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【フレックス制度事例】1日に何度も出退勤!?業務時間を自由にデザインする「スイッチワーク」


●【企業・団体名】

株式会社カオナビ

●【取り組みの概要】

タレントマネジメントシステム「カオナビ」を提供する株式会社カオナビ。同社では、一日の間に「勤務」と「休憩」を何度も切り替えることのできる「スイッチワーク制度」を設けている。この制度のほかに、働く場所を会社 ・自宅・許可された就業スペースの中から自由に選択できる制度、スーパーフレックス制度を含む、場所と時間に縛られないカオナビ独自の働き方制度「My Work Style」 のパッケージは、仕事とプライベートの充実を意図、家事や育児から副業まで様々な用途に能動的・計画的に活用され、社員からも好評を得ている。

長く続いたコロナ禍は日本人の働き方にも大きな影響を与え、行動制限がなくなった現在も在宅勤務を含めたテレワークがひとつの選択肢として定着してきた。在宅勤務で問題となるのが「勤務」と「それ以外」の線引きだ。自宅にいれば、子どもが学校から帰ってきたり、来客があったり、意図せずにオンとオフが不明瞭になりがちである。株式会社カオナビの「スイッチワーク制度」は、都合に合わせて「勤務」と「休憩」を切り替えることができるというものだ。この制度により社員の仕事環境はどのように変化したのだろうか。

●業務時間内に切り替えられる「オン」と「オフ」

自社の社員をデータベース化し、経験、スキル、評価など様々な指標を可視化することで戦略的なタレントマネジメント業務の実現を支援するサービス「カオナビ」。人材マネジメントの課題を解決するHRテクノロジーとして企業の支持を集め、3,000社以上の導入実績がある同サービスを提供しているのが株式会社カオナビである。

社員の個性・才能を発掘し、戦略的な人事施策のサポートをする企業らしく、同社では自社内の人材活用や生産性の高い働き方のための制度「My Work Style」を設けている。「スイッチワーク制度」もこの「My Work Style」の一部であると、コーポレート本部長の杣野祐子さんは語る。

杣野さん「My Work Styleは当社の働き方に関する制度をパッケージ化したもので、スイッチワークもMy Work Styleのうちのひとつです。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で全社員が在宅勤務となる中、学校も休校になり、自宅での家事も増えていき、どうしても業務時間内に仕事を中断せざるをえないケースも出てきました。仕事の中断に関して社員の中で心理的に気になるという声が聞かれ出したこともあり、スイッチワークを制度化するに至りました」

スイッチワークの仕組みはシンプルで、簡単に言うと勤務時間内の「休憩」を何度も取れるということだ。勤怠システム上で出勤と退勤の記録を残すこと以外の制約をつけず、自主的にオンとオフを申告してもらっている。導入するにあたり、「ネーミング」をしたことが社員から受け入れられる要因となったという。

杣野さん「実際には休憩や中抜けということで、若干の後ろめたさのようなものを感じてしまいがちですが、スイッチワークと名前をつけたことでポジティブに活用していこうという反応を得られたように思います

▲今回インタビューに答えてくれた杣野さん(左)と村上さん(右)

●育児でフル活用、1日3〜4回のスイッチも

実際、スイッチワークはどのように使われているのだろうか。カスタマーエンゲージメント本部カスタマーマーケテインググループの村上篤史さんは、コロナ禍の只中、2020年入社。すでにスイッチワークが制度化された同社にジョインした。

村上さん「採用の面接もオンライン、入社後もフル在宅勤務という状況で。スイッチワークについては、当時は独身だったこともあり、時折の病院通院等の際に便利だなというくらいの印象でした」

入社後に結婚、そして今年6月に子どもが生まれてから、村上さんのスイッチワーク活用が増えることになる。

村上さん「6月に育児休暇を取得して、復帰してからは、様々な場面で使用しています。初めての子育てで、また妻が産後体調があまり良くなかったこともあり、授乳をはじめ育児のために1〜2時間仕事から抜けて、その後、妻にバトンタッチしたりと、スイッチワーク、フルフレックスなど当社のMy Work Styleを前提に仕事と育児を両立のための分担を考えることができました。フルで子どもを見るために、1日3〜4回のスイッチをして、7時から19時の間でどうにか5時間ほどの勤務時間を捻出したこともあります(笑)」

村上さんの部署では、当日朝にどのような体制で勤務するかを報告する形をとっている。

村上さん「勤務開始時に『何時から何時は私用で抜けます』などと連絡をします。緊急的な場合はその限りではありません。社員の当日の勤務状況はクラウドのカレンダーで共有されています。なお、部署によっては、報告不要でカレンダーや勤怠登録だけで完結しているところもありますね。」

