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お絵描きAIとの付き合い方を研究してみた その1

こんにちは!タキザワです。

お絵描き講座パルミー(https://www.palmie.jp/)で、
講座を作ったりtwitterやyoutubeでお絵描き情報を発信しています。

お絵描きAIが良くも悪くも話題になっています。
絵を描く人にとっての、より良い付き合い方を探ってみました。

・目的

「棋士がAIで研究するように、絵師はAIで学ぶことができそうかどうか?」
あるいは
「アシスタントのようにAIに面倒な作業をさせられるかどうか?」
ということを明らかにしたいというのが主目的です。

・比較 AIと協力した絵と、普段の絵

こちらがAIと協力して描いた絵です。

肉まんパルミーちゃん

AI無しで描く絵も比較用に貼っておきます。

完成・camera_rawした後

こんな感じの絵を描く人・・・という風にご理解ください。

・作業環境

今回の環境は以下の通りです。
ローカルで環境を構築して臨みました。
・Stable Diffusion web UI
・使用モデル waifu diffusion
・ペイントソフト clipstudio paint

・今回の作業手順

AIと協力して描いていくにあたり、作業手順を考えました。
普段は、大ラフ・ラフ・下書き・線画と順当に作業を進めます。

今回は、大ラフをimg2imgで読み込ませ、その後出力物を加筆修正します。この手順を繰り返して完成を目指します。

結果から貼りますが、こんな感じの流れになります。

これを細かく解説していきます。

作業段階

・とりあえず大ラフを描いてみる

肉まんラフ

本当はラフの比較検討するべきですが、今回は1枚で決めてしまいました。
秋っぽい風景の中、肉まんを食べるパルミーちゃんです。

AIが得意な「縦長・上半身だけ・正面向き・女の子一人」の絵です。
私はこれを大変苦手としておりますので、AIさんに助けて貰いたい訳です。

個人的嗜好としては「横長・キャラ複数・全身」が得意、そして好きです。
キャラ同士の関係性を描きたいので、一人だけはあり得ない!と思っています。


・出力1回目…おそらくカラーラフ段階

先ほどの大ラフを、img2imgで読み込んで、
プロンプトには「こういう絵だぞ」と、絵の要素を言語化して入れます。

たくさん出力した中から選びました。

肉まん_1回目

大ラフの頭の傾きを上手に拾っています。
それに合わせて右肩を少し上げている仕草を足してきました。
AI君はこういう指摘(?)をしてくれるのも有難いところですね。

なお肉まんはNikumanでも、meat banでも、何やっても上手くいきません。
遺憾ながらAIは料理に対する理解度が致命的に低いです。

当然ですが、このまま使うわけにはいきません。
この絵をクリスタで開いて、上からゴリゴリ塗っていきます。

作業手順的にはカラーラフくらいのイメージです。

ブラシは「オイルパステル」
下地混色アリで、出力したものと同一レイヤー上に描いています

肉まんラフ2

こんな感じになりました。

ちなみに、私は手が苦手です。
奇しくもAIも手が苦手です。
今後出力のたび「お前がやれ!」みたいな責任の押し付け合いになります。

最終的に私が折れて手を描くことになります。
どっちが主人なんだ。

・出力2回目…いきなり色塗りにジャンプ

肉まん2回目_1

線画と下塗り工程が吹っ飛びました!
これはもういきなり塗れます。
でも、変なところいっぱいありますね。

あとパルミーちゃんの目が開きました。閉じさせます。
肉まんもwhite breadという指示にしてみましたが、無駄でした。
作業全体を通じて、謎の食べ物を持ってる絵もたくさん出力されました。

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なお今回の出力では、ビルの窓ぽいものが偶然生まれました。
これは気に入ったので今後も維持します。

こういう連想ゲーム的抽象背景の創造はすごいと思います。

これも、どんどん上描きしていきます。

趣味で十数枚ほどsessaで添削をした事がありますが、
その時の上から塗る作業に似ているなぁと思いました。

肉まんラフ2_3

目は閉じていただきました。

あと、右腕に抱えていた肉まんの袋・・・適当なイメージで描いていました。

形がいいかげんですし、パルミーちゃんは大食いキャラではありません。
片腕に大量の肉まんを抱えるのは相応しくありません。

という事で、絵を見る人を混乱させそうなので変更!
スクールバッグをかけることにします。

あと肉まんに包み紙をつけました。

これはAIの意外な効果なのですが…
出力されるのが「自分の絵」ではないので、妙に冷静になれます。

自分の絵だとGOサインを出してしまうような所も「これは許さん!」と鬼のように修正できます。

AIのプライドをヘシ折ってやっているようで痛快です(完全な妄想です)

真面目な話、自分でここまで作画していると、
コンコルド効果で勿体なくて破棄できない表現があったりします。

AIの絵だと気持ちよく破棄できます!

