私の最期の先生 十一話 ※センシティブ表現有

今回の話は一部センシティブな表現があります。苦手な方はブラウザバックを推奨します。


十一話 怪物
murder side
最初は快闊ないい人だと思った。美人で気立ても良くて、こんな女性がいるのかと目を疑った。次第にそれは俺が絵空事の世界で描いていた人を模した怪物だった。
バイトを初めて一月ほどたったとき、それは態度が少し変わった。普段と変わらないのにどこかよそよそしい態度だったり、錠剤の薬みたいな小さい声で悪口を言われた。俺はそれに嫌われたのかと不安で不安でどうにかなってしまいそうだった。今思えば俺はそれに何かの御呪いをかけられたのだろう。そう思うくらい、俺はそれの一喜一憂を伺っていた。
俺は意を決してそれに話しかけた。
「渋谷先輩。最近・・・・・・その・・・・・・俺に対して何か不満ってあったりしますか。」
「急にどうしたの?そんな改まって。」
「あの、俺の勘違いだったら申し訳ないのですが、先輩、俺に対してなんか冷たいといいますか、えっと・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「すみません。自意識過剰ですよね。忘れていただけると幸いです。」
あのままさっさと帰ればよかった。後悔しても遅い。

「・・・・・・相沢くんはさ、好きな人っているの?」
「え・・・・・・?急になんですか。」
「だから、いるのって聞いてるんだけど。」
「うえ・・・・・・えっとぉ・・・いませんけど。」
「へー、いないんだ。じゃあさ、好きな人に自分のことを考えてもらうにはどうするのがベターだと思う?」
「はあ、うーん・・・・・・自分に関する質問を投げかける・・・とか?」
「ハズレー。・・・じゃあさ、もう一つ質問をするね。相沢くんはメリーゴーランドとお化け屋敷、どっちが記憶に残る?」
「・・・お化け屋敷ですね。それが何か?」
「それが1つ目の質問の答えだよ。好きな人に自分のことを考えてもらう方法。小さな恐怖を積み重ねるんだ。小さな恐怖が段々と積み重なり、やがて大きな恐怖になってしまう。その恐怖は、次第に恐怖を与えている人のことを考えてしまうんだよ。」芝居がかった言い方でそれは迫ってくる。
「ねえ相沢くん。私のこと、怖い?」
「・・・・・・何でですか。」
「最近、私からアプローチを受けてるみたいだけど。私のこと、ちゃんと考えてくれた?」
それは俺の体を撫でくりまわしてきた。逃げないと、危ない。・・・・・・気持ち悪い。
「ふふ・・・・・・言わないと分からないよ。」
それの手が、どんどんどんどん俺の体にまとわりついてくる。あ・・・・・・どうしよう。気持ち・・・悪い。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い

・・・・・・気づけば俺は怪物を倒していた。

◇ それの死体が発見された頃、俺は重度のストレスで意識を手放していたらしい。其の為、容疑者としては最も疑わしかったが強い恐怖の中、抵抗をすることはほぼ不可能ということなので容疑者から外された。その後特に進捗がなく、捜査は打ち切りになった。





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