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奥さん!奥さん!君の名は。

顧客のYさん(女性・推定40代)がお友達(女性・推定40代)を連れてきた。利用しているディーラー対応に不信感を抱いているらしく、他所の意見を聞きたいとのこと。

「奥さん」は奥の人

初めに名前を伺った。私としては会話のつまづきを防ぐために予め聞いておきたい。二人称が定まってないと気持ち悪い。
一般的に「奥さん」「奥様」でもいいのだろうが、既婚者であるかもわからない。今時は「奥さん」の呼び名を嫌がる人もいると言う。
「お名前教えてくれませんか」

しかし返事は「え・・いやいや、まあまあ・・・」だ。
私は名乗っているのに拒否か・・・なんとも難しい。隣のYさんも苦笑い。

どんな話ですかね?奥さん!!

奥さん!何があったんですか」
仕方ないので「奥さん!」をことさらに強調して堂々と概要を聞く。

「先日ディーラーで点検をしたが2か月後に車が故障した。レッカー搬送にてそのディーラーで修理し、修理代金を支払った。しかし新車時からオイル交換も定期点検もディーラーが推し進める通りにやっているのに自己負担は納得いかない。できるならば返金してもらいたい。そこで、返金請求していいものか一般的な意見を聞きたい」とのことだった。車は15年経過の軽自動車 走行80000キロ

なるほど、なかなかの強者。要するに「品物は返さないが金は返してほしい」と言っている。

返金請求については自分は答える術がなく、そうしたいのであれば自身が行動に移せばいいだけだ。
ただ、「金返せ」と言ったが最後、先方からは「不当な金銭要求をしてくる者」と捉えられる。そこら辺は腹をくくるようにとも伝えた。

この奥さんは正義感が強い人だ。是々非々で通したいがゆえに今は感情が勝ち過ぎている。もう前も見えない横も見えない、間違った方向に進もうとしている。
話せばわかる。話せばきっとわかってくれると思い、私が答えられることは丁寧に話そうと思った。

まずは修理明細を見せてもらう。
故障内容はダイレクトイグニッションコイル1本損傷(電圧リーク)でエンジン不調、当該部品交換。修理代は本来15400円のところ、部品代のみの9000円請求だった。
その9000円の自己負担が納得いかないらしい。

・・・正直なところ、その怒りっぷりからもっと高額修理と思った。
やっぱり是々非々奥さんだ。よく聞いておくれよ。

一般的な整備保証の見解!奥さん!

例えば整備作業の不手際で人為的に不具合原因を作ってしまったのならば整備保証適用の可能性がある。
しかし消耗劣化に起因する不具合は基本的に整備保証適用外である。それは点検実施直後であってもだ。
今回の不具合原因がこれ。

とは言っても奥さん!

とは言っても、点検したすぐ後に不具合が発生してしまったら事業者側がユーザーの心情を汲み取り、何らかの提案を持ち出すこともある。
まさに今回の事例がこれに当たる。

そして私の見解!奥さん!

どの程度の点検かは不明だが、15年経過車ならばいつ何時不具合に陥っても何ら不思議ではない。それなのに点検後二か月も経ちながら歩み寄ってもらい、部品代のみでしてくれているのだから、むしろ「ありがとう」と、素直に思うべきじゃないのかな?と述べた。


私が述べている間、奥さんはよく聞いてくれた。
車のメンテナンスの心持ちをなるべく理解しようと、一生懸命話しを聞いてくれていた。やはり私が思っていた通りの人だ、名乗らないくせに。

奥さん!天晴れ!

「今までトラブルに見舞われたことがなく、(レッカー搬送が)初めての出来事でとても怖かった。そこで不信感を抱いてしまった。よくわかった」と奥さんはおっしゃった。奥さん天晴れ!

最後に奥さん!

「長年ちゃんと点検整備をしているのだから、トラブルに慣れないのも当然ですよ。これからもそのディーラーを信じて出してあげてください、奥さん!」と締めくくった。

と思ったら、隣で聞いていた顧客Yさんが「わたしだったら請求するー」などと言い始めた。「だまれ関係ねえ」とさえぎった。

名も知らぬ奥さん!さようなら


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