保乃「ふたりともーっ!!」

聞き覚えのある二つの声が遠くからボリューム90くらいで響く。


先ほどまでエントランスゲートを目指していた人々も一斉にそっちの方を向き、またすぐに歩き始めた。



理佐「、、、、、、どうする?」


〇〇「無視」


理佐「それしかないね」



山﨑「ちょっと理佐さーん!〇〇さーん!」



〇〇「すぐ行こう、名前叫ばれたらかなわんわ」

理佐「もう、、、、、///」

たくさんの人が作っていた列から外れ、2人の元へ。



理佐「ねえ、なんで私たちの名前を叫んだの?」



少し、、、いやかなりキレ気味の理佐が2人に問い詰める。


そのせいで理佐が握ってる僕の手が本当に潰されそうなんですが。



山﨑「だって2人とも私たちの連絡にまったく気づいてくれないんだもん、、、」


保乃「そうですよ!何回もメッセージ送ったのに!」


理佐「メッセージ?」

〇〇「ほんとだ、めっちゃ来てたわ」



山﨑「一緒に帰るくらい良いじゃないですか!」

保乃「そうやそうやー!」



2人して手を上げてストライキ集団みたいな抗議の仕方をする。

はぁ、、、しゃあない妹たちやな。



〇〇「ほな一緒に帰るか」


山﨑「ほんま?!」
保乃「ありがとなお兄!」


理佐「次やったらぶっ叩くから」


山﨑、保乃「「もうしません、、、」」


近くの駅から乗った電車の中はキャラクターのカチューシャだったり被り物をしている人でいっぱいだった。


山﨑「うぅ、、、人いっぱい、、、、、」ギュッ

理佐「多いね〜、〇〇がいて良かった」ギュッ

保乃「ですね!」ギュッ


〇〇「なんでみんな僕に掴まるん?」


僕は何とか吊り革をつかめたけれど、他の3人は人混みのおかげで支えがない。

天ちゃんは僕のカバンの紐、理佐は上半身に手を回し、保乃ちゃんは左腕という感じ。



〇〇「天ちゃんは送らんでも平気?」


山﨑「はい!JKは最強なんで!」


〇〇「うん、よう分からんけどええわ」


山﨑「はい!」

降りる駅でいうと僕、保乃ちゃん、理佐が同じ駅。

天ちゃんは僕たちより2つ前の駅で降りるようだ。



『次は△△駅です、お出口は右側です。』



山﨑「あっ!もうお別れですね〜」


〇〇「気いつけて帰りや?」


山﨑「はい!〇〇先輩は2人のこと守ってくださいね〜?」


〇〇「分かったから早よ行け、、、笑」



駅を迎えるたびにどんどんと人が減り、電車の中もスペースに余裕が出てきた。


天ちゃんはいつの間にか僕のカバンから手を離して吊り革を掴んでいた。


天ちゃんはね。



〇〇「2人とも?もう僕のこと掴まんでもええやん?」


理佐「、、、、、、まだ危ないよ」ギュッ

保乃「そやでお兄」ギュッ

〇〇「何やったら目の前の座席空いとるけど」


理佐「保乃ちゃん座れば?」


保乃「いやいや、理佐さんどうぞ?保乃はお兄で我慢しとくんで!」


理佐「はぁ?私も〇〇で十分なんだけど?」


〇〇「なんか気分悪い、、、」



『△△に到着いたしました、ご乗車ありがとうございました。』



山﨑「あっ着いた!それじゃみんなバイバーイ!」

〇〇「おーまたな〜」


保乃「理佐さんも降りたらどうですか?」

理佐「なんでよ、〇〇が寂しがるからダメ」


山﨑「、、、、、、」


〇〇「2人とも挨拶くらいしたれ、可哀想やん」


最寄駅。


結局駅に着くまで理佐と保乃ちゃんはバチバチにやり合い、終いには僕の両腕を掴んで降車。


周りから変な目で見られてるから今すぐにやめて欲しい。



〇〇「理佐、送ってくわ」


保乃「じゃあ保乃も!」


理佐「いや〇〇だけでいいよ?
   保乃ちゃんは早く帰って休んだら?」


保乃「大丈夫です!めっちゃ元気なんで!」


〇〇「はぁ、、、」


帰り道。


理佐「〇〇は私のこと愛してるから」


保乃「なに言ってるんですか!
   お兄は保乃のことが好きで好きで、、、///」


理佐「はぁ、、、キスしたこともないでしょ」


保乃「きっ、キスッ?!なら理佐さんはお兄と寝たことあるんですか!」


理佐「ある、〇〇の腕の中で」


保乃「あうぅ、、、」

〇〇「もうやめてくれんかな、、、///」



理佐の家へ行く途中、2人が僕に対する好き好き合戦を始めやがった。


おかげでよく分かんない辱めを左右から受けながら帰ることに。


そんな状況が続いて約10分、ようやく理佐の家が見えてきました。



〇〇「あーほら、理佐の家ついたで?」


理佐「、、、、、、うん」


〇〇「なんで拗ねてるん」


理佐「〇〇ってさ、私の彼氏だよね?」


〇〇「そりゃな」

月明かりと多少の街灯が理佐の顔を映し出す。

あまりはっきりとは分からないが、少し俯きがちに斜め下を見ているようだった。


理佐「じゃあ、、、、、、こうしてもいいよね?」グイッ


〇〇「え?」

保乃「あっ、、、」


保乃ちゃんが組んでた腕を無理やり引き剥がすように腕を引っ張り、自分の方へと引き寄せる。

そして踵を少し上げ、僕との距離を0にした。


保乃「えっ、、、、、」


理佐「よいしょっ、、、」

