いつのまにか日本国籍なくなってるかも!?国際結婚ベビーの国籍問題とは

インドネシアでの里帰り出産の準備もほぼ終わった時に、改めて「あれ?ニコってちゃんと二重国籍だよね?日本の国籍まだあるよね?」と不安になってアレコレ調べたところ、知らないとまずいなと思うことがあったので記事にしておこうと思います。私も誤解していたのですが、戸籍謄本が取れても国籍が喪失している可能性はあるらしいです。また、海外出産でも国内出産でも、気をつけないと国籍喪失することがあります。

ヒヤリとしたきっかけは国際結婚ベビーの出生に関する記事

国際結婚の海外出産について調べていた時、とある記事に行き着きました。

相手の国籍法について調べたことがない場合は、一度この記事の「1.海外出産で生まれてくる子供の国籍は?」は一読しておいたほうがいいかも。とてもわかりやすいです。

記事内でロシアを例に日本国籍を喪失する可能性について書かれているのですが、要するに「意図していなかったとしても、任意の手続きで他国籍を取得した場合は日本国籍を喪失する」ということでした。でも、この「任意の手続き」というのが厄介。「これは知識がなかったらやらかしてしまう可能性大でしょ〜」という感じ。

気になって調べてみると…

参考:Q7 息子が日本国籍を喪失していると言われ困惑しています
日本人男性とロシア人女性が日本でお子さんを授かった例について紹介されています。この例では日本国籍を喪失し、帰化申請をするしかなくなってしまったようです。

上記記事ではご両親は「我が子は二重国籍である」と考えていたのですが、実際は出生時点ではロシア国籍を持っていなかったそう(ロシア国籍法では、ロシア国外で出産した場合、無国籍でない限りロシア国籍は与えられない)。しかし、二重国籍だと思い込んでいたためにパスポートにロシア国籍併記を願い出たところ、その申請によってロシア国籍を自主的に取得したことになり、同時に日本国籍を喪失してしまっていたようです。

つまり、「日本国籍を捨てます」とか「今までロシア国籍は持っていなかったけど、自主的にロシア国籍取得します」という手続きではなく、全然違う手続きをしているつもり(たとえばパスポート申請、結婚手続きなど)が、持っていなかった他国籍を意図せず取得し、それによって知らないうちに日本国籍を喪失していることがありえるわけです。これは本当にわかりにくい。知らなければ気づけないですよね。

ちなみに日本で産んだ第一子ニコの出生届を日本の役所に提出する際、窓口の方に二重国籍や国籍留保について尋ねたところ「二重国籍は相手の国によりますが、国籍留保は海外での出産の時に必要なだけで今回の場合、日本国籍は取得できていますよ」とのことでした。確かにそうなのですが、その言葉だけを聴くと、あたかも国内で生まれた場合は日本国籍を失うことはないかのようにも思えます。が、相手国の国籍法によっては、その後の手続で日本国籍を失う可能性が十分にあること、多重国籍にならない可能性があることは注意が必要です。

なお、日本人とインドネシア人の夫婦から生まれた赤ちゃんの場合、基本的には出生と同時に日本国籍とインドネシア国籍を取得します。どちらの国も血統主義で出生地などの条件がないので、国内出産でも海外出産でも二重国籍になります。(日本以外で出産した場合は日本国籍の留保が必要)

出生以外に、国際結婚ではこんなケースもありました。

参考:日本国籍を失ってしまったかもしれません、どうすればいいのか教えてください。
国際結婚を機に日本国籍を失ってしまった相談者さん。結婚の手続き上必要だったとして外国籍を取得してしまい、日本国籍を喪失してしまったようです。しかもパスポート更新期限が迫っていて外国籍も離脱し、無国籍状態。

逆に、意図せず二重国籍だったというパターンもあるようです。

参考:確かめてみたら自分の二重国籍が発覚した話
この方の場合は米国籍の離脱をしていなかったために二重国籍状態が続いていたとのこと。米国のルールでは「外国の金融機関に10000ドル以上の資産がある場合には申告義務があり、申告し忘れるとペナルティがあるという噂もある」らしく、日本国籍を喪失していなかったからセーフというわけでもなさそうです。

国籍って一番根本的で大切なものである割に、こんなに自然発生的に得られたり失われたりするものなんですね…。

100円のものをネットで買うのにも購入確認される時代なので、本人への確認なしに国籍を失っているかもしれないとはちょっとびっくりです。そして、事後通知さえされない。それでいて「国籍喪失届」を出す義務があるという難しさ。うーん、これはなんとかならないものなんだろうか。

戸籍謄本が取れたから安心…ではない!

