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再生

2018年11月。突然降りかかった命の危機から再生への記録。診断書に書かれた主治医の経過説明と当時のtweetを時系列に並べてみた。自分自身の備忘と生命について。また、同じような境遇にある方たちの励みになれば。

全身性エリテマトーデスに対し免疫・膠原病・感染症科で加療中。2018年11月上旬より右膝関節痛・腫脹を認め、11月13日頃より悪寒が出現した。

【全身性エリテマトーデス】なんらかの原因によって種々の自己抗体を産生し、それによる全身性の炎症性臓器障害を起こす自己免疫疾患。関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ炎症性の結合組織疾患。特定疾患(難病)に指定されている。症状は治療により軽快するものの、寛解と増悪を繰り返して慢性の経過を取ることが多い。

2018年11月16日

全身の筋肉痛を認め、救急搬送された。発熱、血液検査で炎症反応高値を認め、緊急入院となった。マーフィー徴候や胆嚢腫大を認め、抗生剤を投与した。右膝関節液培養、血液培養よりコリネバクテリウム属菌が検出され、菌血症を認めた。抗生剤は腎機能を考慮しながら適宜調整を行った。速やかに腹部症状や胆嚢腫大は改善傾向となった。

【マーフィー徴候】急性胆嚢炎、胆石症などの触診時に、右季肋下部を圧迫することで深吸気時に痛みの為に呼吸が止まる徴候。

【コリネバクテリウム属菌】グラム陽性桿菌で、放線菌に分類される真正細菌の一属。結核菌と比較的近縁であり、細胞壁にミコール酸と呼ばれる脂質を含有するという特徴がある。外毒素を産生して、動物やヒトに対する病原性を持つものが含まれる。自然界のさまざまなところに分布しており、一部のものはヒトの気道粘膜などに存在する常在細菌の一種でもある。このうち、ジフテリア菌はヒトに対する病原性を有する。

2018年11月22日

経食道心エコーにて大動脈弁周囲部膿瘍あり、A弁・M弁に疣贅を認め、感染性心内膜炎と診断した。抗生剤投与にて内科的加療を行い、炎症反応は改善を認めたが、経時的に膿瘍増大、弁破壊が進行した。

【経食道心エコー】胃カメラのように口から食道に直径約1cmの超音波内視鏡を入れ、心臓を食道から観察する検査。 食道は心臓のすぐ後ろにあるため、心臓や大血管の鮮明な画像が得られる。 経胸壁心エコー検査で描出困難な場合や心臓の奥にあるものを観察するのに有用な検査。 小さな感染部位も検出することができるが、体に対する負担が大きく、費用も多くかかる。

【A弁】大動脈弁【M弁】僧帽弁

【疣贅】読み:ゆうぜい/意味:いぼ

【感染性心内膜炎】心臓の内側を覆っている組織(心内膜)に生じる感染症で、通常は心臓弁にも感染が及ぶ。血流に入った細菌が損傷のある心臓弁に到達して、そこに付着することで発生。男性に多く発生し、すべての年齢層で女性の2倍、高齢者では女性の8倍。高齢者でも多くみられ、すべての患者の4分の1以上が60歳以上。治療しない場合、感染性心内膜炎はほぼ常に死に至る。治療した場合の死亡リスクは、年齢、感染期間、人工弁の有無、病原菌の種類、心臓弁の損傷の程度などの要因により異なるが、抗菌薬による積極的な治療を行えば、ほとんどの人が回復する。

2018年12月10日

早期の外科的根治術が必要と考え、心臓血管外科に転科した。同日Bentall+M弁置換術を施行された。

リンク:九州大学病院心臓血管外科

【Bentall】大動脈基部置換術。ベントール手術。主に大動脈弁輪拡張症に対して行われる標準術式である。人工心肺を用い心停止下に、大動脈弁・大動脈基部・上行大動脈を弁付き人工血管で置換する手術である。大動脈基部の再建を含むので、必然的に左右冠動脈の再建が必須となる。

2018年12月14日

術後の影響により腎前性腎不全を認めたが、経過良好のため術後管理目的に免疫・膠原病・感染症科に転科となった。その後腎機能は改善したが、発熱が遷延しており、抗菌薬の投与を継続した。