●自己研鑽につながる副業を推奨

スイッチワークの使われ方は育児を含む家事に限らない。同社では社員一人ひとりのスキルやキャリアをサポートしており、その一環として自己研鑽を応援する意図で副業を推奨しているが、スイッチワークを活用しての副業も認めている。

杣野さん「もともと目的を限定していない制度であり、家事育児での使用から、現在は副業を含むスキルアップなど活用の幅が広がっています。事前に具体的な内容を申請し承認を得れば、1ヶ月あたり40時間まで副業を許可していて、年度ごとに活動報告をしてもらい実態を把握、本業にどう反映できているかをヒアリングしています。全社員の23%が現在副業をしています

同社の競合事業といったケースを除き、基本的にどんな内容であってもOKだという。杣野さんによれば副業のパターンは、3つに大別できるという

①  エンジニアなどの専門職が本業のスキルを活かすもの
②本業とは少し異なる分野でスキルの幅を広げるもの
③まったく異なる分野に挑戦するもの

①と②は自己研鑽の意味合いが強く、本業にも直接的に好影響をもたらす。③については、趣味的なもので気分転換の意味合いがあり、エンジニアがボイストレーナーをしている例もあるそうだ。

杣野さん「法務部門に弁護士資格を持っている社員がいるのですが、スイッチワークを使って裁判所に勤務するため出かけていくケース もありました。こういった、日中でないとできない副業では有効ですね」

●成果を上げるために、自分で働き方を選ぶ

スイッチワーク、そしてMy Work Styleを制度化する一方、副業も推奨するカオナビ。ここまで画期的な取り組みができるのには同社の一貫した考え方が通底している。

杣野さん「成果を上げるために、自分で働き方を選ぶべきだという考えです。当社では独自の人材戦略として『ユニーク・パフォーマー』の育成に取り組んでいます。様々な価値観を融合することでイノベーションを生み出す。社員一人ひとりが成長するための働き方を考えていくことを大切にしています

こうした取り組みについては、同社の「カオナビユニバース」というサイトにまとめられ、社員の生の声も掲載されている。

社員にとっては自由度が高く、また責任も大きいとも言えるスイッチワーク、My Work Styleだが、これらの制度は同社にどのような影響をもたらしたのだろうか。

杣野さん「スイッチワークそのものが何かを生み出したというように断言するのは難しいところがあります。ただ、My Work Styleという形でパッケージに整理したことで、積極的に活用してもらえるようになったとは感じています。当社の働き方に対する考えを共有することで、男性の育児休暇取得など、社員一人ひとりが持つ権利を行使しながら業務にも集中する環境が整ってきたことと言えます

また、出社、在宅勤務を完全に自分で選択できる「ハイブリット勤務制度」では、採用面で効果が現れている。

杣野さん「10名強が関東圏外に在住していますが、社員が移住したケース以外に採用の時点でフル在宅勤務を前提に採用したケースもあります。My Work Styleのパッケージに惹かれて、優秀な人材が居住地を問わずに入社いただける可能性も広がっています」

●より良い働き方を追求できる強み

充実したMy Work Style。何か課題があるか、村上さんに社員目線で答えていただいた。

村上さん「現状の仕組みをフルに活用していますが、弾力的に運用できるので現状のままで十分と感じていますね。何か不測の事態があっても対応できると思います。これはMy Work Styleの問題とも言い切れないのですが、ひとつだけ挙げるとすれば、フル在宅勤務だった入社時に、同僚と対面する機会が少ないため、コミュニケーションに若干不安がありました」

杣野さん「コミュニケーションの問題は会社としても配慮しています。コロナ禍には、会社主催でZoomでの雑談会を主催したのですが、まったく盛り上がりませんでした(笑)。その後対応はアップデートされ、新入社員は入社後1,2ヶ月は出社を推奨している部署もあります。社員または部署単位で自発的に会を開くなど交流を図っています。先にお話しした『成果を上げるために、自分で働き方を選ぶ』という考え方をグループ単位に落とし込んでいると言えると思います」

村上さん「新入社員が入った際に雑談会を開催する部署、週に一度実施している部署など、ローカルルールが発達しているようです。ダイレクトメッセージで聞くほどでもない些細なことを聞いたりできるのがいいですね」

My Work Styleについては、村上さん同様、要望として上がってきている意見はほとんどないという。現在は外国籍の方や障がいのある方も当たり前に働ける環境の整備や、同性パートナーを社内規程で配偶者として追加するなど、ダイバーシティへの対応に取り組んでいるという同社。より柔軟な働き方を提供することが、さらに幅広い価値観の融合につながり、新たなイノベーションを生み出していきそうだ。

村上さん「ライフスタイルに合わせて、働き方をデザインできる。より良い働き方を追求できる。これがカオナビの強みではないかと、そう思います」

(WRITING:斯波 戌)

※本ページの情報は2023年8月時点の情報となります。


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