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【働き方制度改革事例】育児、介護、妊活、資格取得…社員一人ひとりのライフプランに合わせて勤務形態や勤務時間を設計し、「自分らしく働く」をサポート

アワードの受賞・ノミネート取り組みに限らず、全国のみなさんが取り組むさまざまなGOOD ACTIONを取材しご紹介していきます。


【企業・団体名】


株式会社アドウェイズ

【取り組み概要】


同社では2014年に、会社から社員に愛を伝える取り組みを行う「愛社員課」を人事部内に発足。同年12月より、働くパパ社員、ママ社員の働き方をカスタマイズできる「パパママコンシェルジュ制度」を設けるなどの活動を続けてきた。
平均年齢上昇などに伴い、さまざまな事情で自身の働き方を考える社員が増える中、愛社員課が発起人となり、より選択肢を広げた働き方ができるよう、パパママコンシェルジュ制度を「MyWAYS(マイウェイズ)」に名称変更し、対象範囲をパパママだけでなく「仕事と介護の両立が必要な社員」や「ライフプランを考える社員」に大きく拡大した。
これまでも、介護との両立が必要な社員などに対し、個別対応はしていたものの、今回の改定で明確に制度化しオープンにしたことで、働き方について相談しやすくなり、実際に活用する社員も増えている。

【取り組みへの想い】


育児や介護などで自身の働き方を考える社員が、より自分らしく働ける方法を選択できるよう、会社として全面的にサポートしたいという思いを「MyWAYS(マイウェイズ)」に込めました。社員のライフステージの変化に合わせて働ける職場にすることで、仕事を辞めずに済み、ご家族も安心できる。そんな環境を整備し、社員一人ひとりにイキイキ働き続けてもらいたいと考えています。
(株式会社アドウェイズ 人事・経営推進グループ・ユニットマネージャー 美馬梨沙さん)

【会社紹介】


アドウェイズは、アプリ・Webの包括的なマーケティングを支援するエージェンシー事業を始め、国内最大級のアフィリエイトサービス「JANet」「Smart-C」、スマ―トフォン向け広告配信サービス「AppDriver」や全自動マーケティングプラットフォーム「UNICORN」などのアドプラットフォーム事業を手掛けるインターネット広告企業。2001年に創業し、2020年に東証1部(現・東証プライム市場)に上場、従業員数は1124名に上る(2022年12月末現在)。

●いち社員の問題意識から、子育て社員をサポートする制度を新設

今から遡ること9年前の2014年、ちょうど従業員数が1000人を超えたころに、当時人事部に所属していたある社員が「今後会社がさらに大きくなる中で、社員に愛社精神を持ち続けてもらうにはどうすればいいのだろうか」という課題感を覚えるようになったという。そこで、CEOの岡村陽久氏(現・取締役会長)に課題を持ち掛け、話し合ったところ、「社員に愛社精神を持ってもらう前に、会社からしっかり社員に愛を伝えることが必要なのではないか」という結論に至り、社員に愛を伝える取り組みを行う「愛社員課」という課が人事部内に誕生した。

 
愛社員課がまず取り組んだのは、仕事と育児を両立している社員のサポートだ。
会社設立から10年超が経った当時、家庭を持ち、子育てをしている30代以上の社員の比率が徐々に高まっていたが、出産や育児に関する制度がまだ整備し切れていなかった。
 
「子どもがいる社員約100名と一人ずつ面談を行い、どんなサポートが必要かヒアリングしたところ、保育園などへの送り迎えの時間が欲しいという要望が多いことがわかりました。そこで愛社員課主導で、在宅勤務や時短勤務、フレックス勤務など7つの項目から必要性に応じてカスタマイズできる『パパママコンシェルジュ制度』の運用をスタートしました」(美馬さん)
 
パパママコンシェルジュ制度はすぐに好評を得て、活用されるように。いち社員の問題意識が経営陣を動かし、多くの子育て中の社員に支持される制度となった。

●介護や妊活など「自身の働き方を考える」社員にも対象範囲を拡大 

ただ、時が経つにつれ、育児との両立だけでなく、さまざまな事情で自身の働き方を考える社員からの相談が増えてきたという。
 
「私はカウンセラー資格を持っているため、社員の意見や要望を直接聞く機会が多かったのですが、年々さまざまな声を聞くようになりました。今までは子育て社員へのサポートに注力していましたが、それだけではないと気づかされました」(美馬さん)
 
例えば、家族の介護や妊活など。このような人生の岐路に立たされたとき、「今のような働き方はできないから、会社を辞めなければならないだろうか」と悩む人は少なくない。しかし、パパママ同様に会社がサポートできれば、辞めるという選択をせずに済むのではないか…と、人事担当の美馬さんは考えた。
 
こうして2020年に新たに制度化されたのが「MyWAYS(マイウェイズ)」。パパママコンシェルジュ制度の対象範囲を大きく広げ、仕事と介護の両立が必要な社員や多様なライフプランを考えている社員も活用できる制度にブラッシュアップした。
 
