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【12月20日】クリスマスまでに帰らなきゃ!豪華な猫

ルーは昔の恋人がいた街を出て黙々と海を泳ぎました。
無性に泳ぎたくて、寝ることもやめて泳ぎました。
そんなルーの前に音楽をかき鳴らした大きな船が現れました。
そしてその船から猫が落っこちてきたのです。
慌てたルーは猫を背中に乗せてあげました。
船から猫の飼い主がルーを呼びます。

「おーーーい、有難う!船に乗ってくれ!」

船から梯子が降りてきて、それを体に巻き付けると強い力で引っ張られ船に乗ることが出来ました。
びしょ濡れの猫とルーを浴室に連れて行ってくれた飼い主は二匹を優しく洗ってくれました。
暖かいお湯をかけられながら、ルーは飼い主にお礼を言います。

「僕はルー、有難う、気持ちがいいよ。」

そういっても飼い主は無反応です。
代わりに猫が答えました。

「飼い主に言葉は通じないわよ。
私はルビー、よろしくね。
助けてくれて有難う。遊んでたら勢い余って海に飛び込んでしまったの」

飼い主に暖かい風をかけられふわふわの白い毛を自慢げに舐めながらルビーが言いました。
飼い主は二匹を大きな部屋に連れていき、ゆったりとした足取りで出ていきました。
部屋の真ん中にはきらきら光る檻があります。

「豪華な檻だね。何を入れるの?」

「私よ。
飼い主はこのキラキラの檻に私を入れて誰かに売りにいくのよ。」

「ふーん、窮屈そうだけど、狭くはないの?」

「狭いわ。
上手く伸びが出来ないし、毛づくろいだって届かない場所があるもの。
でもいいわ。綺麗な私が一番綺麗に見えるって飼い主が用意してくれたんだもの」

「でも、狭いんでしょう?」

「いいのよ、贅沢だし立派に見えるわ。」

「うーん、飼い主に売られるのは悲しくないの?」

「世の中には自分で自分の幸せを決められる者と、決められない者がいるのよ。
私は後者であることを知っているだけ。
求められている場所で宝物みたいに扱われたいのよ。
それが私の思う幸せだわ。それだけよ。
あなたは?どうして海を泳いでいたの?」

ルビーは真っ赤な目をルーに向けて興味なさげに尋ねました。

「僕は雪島に帰るところなんだ。」

「じゃあ、次止まるところで降りればいいわ。
そこからは自分でどうにかなさい。」

ルビーは話は終わりというように、豪華な檻に入って丸くなり眠りにつきました。
ルーは幸せを考えました。


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