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峠の従者

三日月峠の近くにはお城のような宿泊施設があり、そこでふたりは「従者」と自らを紹介する女性と出会った。彼女も猫を従えている。
「いえいえいえ、わたくしが従っているのです。この方は皇帝カエサル、とても高貴なお生まれなのですよ?」
ジューシャ(従者)が言うにはカエサルは雄の血統書付きで、相応しいお后を探しにいらしたのだとか。
「僕たちは互いの飼い猫の婚前交渉をしに峠を目指しています」
てっきりカエサルを推して来るかと思いきや
「でしたら、眼前に広がる当ホテルに、是非、ご宿泊下さい。無論、三日月の夜に婚前交渉を済まされてから」
峠はホテルを超えた少し向こうに位置していた。
ジューシャ(従者)とはそこで別れたはずだったが、ホテルの横のあぜ道で又、出逢った。
「茶太郎さんと、柚姫さんでしたね?」
飼い主ではなく、飼い猫の名前を尋ねて来る
ジューシャ(従者)、どう言うことか問い質すと
「峠に住む魔女は我々、従者を複数体従えております。私は飼い主さまのお名前を存じ上げませんでした」
ご丁寧にも名乗ると
「RYUKIさまと茶太郎さん、VANLIさまと柚姫さんですね。確かに私も覚えました。それでは聖なる旅路を」
RYUKIとVANLIは未だ気づいていない。
ジューシャ(従者)と名乗る分身たちの、
真の脅威を。

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