〇〇「んっ、、、おいっ、、、、、」

理佐「ん?」

たった今起こったことの記憶が消え去ってしまった様な顔をする彼女。


道端でキス、しかも妹の目の前で。



理佐「まあ印づけって感じ?」


〇〇「印づけって、、、、、」


理佐「これからも私のモノだよってそこの妹ちゃんにも教えてあげよっかなと」



保乃「ちゅーした、、、、、」



そんな妹は、目の前で化け物でもを見てしまった顔で絶句していた。


その姿も気に留めない理佐は、火照った顔を手で仰ぎながら自宅の玄関へ。



理佐「じゃあね、今日は楽しかったかな」


〇〇「おっ、、、おう、、、、、」


理佐「今度はお泊まり会でもしよっか」


〇〇「いいけど、、、」


理佐「あと、大好きだよ」

あまり感情の見えない顔で愛の言葉を呟いてくれる理佐。


彼女なりに一生懸命な照れ隠しを頑張ったんだろう。



保乃「、、、、、、、、」

〇〇「、、、、、、帰ろか」


死ぬほど気まずい空気の中、隣に並んで家路を辿っている。


いつもは止まることのないお喋りな口も今日は閉店のようだ。



〇〇「なぁ、保乃ちゃん?」

保乃「、、、、、、、、、なんや」



僕の顔なんて1mmも見ないで地面ばかりに視線を注いでいる。


おまけに夜の闇が僕らの空気まで暗くしてくる。


次の言葉を探しているうちに、彼女がまた声を絞り出した。



保乃「、、、、、、せっかく、、、」

消えそうな声が何とか僕の鼓膜に届いた。


足を止めた保乃ちゃんは静かに震え、お気に入りのバッグを両手でギュッと握りしめている。



保乃「保乃な、、、めっちゃ頑張ってん、、、、、」


〇〇「保乃ちゃん、、、?」


保乃「お兄の好きな服着て、好きなメイクして、、、
   全部全部!お兄に保乃だけを見て欲しくて!!」



夜空を切り裂くような彼女の叫び声があたりに響き渡る。



保乃「理佐さんに負けたくなくて、、、保乃の方が、、、」

月光が保乃ちゃんの顔を照らすと、頬の辺りに一筋の涙の跡が見えた。


まったく、どこまでも世話の焼ける妹だな、、、、



〇〇「ありがとな、保乃ちゃんの気持ち嬉しいわ」


保乃「でも、、、ごめんなさい、、、、、」


〇〇「何も謝ることしてへんやろ」


保乃「お兄たちのデート邪魔したし、、、」



僕はゆっくりと保乃ちゃんとの離れた距離を詰めていく。


これ以上は泣かないと、口をキュッと結んで涙を堪えている保乃ちゃん。



〇〇「しゃあない妹やな」ギュッ


保乃「んっ、、、、///」



僕よりも小さな妹を優しく抱きしめてあげる。


夜風で冷えた身体を何度か摩って落ち着かせながら。



保乃「、、、あったかい」


〇〇「カイロ持っとるからな」


保乃「そういう話ちゃうわ!
   お兄といるとポカポカするって話!」


〇〇「そりゃどーも」



こんな時でもふざけてしまうのが僕の悪い癖だけど、、、


まあ保乃ちゃんの元気出すにもこういうのが1番やろ。



保乃「なぁ、、、お兄?」


〇〇「ん?」


保乃「あんな、、、、、保乃にもしてほしい、、、」


〇〇「なにを?」


保乃「理佐さんにしてたやつ、、、///」


〇〇「キスしてほしいん?」


保乃「、、、、、、うん、、、///」

その言葉を最後にゆっくりと目を閉じ、僕の方に顔を向ける保乃ちゃん。


まるで恋愛ドラマのワンシーンを切り取ったかのような可愛さ、美しさだ。



保乃「はよしてや、、、///」


〇〇「ほんまにしゃあない妹やな、、、」



僕はゆっくりと保乃ちゃんに顔を近づける。


彼女のドキドキという心音がここまで伝わってるような気がした。


そして先ほどの理佐のように、僕は自分の唇を、、、、



チュッ、、、



保乃「、、、、、、ん?」


〇〇「妹にはここまでな」


保乃「ほっぺ、、、」


〇〇「口にしたら保乃ちゃんは僕しか見れんくなるやろ。だからほっぺたが妥協点な」



好きでいてくれるのは無茶苦茶嬉しいけど、やっぱり僕と保乃ちゃんは兄と妹。


これからのことも考えるとここがちょうどいいと思ったんだ。



〇〇「ほな帰るか」



僕は保乃ちゃんに背中を向け、また家路をたどり直そうとした、、、、、けれど、、、



保乃「、、、、、、いや」


〇〇「え?」


保乃「お兄しか見れなくなってもええ!」

僕が振り返るのと同時に、保乃ちゃんの可愛い顔が目の前にあることに気づいた。


そして今度はしっかりと唇と唇が触れ合ってしまう。



保乃「しゃあない妹やからな、保乃は!
   これからもお兄しか見いひんからな!」


〇〇「保乃ちゃん、、、///」


保乃「そんでいつかは理佐さんから、、、!!」



メラメラと理佐への闘志を燃やし続けている保乃ちゃん。


そしてこれからの学校生活、余計に騒がしくなることが確定しました、、、、笑



保乃「そんで最後はお兄と結婚したる!」


〇〇「んなの出来るか」


保乃「出来る!愛は法をも越えるんや!」

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