【セミナー書き起こし】世界トップ1万人を見てきたGoodfind講師が語る・20代のキャリア戦略

今回は世界で多くのビジネスパーソンを見てきたGoodfind講師・織田と、中途エージェントのGoodfind Careerで実際に多くの候補者に接している寿松木(すずき)の2名で、不透明な世界の中での今後のキャリアについてお話しました。

※セミナースライドはこちらからご覧いただけます

(講師の紹介) 
織田 一彰
スローガン株式会社 共同創業者・エグゼクティブフェロー
ケイ・コンサルティング株式会社 代表取締役
名古屋大学 客員教授(2011-2013、2015-)
バンドン工科大学 客員講師(2012)

名古屋大学大学院博士課程(数学専攻)修了。アンダーセン・コンサルティング(現・アクセンチュア)にて上場企業を中心に数々の企業のコンサルティングに従事。独立し複数のインターネット・ベンチャー企業の立ち上げから育成に関わる。さらに複数事業を立上げ、買収または売却し、上場企業の役員を経て現在も複数の会社の経営を行っている。
----------------------------------
寿松木 充
スローガンアドバイザリー株式会社

千葉大学工学部に入学後は、自身が色弱であることからヒトが色を感じるメカニズムに興味を持ち、色彩工学分野の研究に励む。その研究を通じてプロダクトを開発したいと考え、新卒ではキヤノン株式会社にエンジニアとして入社。工場向けの生産管理システムの開発に従事(C++とPostgresを主に使用)。その中で自身の仕事の意義を認知することや、キャリアを自らの意志で決めることの大切さを痛感。より多くの人が自身の価値を感じ、ワクワクしながら働くためのお手伝いがしたいと考え人材業界へ飛び込む。株式会社リクルートキャリアの経営企画職を経て、スローガンアドバイザリー株式会社へ参画。
----------------------------------

<Part1>今後の世界動向

グローバリゼーションが身近になってきます。例えば100円均一ショップいくとアジアの安い製品がたくさんあり、居酒屋に行っても輸入品ばかりだし、ファーストフードやコンビニの店員は外国人が多いです。
自動車会社の工場もどんどん海外に出ていて、閉鎖せずに工場を残しているのはトヨタくらい。他の自動車メーカーは円高の時期に大きな工場をほとんど潰して、海外に移転しました。

国の政策も頑張っていますが、残念ながらデフレが止まりません。日銀と政府が協力して「異次元」の政策を繰り返してきましたが、結果としてインフレターゲットの2%は実現できないまま。現在はほとんとタブーのようになっています。

このような状況で個人のキャリアはどう変化していくか?
以下の特徴があると思います。

・「できる人」と「普通の人」の差がどんどん大きくなり中間層が少なくなる
グローバリゼーションとそれをサポートするITインフラの整備は、同じ仕事をする人の賃金を均一化に向かわせます。
より具体的に言うと簡単な仕事は発展途上国にアウトソーシングされて安くなり、高度な仕事は才能が集中するシリコンバレーや中国の深センなどに集中し賃金もあがります。
その結果、発展途上国では大都市のみですが、先進国の主要都市では賃金が高くなり、地方との格差が拡大します。先進国では単純労働の時給が下がりデフレ傾向がすすむため内需が伸び悩み、デフレから脱することが難しくなります。途上国でも先進国でも共通して見える現象は、地域内格差が大きくなり中間層が減っていくということで、これは社会的にみると不安要因となります。

・海外の経済バランスの変化についていく必要が出てくる
具体的には今後の世界を俯瞰的に見渡した場合、米中の対立軸の中で経済のルールが変化していきます。
人口規模を見ると明らかですが、中国の約14億人の市場は経済成長を基調とする資本主義国家にとって魅力的です。
インドも10年以内に中国の人口を超えますが、生活水準やインフラの整い方などを見ると中国のレベルにいたるにはもう少し時間がかかると思います。
そういう中で米中の二大勢力にEU、ロシア、他のアジアの国々がどういうバランスでポジションをとるかは大変予測が難しい問題です。

近いところで難しいポジションにあるのが韓国です。韓国経済はIT機器や自動車を中心に勤勉な国民性もあり急成長しましたが、地理的な位置が微妙過ぎます。
仮に同じ民族で同じ言語を話す北朝鮮と統合があったとすると、ロシアと中国という非常に微妙な関係の大国と国境を接します。日本はまだ海に囲まれているので直接乗り込むことを想定しにくいですが、南北朝鮮の地政学的な場所は中東並みに繊細であることが想像できます。

上記の状況を理解するのは本当に多くの変数を含みややこしいですが、大きく大局観を持つなら人口動態とマクロ経済全体の成長率、つまりGDPと一人当たりの生活水準(一人当たりのGDPでよい)を見ることで大きな流れがつかめます。具体的には世界の人口のトップ20位くらいと、それらの伸び率、加えてこれらの国のGDP成長率を記憶しておきましょう。

