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吉木稔 SOUL STATION LIVE IN IIDA 長野県飯田市 Over the Rainbow吉木稔(B)祖田修(P)森田修史(TS)

私の運命を変えた男たち、ことに祖田と会うのは2年ぶりくらいになるだろうか。だが祖田とは深夜に始まる濃密な電話でのコミュニケーション、音楽の世界にとどまらないその社会問題などに対する深いパースペクティブは、私の知的好奇心を十全に満足させただけでなく、往々にして私の文筆に向かう原動力にもなっていた。私はその再会をどれほど心待ちにしていたことか。そしてしかも今日は、吉木・祖田・森田のトリオなのである!

リハ前、緻密に美しくエレピの音を整えた祖田と、吉木・森田の会話は、話題があまりに専門的にすぎるからここには記さないが、ちょっとした祖田のジャズ私塾の様相を呈していた。ただ、理論に疎い私にも、ビリー・ストレイホーンがいかにシステマティックか、とか、ラヴェルからベニー・ゴルソンにいたる視野など、刺激に満ちた「レクチャー」は続いた

リハだ。ベニー・ゴルソンのナンバーが始まる。分厚いコード感!3人それぞれが持っている幅広い倍音!単音でもたっぷりのコード感!私はそれだけでも酔うことができた。そしてエレピを使ったとびっきりソフィスティケートされたJust friends!。こんな極上の逸品が阿吽の息でできてしまうこのバンドはやはりただごとではない。

1stはおなじみミディアムのスタンダードから。祖田の言うインストゥルメンタルなフリートークの妙。テナーの主メロから。ソロはサブトーンかと思う柔らかさ。ピアノソロは極めつきの美音と美しいフレーズ、スウィング!吉木のソロはこれぞベースソロというべき立派なもの。森田祖田が8小節から4小節へと交換してD.C.
2曲目アルバムPath of hope から 吉木作曲蘇おう(変換不能)吉木ひとりでかき鳴らし、祖田、森田とフェードイン、テナーテーマ甘く夢見るよう。ブリッジで4ビートが入り、森田がむせび泣く。祖田の徹底した美学。続いて祖田のオリジナルSoulache. 祖田が中高音域十分に響かせてリリカルに演奏。ベース入ってテュッティ。吉木祖田でインテルメッツオ。ベースソロが節度を持って繊細。テナー入ってテュッティ。ピアノソロからD.C.懐かしい回想のように盛り上がり、Coda.
ここで森田の豊作のバラード。テュッティからテナーで瞑想的なテーマ。ピアノの美しい歌は中高声部が響く。それは深いうただった。森田は音数たっぷりにインに歌いこむ。祖田が必死で耳をピアノくっつけんばかりに音を聴きとっている。やがて静まって、D.C.
1st最後はPath of hope からZi-Zi. B,テナー、keyと登場し自由な4ビートで遊ぶ。テナーkeyと、当然のことながらアルバムよりこなれている。B.のビートを慎重に聴く。吉木、ヘッドへ。
2ndは祖田、A Tail of Dreamから。ピアノソロが実に抒情的。ジャズワルツ。Bがパーカッシブに、テナーが入り、主メロ。ベースソロ、ピアノと対位的に。テナー入ってヘッド、ソロ。ピアノソロ、何とも言えず懐かしくも美しい。D.C. 吉木、坪菫。スローなまさしく真っ黒なJAZZ!テナー入って王道の黒!一瞬のブレイクのあと、ピアノ真っ黒なブルース!森田の眼に祖田に対する畏敬の念が感じられる。吉木ソロ、奔放にブルージーに語っている。D.C. 続いてのマクラフリンのナンバーは、ピアノとテナーの対話から。キースがふと香ったフリーキーなピアノソロ。もちろんまったく祖田オリジナルスタイルだ。Bややビートを入れて、テナーが主メロ。祖田がっちりサイド固める。3者の自由なソロ、3人ともコード楽器のようだ!ピアノ美しいアルペジオの連続からシンプルに静まり、また豊かに響かせ、D.C.  マルのバラード。森田ソロから。さりげなく祖田はいり、絡み歌う二人。慎重に歩を進める祖田、インに歌いこむ森田。ベース入る。何か今日の森田は凄い!ピアノモンクなどとは違う寡黙な説得力!BからD.C.
さいごはAngella ベースがパーカッシブに入る。粘っこい8ビート。テナーとピアノが8バース交換のソロ、やがて4バースへ。ベースが1コーラスソロを取り、ピアノかぶさる。D.C.3人ユニゾンからベースブレイクソロ。
アンコールは誰もが知っている、ごく自然に手拍子が沸き起こるスタンダードだった。

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