【腎前性腎不全】急性腎障害の一種。急性腎障害とは、数時間~数日の間に急激に腎機能が低下する状態。尿から老廃物を排泄できなくなり、さらに体内の水分量や塩分量など(体液)を調節することができなくなる。症状としては、尿量減少、むくみ(浮腫)、食欲低下、全身倦怠感など。原因としては脱水や出血により腎臓への血流が低下すること(腎前性)、腎臓の炎症や尿細管細胞の障害などにより腎機能が低下すること(腎性)、尿路系の閉塞によるものがある(腎後性)。

2018年12月15日

全身にそう痒を伴う発疹が出現しており、症状が持続したため、フェキソフェナジン塩酸塩錠を投与した。

【フェキソフェナジン塩酸塩錠】アレグラ

2018年12月30日

2019年1月1日

2019年1月3日

2019年1月4日

38度以上の発熱あり。経胸壁心エコーで明らかな異常所見は認めなかったが、血液検査でCK上昇を認め、抗生剤の副作用と考えた。

【CK】クレアチンキナーゼ。体内でのエネルギー代謝に関わっている酵素。主に骨格筋・心筋・平滑筋・脳などに多く存在し、これらの組織が障害をうけると、細胞からCKが血液中に流れ出し、血液検査で高値を示す。

2019年1月5日

2019年1月7日

2019年1月9日

感染性心内膜炎の再燃除外目的に経食道心エコーを施行したところ、僧帽弁閉鎖不全症の増悪と疣贅を疑う所見を認めた。

【僧帽弁閉鎖不全症】左心室から全身に送り出されるはずの血液の一部が、左心房に逆流してしまう状態。全身へ送り出す血液量が減り左心房が拡張。急性発症の場合は、急激な肺高血圧、肺うっ血による呼吸困難が出現。慢性的な場合は無症状な場合が多いが、左心室の機能が次第に低下するため、息切れや呼吸困難が現れる。「心房細動」という不整脈を高頻度で合併する。

2019年1月10日

2019年1月11日

心房細動も出現し、腎機能増悪も認めた。

2019年1月14日

ラシックス、不整脈薬の投与を開始した。

【ラシックス】利尿降圧剤

2019年1月15日

38度の発熱と心房頻拍を認め、除細動を施行し、シンビットも開始した。腎機能増悪あり、バスキャスを右内頚動脈より挿入した。検査後より高血圧と呼吸状態悪化を認め、降圧剤の投与、人工呼吸器装着を行った。

【除細動】不整脈に対しての治療の一つで、電気的な刺激や薬物等の外力によって異常な電気信号経路を遮断し、正常の電気信号経路への改善を促す方法。

【シンビット】不整脈治療剤

【バスキャス】バスキャスカテーテル。緊急時ブラッドアクセス留置用カテーテルのことであり、CVカテーテル同様、首や鎖骨、太ももの付け根にある血管から挿入し、先端を心臓近くの太い血管(=中心静脈)に位置させるカテーテルのこと。血管内に留置することで血液の送脱血を行なえるため、血液透析や血液浄化療法などの実施が目的の場合に挿入される。CVは薬剤の投与を目的としていて、バスキャスは血液の送脱血、つまり透析や血液浄化の実施を目的としている。

2019年1月21日

根治のため外科手術が再度必要と判断され、心臓血管外科へ転科。同日手術が行われた。術中に提出した人工弁や周囲組織は培養・PCR検査も陰性であり、今回の僧帽弁位周囲逆流の原因は免疫抑制剤長期内服による縫合不全や脆弱な組織の術後穿孔が疑われた。

2019年1月24日

β-Dグルカン陽性となり、抗菌薬の投与で陰性化となった。

2019年1月26日

低アルブミン血症の所見を認め、アルブミンを投与。

2019年1月31日

37度後半の発熱が続いていたが、37度前半まで解熱した。それに伴い食事摂取が格段に良好となった。

2019年2月5日

2019年2月6日

末梢静脈路から静脈炎・血管痛あり、左尺側皮静脈から中心静脈カテーテルを留置。

2019年2月7日

37度前後まで解熱した。血栓蛋白として十分にあるものの尿蛋白陽性であり、陰圧加療を強化した。

2019年2月8日

2019年2月9日

2019年2月10日

2019年2月12日

術後の加療継続目的に2.12に免疫・膠原病・感染症科へ転科となった。その後抗生剤を継続し、全身状態良好となったため、リハビリを実施した。

2019年2月13日

2019年2月14日

2019年2月15日

2019年2月20日

2019年3月8日

2019年3月9日

2019年3月11日

2019年3月14日

2019年3月19日

リハビリ継続目的に転院となった。

2019年5月21日現在、転院先でのリハビリは続いている。病状は落ち着いており退院までもうすこし。

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