二親等内の家族に介護が必要となった社員は、時短勤務、在宅勤務、時差出勤の3つから働き方を選択できるようになった。また、入社3年以上の社員を対象に、妊活やワーキングホリデーの参加、資格取得の勉強など、今後のライフプランに変化がある社員向けにも、時短勤務、在宅勤務、時差出勤を選べるようにした。そして、社員一人ひとりの事情に合わせ、勤務時間などを細かくカスタマイズできるようにもしたという。
 
「制度の対象となる社員とそうでない社員がいるので、初めはどのように受け取られるか若干不安がありました。しかし、現時点では対象者ではなくても、将来的にはすべての社員がMyWAYSを活用する可能性があります。誤解を生むことなく皆に理解を深めてもらうために、ハンドブックを作って社員に配ったり、社内のイントラネットで詳しく説明したりするなど啓もう活動に注力しました。今はまだ対象ではない社員にも、いつかタイミングが来た時に『MyWAYSを活用して、より自分に合った働き方を選択しよう』と思ってもらえることを目標にしました」(美馬さん)

▲社内用ハンドブック

●社員の事情に寄り添い、より良い働き方をサポートする

努力も実り、「MyWAYS」がスタートした2020年4月から2023年7月までの総申請数は83件にも上っている。パパママ社員の利用が最も多いが、妊活や介護のために活用する社員も増えつつあるという。
「MyWAYS」のPRや啓もう活動にも関わっている、Executive Communications Planningユニット・ユニットマネージャーの小俣香織さんは、介護などで制度を活用した。
 
「上司にMyWAYSの活用を相談したら、すぐにOKをもらえて、明日からでも活用していいと言われました。頑張っている社員にプライベートな事情で辞めてほしくない、社員のプライベートも含め全力でサポートし応援したいという会社の思いが改めて伝わり、嬉しかったですね」(小俣さん)
 
ビジネスデロップメントグループ・リードマーケティングコンサルタントの林大志さんは、「パパママコンシェルジュ制度」時代から時差出勤や時間給、時短勤務などを活用している。
 
「最初に活用したのは2019年。2人目の子どもが生まれたばかりで大変だった時に、急な病気やお迎えなどに時差出勤と時間休を活用しました。私は中途入社ですが、前職にはこのような制度がなかったので、ありがたかったですね。現在は子どもが3人いますが、入れ替わりで病気になったりするので、MyWAYSがあって本当に助かっています」(林さん)
 
美馬さんは「アドウェイズの一員になってくれたのだから、悩みや不安、困ったことがあれば何でも相談してほしいという思いがベースにある」と話す。
「MyWAYSのような制度を作ることで、そういう思いを広く社員に伝えたいという狙いもありました。MyWAYSが順調に浸透し、多くの社員が積極的に活用してくれていて、嬉しく思っています」

インタビューにご協力いただいた(左から)小俣さん、林さん、美馬さん

●タイミングが来た時に、すぐMyWAYSを想起できるようにしたい

なお、MyWAYSを活用して働く時間が短くなっても、会社からの期待は変わらない。もちろん本人と話し合い、事情を考慮しながら業務量などは調整可能であるものの、基本的には今までと同じ仕事で、同じように活躍してほしいという思いがあるという。
 
よく、産休・育休から復帰すると、所属部署が変わったり、役職が外れたりすると聞きますが、当社ではそういうことはありません。私自身、1年半の産休・育休から復職し、現在は通常12時~17時のコアタイムを15時までに短縮していますが、人事担当という役割は変わらず、新たな分野へのチャレンジもさせてもらっています」(美馬さん)
 
9年前のいち社員の問題意識が発端となり、形を変えつつ浸透しているMyWAYS。一人ひとりの事情に寄り添いつつ、これまで通りイキイキと自身のキャリアを歩んでほしいという思いが伝わり、MyWAYSを起点に社内に好循環が生まれつつある。活用している社員は限られた時間の中で成果を上げるべく業務効率化に注力するようになり、周りもその影響を受けてモチベーションが高まっているという。
 
MyWAYSの目標は、社員全員が制度の中身まで理解している状態を作ること。そして、MyWAYS自身も、さらにブラッシュアップし続けたい…と美馬さんは話す。
 
「MyWAYSは広く浸透してはいますが、まだ対象ではない若手社員の中には『知っているし、いい制度だとは理解しているけれど、詳細までは把握し切れていない』人が多いのが現状。必要になったタイミングで調べるのではなく、『あの制度をこう使おう』と普段から具体的にイメージできる状態を作ることができれば、キャリア展望も広がるはず。そのためにも、引き続き啓もう活動を行い、活用事例も発信していきたいと思っています。そして社員の声を聞くだけでなく、社員のご家族にも積極的に意見を伺うようにしています。ご家族をオフィスに招く『ファミリーデー』を年1回開催していますが、その場でどんな働き方をしてほしいのか、どんな制度があったら嬉しいのかなどをざっくばらんにお話しいただき、今後も制度に反映していきたいと考えています」(美馬さん)
 
WRITING:伊藤理子
※本ページの情報は、2023年11月時点の情報です



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