「戸籍にはちゃんと名前があるから日本国籍は持っているはず」と思う方もいるかもしれません。が、そういうわけではないようです。

在ニューヨーク日本領事館のウェブサイトには、国籍の得喪や戸籍に関して詳しくまとめられています。

長いですがお役所の文章のわりに読みやすく、事例としても参考になるのでぜひ一度リンク先の全文を読んでみていただきたいのですが、国籍と戸籍の関係について、以下の通り明記されています。

国籍の得喪は国籍法に定められた要件を充たした時点でいわば自動的に発生するもので,届出行為の有無に左右されないため(一部事例除く),その事実について届出が提出されないと,本人の認識と事実に差異が生じるケースが多々ありますが,いずれの場合も事実に基づき判断されるため,例えば,本人が国籍喪失について届出を提出していなくても国籍を既に喪失しているケースや,逆に,日本国籍を喪失しているものと思い込んでいたが実際は喪失していないケースなどが頻繁に生じています。
したがって,自己の志望で米国籍取得した方は,米国籍を取った時点で日本国籍は喪失しているわけですが,国籍喪失届により国籍喪失事実を報告していないと戸籍だけを見るとあたかも日本国籍があるかのように扱われ,戸籍謄(抄)本が取れたり,場合によっては日本旅券が誤って交付されたりすることもあり得ますが,国籍得喪の事実は既に発生しているわけでこの事実が常に優先されますので,戸籍や日本国旅券をお持ちであるからといって必ずしも日本国籍があることを意味するわけではない点には注意が必要です。
戸籍は日本国籍者のみ編製されていることになっているため,戸籍が日本国籍者のデータベースのように思われるかもしれませんが,戸籍は記載すべき事実について届出があったものを反映したものに過ぎず,届出されていないことについては当然ですが反映されていません。

戸籍謄本に自動的に反映されることがないため、国籍の喪失はパスポート更新の際に発覚することが多いようです。

相手国の国籍法でチェックすべきは「今回の条件で、出生と同時に自動的に国籍が付与されるかどうか?」

国際結婚ベビーの日本国籍の喪失について結局一番大切なのは、「出生によって自動的に相手国の国籍が与えられるかどうか」の1点です。

出生によって他の国籍がある状態なら、日本国内出産の場合は二重国籍。海外出産の場合でも期限内に「日本国籍の留保」を行っておけば二重国籍となり、日本国籍をただちに喪失する事態にはなりません。

逆に、出生時点で相手国の国籍を持っていない場合は、相手国の国籍を取得すると日本国籍を喪失することになります。日本国籍を保持したい場合は、相手国の何らかの手続きをする時には必ず「出生時には持っていなかった相手国の国籍を取得することにならないか?」について注意する必要があります。国によっては「他国籍を取得しても自国の国籍は失われない」場合もあり、パートナーと危機感のギャップが生まれている可能性もあるのでパートナー任せにしない方がいいかもしれません。

ところで、国籍法には国籍取得についてどんな風に規定されているのでしょうか?例としてインドネシアの国籍法(2006年施行)を見てみましょう。

参考:全訳 国籍法
第四条
インドネシア国籍者とは
a.法規にもとづいて、あるいはインドネシア共和国政府と他国との協定にもとづいて、本法令施行前にインドネシア国籍者になっている各人
b.インドネシア国籍者である父と母が合法的婚姻下に生んだ子供
c.インドネシア国籍者の父と外国籍の母が合法的婚姻下に生んだ子供
d.外国籍の父とインドネシア国籍者の母が合法的婚姻下に生んだ子供

e.父の国の法律でその子供が国籍を取得できないかもしくは無国籍の父とインドネシア国籍者の母が合法的婚姻下に生んだ子供
f.インドネシア国籍者の父の合法的婚姻下に、その父の死後300日以内に誕生した子供
g.インドネシア国籍者の母が合法的婚姻外に生んだ子供
h.外国籍の母が合法的婚姻外に生み、インドネシア国籍者の父が、その子が18歳になる前あるいは結婚する前に自分の子と認知した子供
i.インドネシア共和国領土内で生まれ、誕生時点で父母の国籍が不明の子供
j.父母が不明のインドネシア共和国領土内で発見された新生児
k.父母が無国籍あるいはその所在が不明のインドネシア共和国領土内で生まれた子供
l.出生地の国が法規のゆえにその国籍を付与するインドネシア共和国領土外の場所でインドネシア国籍者の父母から生まれた子供
m.インドネシア国籍申請を認められたがその後宣誓あるいは忠誠の誓約を行う前に死亡した父あるいは母の子供

通常の国際結婚なら、c.またはd.に該当するはずです。ただ、「合法的な婚姻」が条件であり、h.のように合法的婚姻外の場合どうなるかは、できれば出生前に確認した方が良さそうです。問い合わせ窓口はどこなんだろう…インドネシアの役所かな?

また、出生した時の状況によって国籍を取得できたりできなかったりするので、同じ夫婦の子どもでも場合によっては二重国籍だったり、片方の国籍しか取れなかったりします。なので、「今回は国籍が与えられるのか?」「どういう場合に国籍を自動で付与されなくなるのか?」について念のため毎回、出産状況と照らし合わせて国籍法を調べてみたほうがいいかもしれません。

日本国籍を失ってしまったら帰化申請が必要

ニコはセーフだったので詳しくは調べていないですが、日本人とロシア人夫婦の事例の記事によれば日本国籍を再取得するには「帰化申請」が必要になるようです。海外に住んでいて日本国籍を喪失した場合は、パスポートが使えなかったり、日本に帰国する時に問題がありそうですね。でも、帰化できる条件として「帰化申請時までに引き続き5年以上日本に居住が必要」と。もうこの時点で心が折れそうです。

この記事に日本国籍喪失のデメリットがまとまっています。

これまで見たように日本国内にいても国籍喪失する可能性がありますが、その場合は帰化するか外国人として日本で生活することになるようです。この辺りが参考記事になるのでしょうか。うーん。

日本国籍を失ってからではいろいろと面倒そうなので、国籍を失うきっかけになりうることを把握し、きちんと意志を持って選択することが大切ですね。

参考になれば幸いです!

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