たとえて言うなら吉野家やユニクロの売り上げを伸ばそうとする時に、日本国内のショッピングモールに入るのと、インドや中国でショッピングモールに入るのでは、潜在的なユーザーの桁が違います。そういう観点で見れば海外での事業展開が成長のためにいかに大切かが実感できると思います。

・IT系企業の勢いが止まらない。ただしGAFAはいったん収束し、次に来るのは欧米vs中国のIT覇権争い

GAFAを中心としたIT系のグローバル企業のシェアがどんどん高くなっています。同じ土俵に競合がうまれてもGAFAのどれかに買収され、より大きくなっていくブラックホールのような状態です。
少数企業による独占はスタンダードが複数存在しないため、ユーザーにとっても一つのサービスで多くが完結する便利な面もあるのですが、一方で利益の大半を少数企業に独占され、富の偏りはまず企業単位で大きくなります。
それが個人や地域ごとの配分の問題につながり、結局は格差を大きくして社会の不安定要素を強めているという考え方が強くなっています。

最近はこのシェア争いを欧米の中でも取り締まる動きが出てきました。加えて欧米と中国での5Gをめるぐシェアとノウハウ争いも激化しており、ファーウェイと米国とのIT戦争はまさに火ぶたをきったばかりです。


<Part2>キャリアは結局どうしたら成功するのか

「才能」についてしっかり考えなければなりません。結局数十年たって成功する人はどういう人でしょうか?
以下が数十年、人材領域を見た経験から、中長期で成功する人の共通要素です。
(1)個性的
 −周りに合わせすぎていない、よい意味でマイペース
 −同質化圧力に無理に従っていない

(2)開放的
 −人と違うものにチャレンジする
 −新しいものに寛容で「いいよ、いいよ」とやってみる

(3)自立
 −間違っているかもしれないけど「良い」と信じる
 −頑固でもいいから折れない

(4)楽観的
 −バランスがある
(楽観すぎてもダメ、悲観過ぎてもダメ。一般には多少悲観的なほうが努力家になる)
 −アジア人は遺伝子と華僑の影響で「悲観的で努力家」が多い
 −ラテン系は楽天的で仕事はしないけど時々天才が出現する

(5)動機
 −目標を設定している人は伸びる
 −目標に達するためには一定の時間が解決する
(パフォーマンスがイマイチでも時間をかけてカバーする方法もある)
 −成功者が努力する時間はめちゃくちゃ長いが、これは動機の強さ(長さ)による

(6)健康
 −継続するには心身ともに健康である必要がある
 −心身が健康だとバーンアウトしにくく、病まなくなる
 (どの国でもオフィス街のジムはエリートで混んでいる現実)


<Part3>AIやITの時代はどう変わっていくか

2045年に「(テクノロジカル)シンギュラリティが来る」と言われているがそれは少しオーバーに解釈され過ぎていると思います。

ある程度のスパンでもAIが人間の知能を超えて支配するということは考えにくく、これはAIで仕事がなくなることを予言したオズボーン博士もそのようには予言していません。

AIが仕事を奪っていくことは事実で一定の仕事はコンピューターに置き換えられます、それは農場や工場で重労働を機械がおこなうのと同じ現象で、むしろ単純思考作業から我々を開放するプロセスです。

問題はその仕組みの変化に我々がスキルセットを対応することで、そのための一つの方法は統計学を勉強することです。ハードウエアやソフトウエアの進化でデータがたくさん、しかも簡単に入手できる環境において、データをどう活用していくかは大きなテーマです。

文系理系を言い訳にしないで勉強してください。何も全員がプログラマになる必要はなく、データを読めるようにしておく必要があります。そのための第一歩が統計学です。これは文系も理系もリテラシーとして必要です。

それと人間にしかできない部分を意識して強化することも大切です。例えばリーダーシップや事業創造などがそういう分野です。これはマニュアルが存在せず、経験などから主に学ぶ分野ですので積極的にそういう環境に飛び込む努力をしてください。

<Part4>Q&A


<Q1>入社時は期待の星だったのにその後くすぶってしまう人もいる。そういう人の共通点は?
優等生タイプの方です。指示に対して真面目に対応し、常に要求にこたえるため周囲の評判が高いのですが、悪い意味で自分を犠牲にして、やりたいことも見つけられず、自分の個性がないまま融通の利かない適応をした結果、その組織と同じ栄枯盛衰の運命をたどります。
それよりも、周囲との多少の衝突をしながらも自分なりの正解を解釈して持って行動する人が、結局組織にも価値を創出していくことが多々見受けられます。

<Q2>今後入るべきオススメの業界、会社を教えて欲しいです
大原則として、やりたいことがあるならその分野にいけばよいと思います。自分の価値観は長い目で見て最も大事なことです。
しかし特にそれがないなら、今後伸びていく分野にチャンスがあるでしょう。当たり前ですが衰退する分野と伸びる分野では、活躍できる可能性が確率的にまったく異なります。
前半のパートでもお話した通り、今の時代は良くも悪くもグローバリゼーションがすすむので、伸びている市場にどれだけ製品やサービスを提供できるかがマクロで見て大切になります。
そういう意味では悩むならIT業界にいくことをお勧めしています。単純に求人量が多くなるのと特に若い人にとってはチャンスがあるからです。