本来、クオリティの為には断固としてこのように直すべきです。
そういうところに気付けるという点は有益ですね。

・出力3回目…最後の出力

出力3回目は、Denoising strengthというパラメータを下げました。
これは元の絵に対して、どれくらい忠実かどうかです。

ここまで0.51でしたが、0.35まで引き下げました。
下げるほど忠実になります。

肉まん3回目候補2

これが最後の出力です。この絵から完成まで持っていきます。
謎の食べ物が登場しましたが・・・それ以外は良さそうです。

肩掛けバッグの圧力による、ブレザーの乱れの表現は見事です。
これは自力では描けなかったと思います。

ここから完成までもっていきます。
わざとらしいハッチングが「私は人間だ!」と主張しています。

肉まんパルミーちゃん

というわけで完成です。
気になる箇所はまだまだありますが、終わりにしました。
本気でやるならまだ時間をかけて直したい箇所がたくさんあります。

しかしながら、目的はきれいな絵ではなく、AIとの協力の可能性を考えることなので、ここで完成としました。

・協力プレイして感じたこと

【おかしい部分を判断する力は要る】

元絵を維持する程度によっては、AIも元絵に忠実に壊れた人体を描きます。

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(例:もう少し細い首が好き)

AIと協力するとしても、日々のクロッキーやドローイングは必須でしょう。
おかしい部分を見つける能力があったほうが良さそうです。

もちろん最初のラフ段階も、ある程度描ける必要があります。
そういう意味で基礎力は大事です。

【バリエーションに気付かせてくれる】

絵は少しの首の角度や、ほんの少しの形で印象が大きく変わります。

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AIを使う事で、バリエーションを提示してくれるので
「こういう表現も良いじゃん!」という気付きは増えます。

【加筆に力が要る】

初心者~中級者序盤の人だと今回のような描き方に向かないと思います。
というのも、AIの塗りはかなり良いセンを行っています。

なので、ある程度力がないと、その加筆が「蛇足」になってしまいます。

私自身、加筆が蛇足だったのでは?という箇所が複数思い当たります。

「私の色に染め上げてやる!」という自信と己のスタイルが欲しいです。
そうでないと「AIに出力させてそのまま完成!でいい」という、
闇堕ちEndに分岐しそうです。

【作業時間が短縮できる】

作業時間は割と短縮できます。
アシスタントとしては有能なんじゃないかと思います。
これやっといて!ってできるのは良いですね。

とはいえ、そんな1~2時間で完成するような短縮はできません。

プロンプトの吟味シード値ガチャをしている時間が無駄に感じて苦痛です。

【好きな作業に集中できる】

絵は人によって好きな工程というのがあると思います。
私はアイデア出し~カラーラフまでが一番好きです。
二番目は、明暗を塗って立体感を掘り起こしていく作業です。

嫌いなのは、線画です。
そして、細部のクオリティを高めていく終盤の調整作業も苦手です。

私とは逆に、線画や仕上げの過程が好きな人もいると思います。

AIと協力すれば
嫌いな作業をAIに投げて、好きな作業に時間を割く事も可能です。

とはいえですね・・・。
嫌いな線画を描き切った時の達成感とか、
頑張って大作を描き切った時の気持ち良さは、捨てられません。

AIに作業時間の短縮をさせる描き方と、普通の描き方。
その時の気分で選ぶような形が一番楽しそうだな・・・と思います。

【学びはあるのか?】

これは正直なところ微妙です。
AIからのフィードバックを師匠として、具体的な学びを得るのはムリそうです。

AIは良い表現もあれば微妙な表現も出してきます。
それを直している時や、良い表現に気付いた時に学びを得ている。と、言えるかもしれません。

少なくとも棋士のように上達を主目的として活用するのは難しそうです。

【まとめ】

長々と書いてしまいましたが、現状では

AIを使って技術を研究する → 数ある研究の1バリエーション程度
AIに面倒な作業をやってもらう → 作業手順の1バリエーション程度

といった印象です。

今後は参考資料的に使うような描き方
背景込み・複数キャラ・横長のような、
AIイラストで見かける頻度が低いものも検討してみたいと思っています。

長い記事になってしまいましたが、ご覧いただきありがとうございました!


追記)

まだまだ使い始めたばかりですが、お絵描き学習サービスに携わる者として、AIを触りもせずに批判も肯定もできないと思って手を出しました。

The Elder Scrolls VIが出るまではPCを新調しないと決めていたのに、
このためにPCを新しくしました。もちろん私費です。

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