<Q3>儲かるけど進むべきではないキャリアとは?
盲目的に希望をもって行く外銀と外コンです。外銀と外資コンサルについては見たこともないのにステレオタイプのイメージを持ち、それが良すぎるように見えます。
給与の水準が高いのは周知のとおりで、これ自体は悪いことではありません。しかしその源泉を本当に自分で稼いでいるか?ということを考えてみないといけないです。
ここに長くいると市場価値の勘違いはまだよいとして、転職すると給料が落ちるから決心できないまま長期で在籍し続けます。その後、外にでなければならない時(つまりクビなどになった時など)に行くところがなくなる、というのが悪いシナリオです。まるでズルズル落ちていく蟻地獄のようですね(笑)

40歳以上のエグゼクティブの数を見てみれば分かりますが、非常に人数が少ないです。これは何を意味するかといえば、多くの方はその前に外資系企業を去っているという事実です。ずっといることが構造上不可能であれば、違う選択肢を途中から考えなければならないのは当たり前のことで、そこをうまくクリアしないと「蟻地獄」にハマりますのでご注意ください。

実際に、GoodfindCareerでお会いする社会人の方にも同じような事例は非常にあり「あなたは優秀だとは思いますが、ご紹介できる案件はありません」という状況は少なくないです。

<Q4>今後2-3年内で見るならどこが魅力的か?
志向性がないならIT業界がおすすめ、という話とも通じるのですが、BtoBのSaaSの分野は短期でも長期でも有望な分野の一つです。最近は未上場でもVCなどによる豊富な資金をバックに優秀なビジネスパーソンも揃っており、転職マーケットでも最もホットな分野の一つです

<Q5>大学や大学院でメンタルを病んでしまう。
筋トレをしましょう!あとは良質のたんぱく質をしっかりとりましょう。我々の体は化学物質でできており、その物質で感情も作られています。しっかり食べて、運動して、寝る。これは人間の基本活動なので粗末にしないようにしましょう。

<Q6>自分の人生は失敗ばかり。成功体験がほぼありません。人生が思い通りに行くコツってありますか?
トライ・アンド・エラーを何度も繰り返し、小さな成功体験を持つことが大切だと思います。このような考え方を持つ方は完璧主義の方に多く見受けられますが、残念ながら世の中そうとばかりには行かないので、考え方を少し変えてみてはどうでしょうか。(高学歴のエリートに多い症候群です)

また同じ事象であっても「成功」と捉えるか「失敗」と捉えるかは人生は変わってきます。多くの場合、一度ではうまくいかず、何度か工夫して失敗しながら学んで最終的にゴールに行くことが普通だと思ってください。

心理学用語で「リフレーミング」という概念があります。これは世界をどうとらえる(=フレームを変える)かで、世の中の見え方が変わるという考え方です。自分が成したことがたとえ短期で失敗に見えても、それを改良することでだんだん成功に近づいていく、そういう考えを持てればよいと思います。

<Q7>20卒です。入社するまでにしておいた方が良いことを教えてほしいです
時間があるのであれば、いろいろな種類の人に会うことをお勧めしたいです。ビジネスパーソンである必要はなく様々な分野の、できれば一流の人と会うことで、その人の価値観や人生観など見ることができます。
それによって将来自分の人生を考えたときの選択肢が広がると思います。

<Q8>英語できたほうがよいか?
もちろんできるに越したことはないです。日本人は失敗を恐れるあまり適度に話せても、外国人の前では何も言わないことが多く見受けられますが、これではダメです。ディスカッションができるレベルまで英語を磨きあげてください。また学生の方は学生時代は社会人に比べて圧倒的に時間があるので、卒業前に徹底的に時間をかけて学んだください。

<Q9>社会人二年目です。転職するときの決定打は?
新しいチャンスは本当に別のところでしか得られないのか、を考えてみてください。「青い鳥症候群」で転職する人が最近多くなってきています。たしかにFacebookなどで他人、特に同期の友人の活躍を見ると「隣の芝生は青く見える」気持ちはよくわかります。
しかし今の仕事をやりきらないまま仕事を変えるのは正直もったいないように思えます。最後まで責任をもって何かをやり遂げるマインドセットは今後のキャリアにとって重要ですし、同じプロジェクトで働いた同僚からの支持が全く変わります。そういう意味で個人として組織の中でどう振る舞うかを意識することは大切だと思います。

一方でなるべく早く転職したほうが良いケースは、全く異なる価値観や目標の異なる組織にいることは時間の無駄です。それを選んだ自分の思考プロセスを反省しつつ、次のステップに具体的に踏み込んだ方が良いと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?